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田辺石材店 田辺 聡志さん(2002年4月入社)

何百年先にも残るものをつくる 受け継いだ技を、未来へ
田辺石材店
2002年4月入社
田辺 聡志(たなべ さとし)さん
■出身:高校 普通科
■資格:新潟県卓越技能者「にいがたの名工」、厚生労働省認定ものづくりマイスター、石材加工一級技能士、新潟県職業訓練指導員免許
家業を継ぎ、石と向き合う
田辺石材店は、120年以上の歴史を持つ石工事業を代々営む家業で、私はその5代目にあたります。高校3年生の春頃までは大学への進学を考えていましたが、具体的に学びたい分野が決まらず迷っていました。
その時、父から「大学で何をしたいのか」と尋ねられても答えられなかった私に、父は「それなら家業をやってみないか」と声をかけてくれました。もともとプラモデルの製作など、ものづくりが好きだったこともあり、この道に進むことを決意しました。
高校卒業後、当時国内唯一の石材加工専門の職業訓練校があった愛知県岡崎市で修業を開始。岡崎市の石材店に弟子入りしながら、昼間は石材店で実務を行い、夜は職業訓練校で技術を学ぶ日々が4年間続きました。今振り返ると非常にハードな生活でしたが、同期25人と切磋琢磨し、思い描いた通りの作品を制作できるように技術を磨き上げました。
現在は、鳥居やお墓、住宅の石灯籠などを制作し、設置工事まで一貫して手掛けています。特に神社の狛犬(こまいぬ)といった彫刻の制作は高度な技術を要し、田辺石材店では私一人で制作しています。四角い石材を機械で粗切りした後、何十種類もの道具を使い手作業で削り出していきます。制作には短いもので約1カ月から、長い場合は半年ほどの時間をかけ、一つひとつ丁寧に仕上げています。
「思っていた以上」の喜びを生み出す
お客様の希望や要望を丁寧に汲み取り、それを基にCAD図面を作成して石の特徴を細かく伝えることで、完成後に「思っていた以上に素晴らしいものができた」と喜んでいただける瞬間が、この仕事の大きなやりがいです。
近年では安価な海外製品も出回っていますが、地域に根付く神社の狛犬などの制作を依頼されることも多くあります。30代半ばで初めて狛犬を手掛けた際、お客様から「あなたが作るのなら置きたい」と言っていただいたその言葉は、今でも忘れることができません。石は天然物であり、採掘される場所によって性質が異なります。木に年輪や目があるように、石にも「目」があります。日々、石材のクセを見極めることに試行錯誤しながら、丁寧に制作に取り組んでいます。
石材は風化しにくく、何百年、何千年とその形を保ち続けます。私自身がこの世を去ったあとも、自分が手掛けた作品が残り続けること。それこそがこの仕事の最大の魅力です。

石材加工の魅力を次世代へ
現在は私のほか40~50代の職人3人と事務員1人が勤務しています。細かい作業や体力を必要とする仕事が多いため、作業中は真剣そのものです。休憩に入ると雑談をしながらコーヒーを飲んだり、お菓子を食べたりして楽しく過ごしています。
石材業界では、海外製品が出回ったことをきっかけに、製品の製造をやめ、販売や設置だけを手掛ける石材店が増えています。その影響で職人不足が深刻な課題となっており、このままでは技能の消滅も危惧されます。石工事業の仕事そのものが知られていないことも要因の一つだと言われています。
そのため、少しでも多くの人に石工事業の魅力を知ってもらおうと、県内の小中学校で石を削る体験教室を実施しています。石材加工の楽しさや達成感を伝え、未来の優秀な石職人を育成するきっかけをつくりたいと考えています。
●とある一日のスケジュール
- 07:30
- 出勤 朝礼
- 8:00
- 仕事開始
- 12:00
- 昼休み
- 13:00
- 仕事再開
- 17:30
- 仕事終了 事務作業開始
- 19:00
- 退勤
●キャリアパス
人によって異なりますが、石の性質を理解できるようになるまでにおよそ5~10年ほどかかります。私自身は愛知県での修行中にひたすら基礎を学びました。全国から集まった職業訓練校の同期と競技大会で技術を競い合う場もあり、優れた技術と品質を見極める力を鍛えることができました。
新潟に戻った後もさらに技術の研鑽を続け、さまざまな資格や認定を取得しました。また、自分の実力を試すため、全国の職人が集う技能五輪全国大会などにも挑戦しており、令和7年度の技能グランプリでは最高賞の金賞を受賞することができました。
探求心が生み出す、職人の仕事
石材は100%天然素材であるため、資格や技術、知識だけでなく、材料を見極める目を持つことが求められます。建設業はどの業種にも、そうした仕事の極みにあたる部分が存在しており、それを探究できるかどうかで、仕事の質や結果に大きな違いが生じると確信しています。どの業種に就いたとしても、探究心を忘れず、その究極の部分を追求し、そして何より、ものづくりの中で感じられる楽しさや達成感を感じていただけたらと思います。
もちろん、その中でも石工事業を選んでもらえたら嬉しいですし、その時は、私がしっかり指導していきますよ。