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特性について、コシヒカリと高アミロースの麺用のこしのめんじまんを比較品種として説明します。
新潟129号は晩生の品種で、長岡では成熟期がコシヒカリより12日遅い、かなりおくての品種になります。新之助と比べても5日から1週間遅い成熟期です。稈長はコシヒカリと比べれば短いですが、最近の品種としては、やや長めの稈になります。穂数はコシヒカリ並みで、こしのめんじまんよりは穂数がとりやすい、中間型の草型です。
耐倒伏性は稈長のわりに倒伏しにくい、やや強です。葉いもち、穂いもちは、コシヒカリよりも強く、穂いもちはやや強です。いもち病の抵抗性遺伝子はコシヒカリBLに影響を与えない、Pia,Pii,Pikと推定されます。
新潟129号の収量は、コシヒカリより2割程度少なくてかなり低く、玄米千粒重はこしのめんじまんよりは大きいですが、コシヒカリより2g以上小さいです。食味は、難消化性澱粉を多く含むため、極めて不良で、通常の米飯用としての利用には不向きとなります。
株をみると、コシヒカリよりは短いですが、こしのめんじまんよりは長いです。成熟期の倒伏をみると、コシヒカリがなびいていますが、新潟129号は立っています。玄米を上から見た大きさは、コシヒカリとあまり変わりませんが、粒張りが悪く、玄米が白濁して比重が軽いため、千粒重は小さくなっています。
難消化性澱粉について説明します。
米の澱粉は玄米の7割以上を占めており、その澱粉は概ね約8割のアミロペクチンと約2割のアミロースに分けられます。どちらもグルコースという糖が鎖状にいくつもつながってできた分子ですが、アミロースはほぼまっすぐグルコースがつながっているのに対して、アミロペクチンは枝分かれしている構造を持っています。
アミロペクチンは合成されるときにいろいろな酵素がかかわっており、SS(スターチシンターゼ)という酵素はそれぞれの鎖を長くするのに対して、BE(ブランチエンザイム、枝付け酵素)は分岐を作るような働きを持っています。SSⅡaという酵素の活性が高くなると、鎖が長いアミロペクチンになり、こういったアミロペクチンは主にインディカタイプのものに多くみられます。BEⅡbという酵素の活性が弱まると、分岐は少なくて鎖が長いアミロペクチンになります。そして鎖が長くなると、それぞれが絡み合ってきて、水に溶けにくく、消化しにくくなり、難消化性の澱粉になります。
新潟129号の系譜についてみると、片親はこしのめんじまん、もう片方はEM10というものになります。EM10は金南風という日本の稲の突然変異で澱粉枝付け酵素(BEⅡb)の機能が欠損した品種で、こしのめんじまんはインド型稲由来の高アミロース品種で、新潟129号はこの両親から育成されたものになります。
米の成分等の特性についての図表です。
米の外見は糯品種のように白濁していますが、ヨウ素で染色すると他の粳品種同様に染色されます。見かけのアミロースのアミロース含有率はコシヒカリが約16%に対して、高アミロース米のこしのめんじまんが25%で、新潟129号はさらに大きな値を示しています。難消化性澱粉についてはコシヒカリより格段に多い含有率を示しています
通常の澱粉は食べると、消化管を通って小腸で消化・吸収されますが、難消化性澱粉は消化されにくいため、小腸で全てが消化・吸収されることなく、一部が大腸まで到達します。そして大腸に到達した難消化性澱粉は腸内細菌によって分解されます。
これが人体にどう影響するかですが、糖の急激な吸収がないため、血糖値上昇を抑制し、腸内細菌の活性が高まるため、腸内環境を改善して、コレステロール等の脂質代謝の改善、満腹感の持続・向上の機能があると報告されています。糖尿病、生活習慣病等の影響が懸念される、現在の超高齢化社会の健康ニーズに届くような品種として、新潟129号を育成したというところです。
実際に新潟129号を用いた加工米飯について、食後の血糖値とインスリン分泌量を調べた試験結果をみると、血糖値は上昇が抑えられる傾向がみられ、インスリン分泌量は有意に抑制されるという効果が得られています。
今後の作付けされた場合の留意点については、上記の3点です。
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