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【農業技術・経営情報】そば:収量と香りに優れるそばの収穫適期判定について
平成27年産からそばの農物検査規格が改正されました。従来の形質を重視した検査規格から充実度の指標となる容積重を重視した規格となりました。実需者は充実が良く風味の高いそばを求めています。そばは収穫時期の違いによって収量や風味に影響を受けます。適期収穫により収量と風味を確保し、丁寧な調製で全量1等に仕上げましょう。
1 そばは黒化率70~80%の成熟期に収穫すると収量が高く、香りに優れる
そばの黒化率は、成熟期を過ぎる頃まで一定の割合で上昇し、その後は子実の成熟と脱粒が同時に進行するため、黒化率の上昇が緩慢になります(図1)。
図1 播種後日数と黒化率の推移(とよむすめ)
成熟した子実は脱粒しやすくなり、台風の到来が多い年には大きく減収することがあります。年次変動を考慮すると、脱粒が始まる前の黒化率70~80%(成熟期)頃が最も収量が安定する時期となります(図2)。また、表1に示す成熟期(黒化率78%)に収穫したそばは香りに優れ、その後は黒化率の高まりとともに香りが劣る傾向が見られます。
このことから収量や香りに優れる収穫適期は、黒化率70~80%の成熟期頃となります。
図2 黒化率と収量の関係(とよむすめ・坪刈収量)
2 そば「とよむすめ」の積算気温による収穫適期判定のめやす
8月上旬~中旬に「とよむすめ」を播種すると開花期は9月上旬、開花最盛期は9月下旬、成熟期は10月中旬~下旬になります(表2)。
播種時期 | 開花期 | 開花 最盛期 |
成熟期 |
---|---|---|---|
8月上旬 (8月6日) |
9月上旬 (9月5日) |
9月下旬 (9月21日) |
10月中旬 (10月19日) |
8月中旬 (8月14日) |
9月上旬 (9月10日) |
9月下旬 (9月26日) |
10月下旬 (10月23日) |
8月下旬 (8月25日) |
9月下旬 (9月22日) |
10月上旬 (10月7日) |
11月上旬 (11月3日) |
注 ( )は平均日、8月中旬播種のみ平成20年を含む3年平均、他は平成21~22年の2年平均。
積算気温による収穫適期判定を行うには、開花最盛期を見極める必要があります。開花最盛期は圃場全体の約5割の株で主茎最先端の花房が開花した日とします(写真)。そばは主茎に葉や蕾を順次形成し、開花しながら伸長します。主茎最先端の最後の花房を見つけるためには、開花期から約2週間後に主茎先端の花房を観察します。この花房に次の葉や蕾が形成されていなければ、それが主茎最先端の最後の花房となるので開花状況を確認します。
開花最盛期の翌日から日平均気温を積算し、収穫適期となる成熟期(黒化率70~80%)までの積算気温は、8月上旬播種では500~550℃、8月中旬播種では450~500℃、8月下旬播種では400~450℃になります。圃場に近いアメダスデータや積算温度計などを用いて、収穫適期を判定しましょう。
写真 開花最盛期のそばと主茎最先端の花房
◎主茎先端の花房を観察し、新たに葉や蕾が形成されていなければ主茎最先端の最後の花房であり、開花を確認する。
3 収穫前の黒化率の確認方法
そばは訪花昆虫によって受粉結実するため、開花期以降に雨や低温が続くと昆虫の活動が低下し、そばの結実が悪く、成熟期近くまで開花がだらだらと続くことがあります。このように極端に結実の悪い年は、積算気温による収穫適期判定が難しいこともあるので、収穫の前に黒化率の確認も併せて行いましょう。
成熟期頃のそばは主茎頂部の集合花房の黒化率が群落内の黒化率とほぼ一致することが知られています。図3に示すように主茎頂部の集合花房の黒化率が70~80%であれば、そば株全体の黒化率も70~80%と判断できます。圃場内で数株ほど主茎頂部の集合花房から子実をしごき取り、黒化率を確認しましょう。
【経営普及課農業革新支援担当 服部 誠】