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きのこ生産者さんにとって、害菌類はできることならおつきあいしたくない相手です。しかし、現実には小うるさい隣人級からモンスター級まで、様々な害菌とおつきあいをしなければなりません。
そこで、おつきあいの一助とするため、代表的な害菌の「性格」等について紹介します。
なお、ここで紹介する害菌類については、森林総合研究所九州支所が作成したきのこ害菌対策のための冊子(同所HPからダウンロード可能)等を参照してください。
きのこ菌への侵害力は弱いですが、分生胞子が飛散しやすく、菌糸伸長が速いため、きのこ菌が回っていない培地への感染で、被害が大きくなることがあります。そのため接種室、接種機、培養室などを常に清潔に保ち、この時期の彼らの訪問は丁重におことわりしてください。
きのこ菌への侵害力は非常に強力ですが、分生胞子の空気感染力は比較的弱いことから、通常はそれほど怖い存在ではありません。しかし、自身を運んでくれる暴走車的なダニの存在で、超モンスター級に変身します。すなわち、ダニは好んでトリコデルマを食し、身に分生胞子をまとって培地間を移動し、その旺盛な繁殖力と相まって、感染力が急激に上昇し、破壊的な攻撃力を持つようになります。日頃からダニを寄せ付けないよう施設を清潔に保つことが重要です。
カビ類と比べて熱に強く、芽胞という薬剤や熱に対して極めて耐性の強い形態に変わるトランスフォーマーもいます。黒腐れ病を引き起こすシュードモナスは、培養中は悪さをせずに存在を隠していますが、子実体を形成すると、たちまち執拗に攻撃を繰り返す悪質なストーカー的存在です。発生した時には、栽培室の湿度過多や菌かき機の汚染を第一にチェックします。
シュードモナスによるエノキタケ黒腐れ病
前者はエノキタケやブナシメジのワタカビ病、後者はエノキタケの桃色カビ立枯病(通称ピンク)の原因菌です。一旦発生すると、なかなかおさまりません。とにかくしつこいです。また虎の威を借る狐のごとく、前述のシュードモナスが併発して暴れまくることが多々あります。
彼らに対しては徹底抗戦が必要で、第一に早期発見除去、さらにすべての工程での浄化を行います。また、菌かき機や廃床のかき出しによる感染拡大にも最大限の配慮が必要です。
このほかにも紹介したい害菌は多々ありますが、誌面の都合上、これで終わりとさせていただきます。
スピセルム・ロゼウムがエノキタケ培地表面を覆っている 以前はスポロトリクスとされていた
森林・林業技術課 本間広之