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クマ剥ぎは、主にスギの樹皮をツキノワグマ(以下、クマ)が剥がす被害です。原因について諸説ありますが、樹皮下のあま皮をなめるために剥ぐと言われており、幹周の半分以上を剥がされると枯死することもあります。このため、木材生産上の大きな問題のうちの一つです。
そこで、今回は、クマ剥ぎの特徴及び対策について紹介します。
写真1 クマ剥ぎ被害木と被害面に残されたクマの歯形
クマ剥ぎは、5月下旬~7月下旬にかけて新たな被害が見られます。被害の特徴は、根元から1~2メートル程度樹皮が剥がされることと被害面にクマの歯形が残っていることです(写真1)。この被害は、15年生程度のスギから発生するようになり、同一林分内でも胸高直径が大きなスギが狙われやすいという傾向があります。
新潟県内の山間部では、佐渡を除くほぼすべての地域でクマが生息しています。しかし、まとまった被害は下越地方と糸魚川市西部にのみ見られます。特に被害が大きいのは、阿賀町と新発田市です。
写真2 KPロープ(右)とポリエチレンテープ(左)
クマ剥ぎ対策の一つとして、資材を用いる方法があります。森林研究所では、他県の事例を参考に平成22~24年度に防除試験を行いました。その結果、KPロープ巻きとポリエチレンテープ巻きで防除効果が高いことが分かりました(写真2)。
参考に両資材の比較を表1に示します。
資材名 |
資材単価 (円/m) |
1本当り使用料 (m) |
1本当り資材費 (円/本) |
耐用年数 (年) |
1年当りの資材単価 (円/本) |
---|---|---|---|---|---|
ポリエチレンテープ | 0.6円/m | 9m | 5.4円/本 | 3年 | 1.8円/本 |
KPロープ | 12円/m | 4m | 48円/本 | 10年 | 4.8円/本 |
KPロープは、単価がやや高めですが、耐用年数が十年程度と長いこと、またわな結びで縛ることにより肥大成長に伴う幹へのロープの食い込みなどを防げるのが特徴です。一方、ポリエチレンテープは、非常に単価が安いことが長所です。しかし、耐用年数が3年程度とやや短いことと肥大成長に伴う幹へのテープの食い込みが防ぎにくいという欠点があり、耐用年数が過ぎた後に資材を回収しないと幹の変形などの悪影響を及ぼす可能性があります。
それぞれ、ホームセンター等で販売していますので、特徴を理解した上でご使用下さい。
クマ剥ぎ被害は、母親から子供に習性が受け継がれると言われています。被害がない地域は、クマ剥ぎを学習したクマがいないからだと思われます。しかし、一度学習してしまうと何世代かかけて徐々にその地域で被害が広がる可能性があります。現在被害が目立たない地域でも今後問題になる可能性もありますので、注意して下さい。
森林・林業技術課 宮嶋大介