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登録有形文化財 日影沢 石積床固工の修繕を進めています
妙高市西野谷地内を流れる万内川の支川日影沢には、49基の床固工が設置されており、その内の41基が平成15年に登録有形文化財に登録されています。
中流域にある19号及び20号床固工は、現在では珍しい空石積み構造ですが、築造から80年以上経過しており、破損が著しい状況でした。
当時の施工にも携われた石工の方にもご指導をいただき、平成20年には19号、平成21年には20号の床固工本体の修繕工事が終わりました。
日影沢位置図
日影沢19号床固工破損状況
有識者や地区住民の方々を含めた「万内川及び日影沢歴史的砂防施設の保存と活用に関する調査・計画検討委員会」を設立し、平成17~18年度にかけて全4回の委員会を開催してきました。保存方法等について検討をし、以下の様な修繕方法に決定しました。
- 現存する空石積みの外観を維持し、災害に備えるための補修・補強を行う
- 石積み技術の伝承を図る
修繕工事の手順
既存施設の石積石の取り外し
原位置に積石を戻すため、取り外し前に各石に番号を振ります。
床固工背面には土砂が満砂状態であり、背面の土圧を考慮すると床固工自体が崩壊する恐れがあったため、良好な状態の表面石は除去しないことにしました。
補強対策の実施
躯体コンクリート打設後(正面)
躯体コンクリート打設後(側面)
石積石の復元設置
取り外し前に撮影した写真を元に各割石を設置します。不足分は現地の石材を活用し、手作業で割石加工します。さらに、コンクリート打設面を表に出さないよう、丁寧な割石積施工を行います。石工の熟練した石積み技術が必要な作業です。
不足分の石については、現地で発生する石から割石を切り出します。
せり矢(くさび)を打ち込んで石を割りますが、『思った形に割る』ためのせり矢の設置位置については、石工の技術を有する者しかわかりません。
次に、小型ハンマーを振るって形を整え、0.40(幅)×0.25(高さ)×0.35(控え長)の四角錐型の割石に仕上げていきます。コンクリートカッター等の機械を使用していないにもかかわらず、各辺は直線的に仕上がります。さらに、石積作業中も、隣接する割石の形状を見ながら形を整えながら、積んでいきます。
修繕工事完了状況
修繕工事着手前の日影沢19号床固工
修繕工事完了後の日影沢19号床固工
修繕工事着手前の日影沢20号床固工
修繕工事完了後の日影沢20号床固工
今後の対応予定
日影沢には、19号及び20号床固工の他にも破損が進み、修繕が必要とされる床固工が多数あるため、今後も計画的に修繕工事を進めていく予定です。
また、日影沢には床固工等の維持管理を行うための道路が無いことから、破損状況を把握することが非常に困難となっています。登録有形文化財に登録された床固工等の適切な維持管理に向けて、現在日影沢上流域までの維持管理用道路の設置を検討しています。併せて登録有形文化財の維持管理・巡視点検体制についても検討を進めています。