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新潟県立阿賀黎明高等学校は、県東部に位置する阿賀町唯一の高等学校です。
平成28年から阿賀黎明高校と阿賀町は「阿賀黎明高校魅力化プロジェクト」に取り組み、地域団体である「阿賀黎明探究パートナーズ」と連携し、地域の資源や課題を活かした課題解決型授業を実施してきました。
令和2年度には新潟県立高校としては初めてのコミュニティ・スクールに指定。
「地域に開かれた教育課程」の実現のため、魅力ある学校づくりに取り組んでいます。
そんな阿賀黎明高校で、このたび地元の酒蔵である麒麟山酒造の協力を得て酒造りを題材に授業をされるというお話を聞き、お邪魔してきました!
第5回 原料米をつくる~米が好き!アグリ―(agree)。(R5.11.10更新)
第4回 日本酒を製造する~酒は一日にして成らず。(R5.9.29更新)
第3回 日本酒を製品化し、出荷する~ラベル貼るぞ貼るぞ貼るぞ♪(R5.8.25更新)
第2回 日本酒を営業する~ミスター麒麟山!(R5.8.18更新)
第1回 日本酒の値段の違いはどこからくる?(R5.7.21更新)
酒を造るには米と水!今回は米!
今回の講師はアグリ事業部の伊藤さんです。
以前は県内各地から酒米を購入していましたが、「全量阿賀町産の米で酒を造りたい!」という蔵元の思いから、平成23年にアグリ事業部は設立されました。
思いに共感した農家さんたちで構成される奥阿賀酒米研究会と連携し、今では約17haの田んぼをつくっています。
麒麟山酒造で作っている酒米は、五百万石、たかね錦、越淡麗の3種類。
この日はちょうどたかね錦が刈られていました!
つくる米の量については、どの酒がどれだけ必要なのか営業担当が売り先と相談し、内容を製造部に伝え、製造部からアグリ事業部に伝わり、アグリ事業部から農家さんへ必要な米の量が伝えられる流れです。
今年の夏はとにかく気温が高く、酒米は思うような大きさに育たない、予定よりも収穫できない等の影響を受けました。
ただ、昔から「米が不作の年は酒が美味しくなる」という言い伝えがあります!
これは、米の量が十分でなく失敗が許されない状況で、酒蔵の杜氏さんは特に慎重に酒造りに取り組み、その結果、品質の良いお酒ができるためだと言われています。
今年の酒蔵はいつも以上に「良い酒を造ろう!」と意気込んでいることでしょう。
乾燥施設の上山ライスセンター
暑さ対策やイノシシ等の獣害への対応から、農家の高齢化まで課題はたくさんあります。
「農業はチームワークが重要。」と伊藤さん。
今では、阿賀町で作られる米の2割近くが酒造りに使用されています。
地域に寄り添う酒造りは地元の産業を支えています。
「中山間地の農業を守る方法を一緒に考えてほしい。」ともおっしゃっていました。
最後に伊藤さんから「地元でも都会でも、麒麟山を飲んでもらえると嬉しい。」という言葉がありました。
こうした思いが麒麟山酒造のコンセプト”やっぱりいつもの麒麟山”に通じているのだと思われました。
伊藤さん、お時間いただきありがとうございました!
米はおのずと酒になるわけではありません。今回は製造部の見学です!
蔵見学等で目に触れる機会も多く、「酒造りといえば、この光景!」という方も多いのではないでしょうか。
今回の講師は、麒麟山酒造専務取締役、製造部長であり杜氏の長谷川さんです!
酒造りは、精米、洗米・浸漬、蒸し、麹造り、酒母造り、仕込み、搾りといった工程があり、完了までには約40日。熟成期間を経て出荷する場合はその後半年間貯蔵し、合計7~8か月ほどの期間が必要です。
流れに沿って、酒造りについて説明いただきました。
第1回で出てきた精米歩合の話も!
