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小麦品種「ゆきちから」の製パン適性を高める穂揃期追肥
「ゆきちから」の穂揃期に窒素成分を4~6kg/10a追肥すると、パン用小麦のタンパク質含有率基準値11.5~14.0%を満たし、製パン適性が高い小麦を生産できます。
小麦品種「ゆきちから」の製パン適性を高める穂揃期追肥 [PDFファイル/224KB]
新潟県で栽培されているパン用の小麦品種「ゆきちから」の、穂揃期(ほぞろいき)追肥の手法と効果について紹介します。
近年、地元産のパン用小麦のニーズが新潟県内で高まっており、小麦の作付面積は全国の約21万haと比べると微少ではありますが、年々増加傾向にあります。今後も新潟県内で小麦の作付面積は少しずつですが増えていく可能性があります。
農林水産省が定める水田経営所得安定対策の中で、パン用小麦の品質評価基準としてタンパク質含有率の基準値を11.5%~14.0%と定めています。東北地方で小麦栽培が盛んな地域では、出穂期または穂揃期に窒素成分を追肥してタンパク質含有率を高めることに努めています。
新潟県では数年前から「ゆきちから」というパン用小麦の栽培がおこなわれるようになりましたが、本県における出穂期から穂揃期にかけての窒素成分の追肥技術の効果は検証されていません。タンパク質含有率が高く、製パン適性が高い小麦を安定供給するために、新潟県向け施肥体系の早急な開発が必要と考えられます。
本成果では、新潟県におけるパン用小麦「ゆきちから」の穂揃期追肥技術の確立を図りました。なお、本成果は細粒質グライ土壌の水田転換畑において、10a当たり窒素成分で基肥を6kg、追肥を消雪後に3kg、茎立期に2kg、止葉抽出期に2kg施用した条件下における結果として報告いたします。
「穂揃期」とは、ほ場全体の茎数の8割程度が出穂する時期を言います。穂揃期追肥を施用しないと、タンパク質含有率は品質評価基準値の11.5%を満たしませんが、穂揃期に窒素成分4~6kg/10a追肥することで、タンパク質含有率基準値を満たすことが出来ます。
穂揃期追肥によるタンパク質含有率の向上により、食パンの膨らみが良好となり、また、口に入れたときの柔らかさも高まります。
穂揃期追肥技術における注意点として、窒素成分8kg/10aと施用量が多すぎると、遅れ穂が多くなって未熟粒の割合が高まる恐れがありますので、4~6kgの適正量を施用して下さい。また、穂揃期追肥は小麦の子実タンパク質含有率を高める技術であり、収量、千粒重、容積重を改善する施肥法ではありません。
小麦「ゆきちから」の穂揃期追肥は、新潟県においても品質評価基準値を満たし、かつ製パン適性が高い小麦を作るうえで重要な技術となります。
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