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障害者芸術文化祭(文芸部門)の作品
文芸作品は、短歌43作品、俳句60作品、川柳34作品、自由詩43作品もの応募がありました。
いずれも、作者の皆さんの思いが込められた素晴らしい作品ばかりです。
入賞作品は下記をご覧下さい。
短歌部門
県知事賞
- 作者 齋藤(さいとう) ひろみ
- 作品 「新米の ご飯は米が 立っている」と 会話が弾む 朝の食卓
- 審査員コメント
「新米のご飯は米が立っている」と表現、つづいて「会話が弾む」とくる。
これはごく当り前の事を自然に詠んでいて見事である。
農業の苦労も一言も言わないでよい。それで充分、身にしみて分かろうというもの。
審査員特別賞
- 作者 石岡 ヒロ子
- 作品 白つえに 辻違(たが)えしか でこぼこの 裏路らしく 人も通らず
- 審査員コメント
盲の人、二三句のめったに通らぬ道で苦労しているのであろう。
裏道らしいと、めったに通らぬ道と感じた。行くか行くまいか思案だ、
それが要の方策だ。
歌として一言「人も通らず」とあるが「人の通らず」と訂正した方がよい。
選者感銘の歌である。
俳句部門
県知事賞
- 作者 池田 裕介
- 作品 揚羽蝶(あげはちょう) 日陰の匂い 掻きまわす
- 審査員コメント
揚羽蝶を見ると、普通は鮮やかな色に目が行きます。
しかし、作者は違った所に心が動いたのです。
夏の暑い日に、日陰で休んでいると、自分の周囲を揚羽蝶が舞いはじめました。
ふと、何か風のような、動くものを感じました。それを「日陰の匂い」と直感したのです。
確かに、日向には日向の匂いがあることは誰でも分かります。作者の感性から「日陰の匂い」と詠み取った素晴らしい作品です。
審査員特別賞
- 作者 齋藤 弘司
- 作品 病室の 窓に映りし 秋の雲
- 審査員コメント
長い間入院をしていると自然に接することがなくなります。
病室の窓から見える季節による木々の変化、そして空の変化くらいだろうか。
特に、ベッドに横になっているときには、空しか見えません。
作者には窓越しに、秋の雲が見えたのです。
「映りし」は硝子に反射してという意味ですが、ここでは窓硝子を通してと読みたいです。秋の雲に懐かしさとか、淋しさを感じた心の内の作品です。
川柳部門
県知事賞
- 作者 本間 光子
- 作品 平凡な 余生句がある 点字打つ
- 審査員コメント
作者自身、眼が不自由なため、余生を詠んだ川柳の点字を明るく、
しかも「平凡な」と表現したところが、作者のやさしさと余裕さえ感じさせています。
川柳をいかなる環境であろうと、明るく表現するその姿勢が見事です。
審査員特別賞
- 作者 三浦 五十弥(いそや)
- 作品 たたかれて たたき返して 真の友
- 審査員コメント
川柳はどちらかと言えば強い文芸です。
もちろんやさしい作品も多いのですが、心の中の芯の強さはかくせません。
この句ははっきりと「たたかれてたたき返して」と表現したところに
作者の「悟り」を感じます。この句も見事です。
自由詩
県知事賞
- 作者 飯島 弘子
- 題名 夏の朝
- 作品
まだ静かな時
さっきまでの暗さはもうない
外への扉を開ける
歩く あるく 歩く あるく
欅(けやき)の木が待っている
木のベンチで休む
背骨を曲げたり伸ばしたり
だんだんに
欅(けやき)のてっぺんの
一枚一枚の葉が見えてくる
白い雲が流れている
深い海のような青い空
ここからは 見えないけれど
その向こうの向こうは
とてつもない
大宇宙が広が
夏の朝 一日が始まる - 審査員コメント
飯島さんの「夏の朝」は清楚な題名が光ります。最初の四行で朝の情景
を描写し、「歩く あるく ----」と漢字とひらがなで表す繰り返しが、
詩のリズム感となって効果的です。更に二連目で、体を休めながら見る欅
のてっぺんの一枚一枚の葉の表現には葉の間から、空の青さが見える
新鮮さがあります。「とてつもない大宇宙」は希望の朝へと繋がって
います。これからも詩作の力を大切にしてください。
審査員特別賞
- 作者 小沼 優希
- 題名 寄宿舎に帰る
- 作品
僕は、日曜日に寄宿舎に帰る
四時ごろ家を出て、
途中で夕飯を食べて、
それから寄宿舎に帰る。
いつもなら沢山の友達がいるのに、
日曜日は、僕一人しかいない。
なんだかさみしい。
寄宿舎の先生は、
そのことを知っているのか、
「お帰り!」
元気にあいさつしてくれる。
今日は、一人で寝るけど、
月曜日は、大勢の友達が来る。
とってもうれしい。 - 審査員コメント
小沼さんの「寄宿舎に帰る」という詩からは、寄宿舎へ帰る嬉しさが、
いきいきと伝わってきて、温かい気持になりました。「お帰り!」と言って
迎えてくれる先生や、月曜日に会える大勢の友達が居るということは、
小沼さん自身が純粋で優しい人だからだと思いました。心の中の色々な
想いの中から「嬉しい」という気持を詩に表現したことに励まされました。
詩を書き続けていってください。