見慣れぬ器具等はもちろん、各工程にかかる時間の長さや仕込みの際に寝ずの番をすることに、生徒さんたちは驚いていました。
目指す酒は、飲んだ人に「やっぱりいつもの麒麟山。」と思ってもらえる酒。
麒麟山酒造では阿賀町100%の日本酒を製造しており、これは1995年から地元農家と連携して取組みを始め、2018年に目標を達成したものです。
地元産100%で仕込むことを持続可能な形で続けていくために、米はもちろん、水もより良いものにしようと森づくり事業を行っています。
蔵には「銘酒づくりは先ず人の和からはじめよう」という目標が掲げられています。
地域と一体になって取組みを続ける酒蔵の姿が、その言葉に重なりました。
長谷川さん、貴重なお時間ありがとうございました!
酒は酒のまま蔵の外には出せません。瓶に詰めないと!
今回は製品部を見学します!
こちら、普段の蔵見学では見られない施設です。
建物の中には、ズラッと並ぶタンク。こちらに入っているのは「原酒」です。
店頭に並ぶ日本酒の多くはアルコール度数が15度ほどですが、出来立てである原酒の度数は17~21度ほど。
多くの日本酒は、度数を調整するため原酒に水を加え、瓶に詰められます。(加水、割り水と言います。)
日本酒は滅多に腐りませんが味の劣化が起こるため、温度管理が重要です。
営業部と相談しながら瓶に詰める量を決め、季節ものを含め25種類ほどある原酒の管理温度は、商品の回転率により変えているとのこと。
お客さんに良い状態で飲んでもらえるよう、日々の生産管理には特に注意されているそうです!
こちらはろ過機。酒の中の異物(タンパク質等)を取り除き、味や色を調整する機械です。
製品部はクレームが直接来る部署なので、クレーム0(ゼロ)を目標に取り組まれています。
ところで、麒麟山の一部商品は六角形の瓶が使われています。
こちらのラベルですが、丸い瓶であれば機械でラベルを貼るところ、六角形の瓶はそういった設備がありません。
では、どうやってラベルが貼られているかというと?
……すべて手作業!
ということで、生徒さんがラベル貼りにチャレンジ!
貼った商品は実際に出荷されるとのことで、見ているこちらが緊張してしまうほど皆さん集中していました…。
作業が終わると、「1日中同じ作業をやっているんですか?」等、自主的に質問する姿が見られました。
ちなみに、1日同じ作業をされているそうです!
製品部は単純作業が多く、日々の生産管理等の苦労はありますが、地元の米と水から造った酒でお客さんに喜んでもらえると嬉しく、やりがいを感じるとのことでした。
「地元ってどんなところ?」と聞かれたら、答えはいろいろあります。
地元の町100%の酒があって、その商品をひとつ紹介することで、米にも水にも恵まれた環境で、その自然を守っている人がいて、その中で酒を造っている人がいると伝えられることも、また恵まれているというように感じられました。
製品部の皆さん、お話ありがとうございました!
小売店に来る前の酒は?
酒蔵と小売店をつなぐのは、酒蔵の営業担当者。
ということで今回の講師は麒麟山酒造株式会社常務取締役・漆原さんです!
今回は阿賀黎明高校の教室からお送りします。
漆原さんは三条市出身。ご実家が酒屋で、いったんは継いだものの酒造りの夢を諦めきれず、朝日酒造株式会社へ就職。その後、麒麟山酒造株式会社へ転職されたという経歴の持ち主で、35年間日本酒に携わる仕事をされています。
「麒麟山酒造に入社した時、心に決めたことがあります。”ミスター麒麟山”になるぞ、と。」
麒麟山と言えば自分、自分と言えば麒麟山。
新潟県内には、89(※)の酒蔵があります。多くの酒造が出入りする場で、まずはビジュアルを覚えてもらうため印象に残るキャラづくりをしているのだとか。
※R5.8.18時点。
(ちなみに社長や専務のことは、”マスター麒麟山”だと思われているそうです。)
グッと引き込むトーキングスキル。
この教室にいるメンバーは、この先漆原さんを見たらミスター麒麟山だと思ってしまいますね…。
麒麟山酒造の営業部は6人体制で、各々が各エリアを担当。
若者からベテランまでいるチームは、それぞれ仕事の進め方は違いますが、いいところがあれば取り入れます。
麒麟山酒造の酒は阿賀町内の酒屋へは酒蔵が直接納品、町外の店へは卸店を経由し店頭に並びます。
直接やり取りをしている町内の酒屋は元より、町外の取扱店についても卸店からデータをもらい、酒屋によっては直接営業に行き、そこで購入しているお客さんについてのヒアリングをしたり、時には店の人と飲みに行き意見交換をしたりします。
(それを聞いた生徒さんから「楽しそう。」という声が上がりました。ポジティブ!😊)
100人飲酒する人がいるとすると、日本酒を飲んでいるのはそのうちの4~5人。
(R3年度時点の酒類課税数量による。)
多くないお客さんに選んでもらうため、営業の仕事は主に「どのように楽しんでもらうか。」の提案だと言います。
また、切り口を変えて、酒を飲まない・飲めない人にも麒麟山の存在を知ってもらうための取組みをしています。
トートバッグやタンブラー等のグッズ制作をはじめ、最近は地元の小学生に酒蔵を見学してもらおうと受入れに向けて働きかけているとか。
たしかに、知ることで親近感が湧いて、飲まない人でも贈り物等に選ぶきっかけになるかもしれませんし、
また、地元にそういった産業があると知ることで、次の担い手に繋がるかもしれません。(そう期待します!)
