本文
産卵場造成技術の開発
要約
現在までの試験結果からの造成は、a巨石の除去 b丸太の設置 c小砂利の投入による方法であるが、3行程目の小砂利投入は砂利がない場所での遠距離運搬や労働性から、容易に造成することができない。このため、代替策として河床耕耘により産卵床効果と造成軽減の効率化を図る。
背景・ねらい
イワナは支流を主要な産卵水域とする傾向があり、また、産卵床の立地条件は水深が約22cm、流速が約10cm/sで中間粒径が約17mmの砂礫が堆積している物陰の渦流部や渕尻の順流部である。しかし昨今の渓流域は、河川工作物の設置などによる遡上障害、砂礫、流量等の変化により産卵条件が満たされないものが多く認められる。また、本流では、産卵後に起きた増水やダムによる放水で産卵床の流失や埋没が見られるなど、渓流魚の自然繁殖に影響を与える要因が多々存在する。
現在、渓流魚の主要増殖手段は放流であるが、遺伝的多様性を確保するため在来系群の増殖が必要である。このため、自然繁殖を手助けする方法として、作業性がよく効果の高い人工産卵場の造成を検討した。
成果の内容・特徴
- 産卵場造成の1工程を減らすことで産卵場造成時間の短縮(一箇所あた り3h/3人を1h/3人)することが可能となった。
- この造成方法で真の産卵床(実際に卵が産みつけられた産卵床)やぺア リング(雌雄一対となった産卵行動)を確認した(表1)。
- 産卵場を造成することにより、この水域におけるイワナ生息量が逐年ご と増加(2000年0.193/尾/平方メートル、2001年0.337/尾/平方メートル、2002年0.597/ 尾/平方メートル)した。
成果の活用面・留意点
- 産卵適所が河川内に数多く存在すれば多くの産卵親魚が利用しまた、重 複産卵を防ぐことが出来、卵(稚魚も含む)の生残率も高くなる。
- 間伐材の利用による渓流環境に配慮した造成が考えられる。
様々な状況に応じた産卵場造成手法の開発が考えられる。 - 造成効果は判明されたが、造成箇所の状況により河床改良方法の選択が 必要
具体的データ
表1 年度の造成時間及び産卵床数
その他
研究課題名:イワナ資源回復保全調査
予算区分:国委
研究期間:平成14年度(平成10~14年度)
発表論文等:なし
内水面水産試験場 資源課
Tel 0258-22-2101
Fax 0258-22-3398