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農業水利施設の歴史探訪シリーズ vol.7 『配分が一目で分かる円形分水工 小出郷の用水施設』

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0005149 更新日:2019年1月17日更新

施設概要【にいがた農業水利施設百選(整理番号10)】

 当施設は魚沼市南西部に位置し、小出郷第1頭首工で佐梨川から取水した水を小出郷(旧小出町、旧湯之谷村地域)の農地767haにかんがいする用水施設です。
 特に旧小出町上原地内にある「円形分水工」は、中央部から湧き上がった水を外側の円筒に設けられた仕切り板で小出支線用水と伊米ヶ崎(いめがさき)支線用水に一定の比率で分配する分水施設です。

円形分水工の画像
円形分水工

インタビュー協力

インタビューの様子の画像
インタビューの様子

渡辺 実さん(魚沼市土地改良区・事務局長)
佐藤 俊介さん(魚沼市土地改良区・主任)

施設の歴史

(1)小出郷第1頭首工等の用水施設の建設

 小出郷第1頭首工等の用水施設ができる以前は、上原堰から取水し農地に用水を供給していました。
 この地域は桑畑が多い地域でしたが、開田(新しい農地を開墾)が進む中で上原堰の受益農地が増えていき、昔からの受益者と新しい受益者の間で水争いがありました。そのため、安定した用水の取水源の確保が必要となっていました。
 その折に、度重なる水害で上原堰が被災したことから、「県営用水改良事業(昭和32~39年度)」により上原堰を含む6箇所の堰が統合され、小出郷第1頭首工及び用水路が造られました。これにより安定した用水供給が可能となりました。

(2)円形分水工の建設

 堰を統合し、新しい用水施設を造るにあたり、それぞれの農地へ供給する用水を巡って争いが起きないように、用水を公平に分水する必要がありました。
 分水施設(分水工)の構造は分水が目で見てわかりやすいことから、円筒形の分水工となり、昭和34年に完成しました。
 これにより、用水路の流量に関わらず、小出支線用水と伊米ケ崎支線用水とを一定の比率で分水することが可能となりました。また、地元では円筒形の分水工であることから、「円形分水工」と呼ばれるようになりました。

旧円形分水工(昭和34年完成)の画像
旧円形分水工(昭和34年完成)

改修への道筋

(1)施設の老朽化から改修へ

 昭和32~39年度に築造され、40年以上の長きに渡って用水を供給してきた施設は、老朽化により護岸の崩壊・漏水が度々発生し、用水の安定供給・維持管理に支障をきたすようになっていました。
 そのため、将来の営農に適した「用水の安定供給」と「維持管理の節減」を図ることを目的に「県営かんがい排水事業伊米ヶ崎地区(平成9~17年度)」で施設の改修が行われました。

(2)伝統を受け継ぐ新円形分水工

 旧円形分水工は築造から40年以上経過し、地元住民からは「維持管理しづらく、安全面の不安がある」という意見が多数あり、改修にあたっては「円形分水工形式」にするのか「背割分水工形式※」にするのか検討されました。
※水路の中に壁を造って分水する構造(詳細は下記リンク参照)

小学生を対象とした出前講座の様子の画像
小学生を対象とした出前講座の様子

関連リンク『新潟県の後世に残したい農業水利施設』県内の特徴的な分水工~水争いを収める技術~[PDFファイル/2.02MB]

 幾度もの検討を重ねた結果、円形分水工形式は「貴重な施設であり、景観上も特徴がある」「先人が培ってきた伝統を後世に残そう」と関係者の意見が一致し、平成16年度に「新円形分水工」が完成しました。
 新円形分水工は、現在では農業用水の分水工としての役割のほか、地元の小中学校の学校教育の場などとして活躍しています。

さらなる世代へ

 新円形分水工を含む用水施設は、これからも地域の農地を潤す役割を担っていくこととなります。地域の農業に欠かせない用水施設をこれからも現役として残していくには、適切な維持管理が必要です。
 そのために、自治体、土地改良区、地域住民が一体となって管理していくことが重要です。施設が何のためにあるのか、多くの方々の理解を得ながら、地域農業の歴史や施設の役割などをさらなる世代に繋いでいければと思います。

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