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【農業技術・経営情報】担い手育成:新規就農者の栽培及び経営における課題の把握について

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0398172 更新日:2021年2月1日更新

 県内の新規就農者は、青年就農給付金(現 農業次世代人材投資資金)の活用や雇用の受け皿となる農業法人の増加などにより非農家出身者が増えています。これに伴い、農家子弟の就農が大多数を占めていた頃と比べ、栽培技術や経営者能力の個人差が大きくなっています。
 このような情勢を受け、農研機構(※)では新規就農者(主に新規参入者)の営農上の課題を把握するためのツールとして、「新規就農者向けの経営管理チェックシート<外部リンク>-施設園芸経営を対象として-」を作成し公表しています。
 そこで、施設園芸の新規参入者だけでなく、稲作及び園芸(野菜、果樹、花き)部門の親元就農者や法人等就業者を含めた新規就農者が営農上の課題を把握できるように「新規就農者習熟度チェックシート」(以下、「チェックシート」という。)を作成したので紹介します。

※農研機構:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

1 チェックシートの構成と使い方

(1)チェックシートの構成と特徴 

 チェックシートの設問は、農研機構のものを参考に農業技術等について「共通項目」、「栽培管理」、「販売管理」、「技術情報の収集」、「作業管理」及び「財務管理」の6つの管理分野に分けて設定しました(図1)。各管理分野のうち、栽培管理については稲作・野菜・果樹・花きの4つの営農部門ごとにチェックシートが別になっており、栽培管理以外の管理分野については共通シートになっています。

 特徴は、各管理分野ごとに技術を細分化した小項目を設定し、その小項目ごとに問題の要因を【知識・判断・実行】または【計画・実行・改善】の3つの区分に分けて質問項目を設定していることです(図1)。これにより、技術等の実行または改善までのどこに問題があるかを把握することができます(図2・3)

図1「チェックシートの構成と項目(一部)」
図1 チェックシートの構成と項目(一部)

 

図2「栽培管理等における知識、判断、実行レベルの模式図」
図2 栽培管理等における知識、判断、実行レベルの模式図

 

図3「作業管理における計画、実行、改善の模式図」
図3 作業管理における計画、実行、改善の模式図

(2)チェックシートの使い方

 各質問項目ごとに、4段階(1:思うようにできていない~4:十分できている)で新規就農者が自己評価します。回答できない項目または該当しない項目の質問には無理にチェックする必要はありません。

 栽培管理については、基本的に慣行栽培を基本に質問項目を設けていますが有機栽培等でも質問内容を読み替えることでそのまま使用できます。但し、特定の技術について判断したい場合は、個別に項目を追加してください。また、営農部門ごとにチェックすることを想定していますが、各営農部門に複数の品目を栽培している場合は品目ごとにチェックすることも可能です。

 なお、このチェックシートは新規就農者と普及指導センター等の関係者とのコミュニケーションツールとして作成しています。新規就農者が、各質問項目の自己評価のみで営農上の問題点を把握することも可能ですが、これを関係者から客観的に見てもらうことにより、自己満足に終わらずにより高い技術等の習得や農業経営の改善につなげることができると考えています。

 

2 チェックシートの適応例

 稲作を主部門として就農した新規就農者を対象にしてチェックシートを適用した結果が表1です。新規就農者の就農形態により自己評価の低い分野が異なっており、親元就農(新規学卒及びUターン)や法人就業で経営の一部しか任されていない者は、任されている分野以外の自己評価が低くくなりました。また、財務管理は全般に評価が低い傾向でした。

表1 管理分野ごとの自己評価結果
【4段階評価(1:思うようにできていない~4:十分できている)】
表1「管理分野ごとの自己評価結果【4段階評価(1:思うようにできていない~4:十分できている)】」

 稲作の栽培管理における小項目(技術)や、栽培管理の要因別に平均値を算出したものが表2・表3です。表2ではC(法人就業3年目)及びD(新規参入3年目)は、水管理と穂肥について自己評価が低く、表3でその要因をみると特に判断の平均値が低いことから、知識はある程度有しているものの営農現場での判断で課題を抱えていることが分かりました。

 

表2 栽培管理における小項目別の自己評価結果(一部抜粋)
表2「栽培管理における小項目別の自己評価結果(一部抜粋)」

 

表3 栽培管理の要因別の自己評価結果
表3「栽培管理の要因別の自己評価結果」

 

3 チェックシートの活用による課題の明確化

 新規就農者は様々な課題を抱えています。しかし、非農家出身の新規参入者や法人等就業者は親元就農者に比べて詳しく教えてくれたり、気軽に相談に乗ってくれる人が近くにいないケースが散見されます。また、自らの課題を具体的に把握していない新規就農者もいます。

 このチェックシートを使って管理分野ごとや問題の要因別に評価点を数値化することで、営農上の課題を明確にすることができます。さらに、普及指導センター等の関係者等から見てもらうことで、農業技術等の習得に関する課題がより具体的になり、農業経営の改善や技術の習得に向けた対策が明確となることが期待されます。目標の達成に苦労している新規就農者は、是非チェックシートを活用して課題を明確にしてください。

 なお、このチェックシートは各地域の農業普及指導センターに配布してありますので、関心のある方は相談してください。

【参考資料】

 

【経営普及課 農業革新支援担当 鶴巻 雅幸】

 

 

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