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全国の森林気象災害を分析した研究によると、台風による暴風被害は人工林の高齢級化、台風の大型化によって増加傾向とされています。新潟県も無縁ではありません。そこで新潟県に災害をもたらす台風の特徴と被害事例を紹介し、対策を考えてみます。
新潟気象観測所によると、新潟県では大型台風がすぐ西の日本海上を進む時に南~西方向から強風が吹きます。台風に伴う風は進行方向の右側半分の風速が強くなるという特性があるためです。これまで県内で森林の暴風被害が報告された、1954年の洞爺丸台風、1961年の第二室戸台風、1991年の平成3年台風第19号、2004年の平成16年台風16号は、いずれもが強い勢力を保ったままこの進路を通った台風です。
写真は大型台風(平成16年台風16号)が通過した際の被害の様子です。被災林分は南西に開放された立地に成立する約80年生のスギ人工林で、二年前に本数率40%の複層林整理伐を行っていました。被害率は26.6%、枯損(幹折れ・寝返り)率は22.6%で、中層から上層の主林木が被害を受けました(図)。また被害木は集材のために伐採された林縁付近に多く、樹形など個々の木の特徴よりも斜面内の位置が被害状況に影響していました。森林に暴風被害をもたらす強風は最大瞬間風速毎秒30m以上とされていますが、最寄りの気象官署(酒田)で最大瞬間風速毎秒40.2m、風向南が観測されており、威力の強い風が林の中に吹き込んだことで被害が起きたと考えられました。
図 被害形態別のサイズ分布
スギ人工林の暴風被害は恒常的な季節風では起きにくく、台風によってほぼ偶発的に発生します。また被災した場合の被害は甚大なため、今後注意を向ける必要があると思います。冒頭に紹介した研究によるとリスクは林齢とともに上がり41年生以上で一定なのだそうです。また、森林総合研究所のシミュレーションによると風倒リスクは高密度の林を強度間伐すると高くなります。風向きや風速は地形の影響で変化するため完全に予測することは難しいですが、少なくとも強風を受けやすい南~西に開放された斜面や過去に近くで風害が発生したことのある場所では過度な抜き伐りや林縁の破壊(伐採や強い枝打ち)は避けるのが無難と考えられます。
森林・林業技術課 塚原雅美