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【農業技術・経営情報】畜産:酪農における飼料用米給与技術のポイントについて(その2)
1 はじめに
今回は、2年以上継続して飼料用米(破砕玄米)を給与している酪農家の混合飼料(以下TMRという)のメニューを参考にして、そのポイントを紹介した情報の続きです。
飼料設計で重要な目安の1つである粗飼料価指数についてポイントを紹介します。
2 粗飼料価指数について
(1) 粗飼料価指数とは
乳牛の第一胃内を安定に保つ上で、飼料中の繊維の役割は、一つには飼料中易発酵性NFC含量の過剰の防止と、もう一つには、反すうを促し唾液分泌を促進する物理性であるそしゃく刺激作用です。
粗飼料価指数(Roughage value index、以下RVI)は、摂取飼料乾物1kg当たりのそしゃく時間を表した値で、単位は「分/kg・DMI」となり、そしゃく時間は、「採食時間+反すう時間」となります。飼料の物理性や粗飼料の特性を表し、繊維が長くてかさばる粗飼料では大きな値になり、粒の小さい濃厚飼料や粉砕した飼料では小さな値になります。
実際の乳牛に給与して、その反応から求められた値で、繊維の粗剛性によるそしゃく刺激効果である粗飼料因子を判断する指標です。
(2) 飼料のRVI値
表1に表された値は、代表的な値であることに留意する必要があります。同一粗飼料でも、切断長の長短やNDF含有率の多少によりRVI値も変動します。切断長が短くなればRVI値は小さくなり、長くなれば大きくなります。また、NDF含有率が小さくなればRVI値は小さくなり、多くなればRVI値は大きくなる傾向です。
表1 飼料のそしゃく時間(採食・反すう時間-RVI)
出典:日本飼養標準乳牛(2006年版、以下日本飼養標準)
(3) RVIの利用方法
日本飼養標準では飼料設計において、高泌乳牛のRVIの目安は、35分/DM・kg程度としています。また、乳牛のそしゃく時間には上限があり1日に13時間程度が限度と言われています。
RVIの値がわからない飼料もまだ多くありますので、給与設計においてRVIを目安として簡易的に利用する場合の、留意点を紹介します。
- 給与飼料のRVIの下限を31とする。(日本飼養標準の目安は35)
- 1日当たりのそしゃく時間=給与飼料のRVI×給与乾物量 ≦ 700とする。
- 粗飼料でRVIが判明していないものは、NDF値とし牛の反応を見る。
- 製造粕類は、NDF値の3割程度として牛の反応を見る。
- 濃厚飼料は、全て10とする。
3 実際の給与事例の検討
TMRメニューは、表2とおりです。各飼料の給与量の乾物混合割合(%) a に、その飼料のRVI値 b をかけて、TMR中の各飼料のRVI値 c を求めます。求められたRVI値の合計が、TMRのRVI値 d となります。
RVIの留意点と比較すると、
- 表2のとおり、このTMRのRVI値は、31であり、目安の給与飼料の下限値31以上となっています。
- また、1日当たりの給与飼料のRVI31×給与乾物量22.1=そしゃく時間685.1 ≦目安の上限値700以下となっています。
- 粗飼料で、RVIが判明していないものとして、もやし残さがありますが、もやし残さは、県の研究成果からアルファルファ乾草の代替可能であることから、アルファルファの値を利用できました。
- このTMRでは、「製造粕類は、NDF値の3割程度とする。」に該当する飼料はありませんでした。
- 濃厚飼料のうち飼料用米(破砕玄米)、配合飼料(粉砕ヘイキューブなど粗飼料が入っていないもの)のRVI値を10としました。大豆粕は、表1にある油粕類として5としました。
表2 TMRメニュー
参考資料
日本飼養標準乳牛(2006年版)
新潟県農業総合研究所畜産研究センター平成27年度試験研究発表会資料
平成26年度研究成果情報「もやし残さは、アルファルファ乾草の代替として乳牛に飼料使用できる」
牧草と園芸・第48巻第5号「乳牛用飼料における繊維の評価」 富田耕太郎
【経営普及課 副参事(農業革新支援担当) 坪野 樹】