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近年、胎内市や新潟市などの海岸林において松くい虫被害が増加しており、林帯幅が広い内陸側林分では松くい虫対策が必要無い常緑広葉樹を活用した森林造成が行われています。しかし、平成10年から行われている常緑広葉樹の植栽工事を調査した結果では、日当たりの良い環境に植栽した苗木の活着が悪いことがわかっています。海岸砂丘地では土壌の表層に水分が極端に少ない乾砂層ができるため、根鉢の小さいポット苗ではその影響を受けて枯死することがあると考えられます。そのため、海岸砂丘地に適した苗木の根鉢のサイズを検討するために、Mスターコンテナを用いて常緑広葉樹の育苗試験に取り組んでいます。
Mスターコンテナとは内側に縦筋が入ったシートを円筒にしたものです。根がシート内側の縦筋に沿って成長することにより、ルーピングを防止し、移植後の根の成長がスムーズになります。このシートの大きさを変えることで根鉢の直径と高さを自由に設計できるのです。そこで、直径5.0,7.0センチメートル、高さ12.5,18.5,25.0センチメートルの合計6種類(2×3種類)のMスターコンテナを作り、培土を詰め、平成26年3月上旬にタブノキとシロダモを播種しました。
新潟県の海岸線は暖温帯であり、タブノキは県内の海岸線に分布する常緑高木です。また、シロダモは海岸部から標高200メートル以下に多く分布する樹種で、両樹種とも海岸林内に侵入定着が確認されています。
タブノキは4月上旬から、シロダモは4月下旬から発芽が始まりましたが、発芽が終了したのは両樹種とも8月中旬でした。1年目の苗高は2樹種とも平均で10センチメートルにも満たない大きさでしたが、早く発芽した個体ほど苗高が高い傾向がありました。また、シロダモよりもタブノキの成長が良く、1年目で直根が高さ25センチメートルのMスターコンテナの底部にまで達している個体が多く観察されました。
2年目は2樹種とも直径5センチメートルよりも7センチメートルのコンテナで苗高が高い傾向がありました。肥料は液肥を用いたため、直径が大きいコンテナでより多く肥料が与えられることになったためと考えられます。
タブノキの苗高は平均で30~40センチメートルに達したので、平成28年3月上旬に新潟地域振興局の協力を得て、新潟市西区の松くい虫被害跡地に植栽を行い、成育状況を調査しています。また、平成29年春にはシロダモの植栽を行う予定です。
Mスターコンテナによる育苗状況
タブノキコンテナ苗の植栽
森林・林業技術課 武田 宏