営業の仕事はそういった機会の創出なのだなと、私も勉強させていただきました。
漆原さん、貴重なお話ありがとうございました!
米づくりから酒づくりを逆にたどる流れで進められるこの授業。
最初は消費者が酒を手に入れる場所…ということで、
今回は学校から一番近い酒屋・桝屋商店での授業です!
クラス全員、酒屋に入るのは初めて。(用事がないですもんね。)
やや緊張した面持ちでお店の方のお話に耳を傾けます。
まずは、麒麟山酒造の銘柄6種類の販売価格(四合瓶)の予想について。
銘柄 |
販売価格(四合瓶) |
---|---|
金雲母 |
|
遠雷 |
|
ながれぼし |
|
ユキノシタ |
|
超辛口 |
|
はでっぱの香 |
|
ヒント
銘柄 |
販売価格(四合瓶) |
---|---|
伝統辛口 |
1,100円 |
伝辛原酒 |
1,320円 |
やわらか |
1,320円 |
ヒントはありますが、これがなかなか難しい!
語感から高そう安そうくらいの想像しかできません。
答えは以下の通り。
銘柄 |
販売価格(四合瓶) |
---|---|
金雲母 |
2,750円 |
遠雷 |
1,485円 |
ながれぼし |
3,300円 |
ユキノシタ |
1,760円 |
超辛口 |
1,155円 |
はでっぱの香 |
1,150円 |
※R5.7.6時点の価格です。
同じ容量にも関わらず価格に違いがあるのは、酒米や瓶等の原材料価格はもちろん、精米歩合によっても変わってきます。
米を削れば削るほどコストがかかるので、大吟醸等は特に高めの価格設定です。
精米歩合や米を削るなど生徒には耳慣れない単語が続き、大丈夫かしらと少し不安になりましたが、皆さん熱心にメモを取っていました!
今後の授業で流れを遡っていくことで、理解の深まることが期待されます!
話は、価格予想にもあるはでっぱの香というお酒に移ります。
こちらは、地元の小売店が集まって「阿賀町でしか買えない、こだわりのお酒を造りたい」という思いから生まれたプライベートブランドのお酒です。
この日は入荷直前で、実物は拝めず……。
刈り取った稲を天日干しにする「はさ掛け」。はさ掛けをする場所を方言で「はで場」もしくは「はでっぱ」と呼び、このお酒に使われる酒米をはさ掛けしていることから、「はでっぱの香」という名前になったとのこと。
1本1本説明し、おいしさを知ってもらうため、販売は地元の酒屋8軒のみ。
米づくりはお客さんと一緒、酒づくりは麒麟山酒造の指導を受けながら酒屋のみでやるなど、強いこだわりを持って作られています。
店主の土肥さんは「ぜひ田んぼに入る経験をしてほしい。」と熱く語っておられました。
確かに、自分で植えたり刈ったりしたお米でできたお酒が飲めるというのは、あまりできない体験です!
高校生はまだ飲めないので、「参加したら20歳になった時プレゼントできるようにしようか。」と土肥さん。
阿賀町の酒も自然も大好きな酒屋さんによる授業でした。
【関連リンク】
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