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ドローンを用いた空撮が我々の身近なものとなってきました。工事や森林整備の竣工写真や、災害箇所の空撮写真などで使われている写真を皆さんもごらんになったり、実際に使ったりしている方もいらっしゃると思います。森林研究所でも平成30年度にドローンを導入し、林分の成長の研究のためスギ林を上空から撮影しています。
ドローンによる撮影は航空機や人工衛星などと違い低高度からの撮影となるため、解像度が高いデータが得られます。また低高度のため、撮影対象が雲に遮られることがないという利点もあります。さらに、撮影する時間や場所、継続撮影する場合の撮影間隔などを任意に決められるというのも利点です。
撮影では調査対象林分を上空から面的に重ね撮りするので、1ヘクタールあたり約70枚撮影します(注1)。このように撮影された写真をSfMソフトウェア(注2)で処理を施すと、被写体の見え方の違いから自動的に写真の撮影位置を推定し、各写真の一致点を探索することによって三次元の座標データを持つ点群データが合成されます。
森林研構内の空撮写真から点群を生成してみました(図1)。一見写真のように見えますが、これはコンピュータ上に合成された大量の点で再構成されたもので写真ではありません。この一点一点は高さのデータも持っているため、このデータを用いて樹高の推定や、材積推定に活用していく予定です。但し、データ量が膨大なため専用のソフトウェアや、計算処理能力の高いパソコンも必要となります。
図1 点群で合成された構内無花粉スギ採穂台木植栽地の様子
SfMソフトウェアは撮影写真から点群データだけでなくオルソ画像というものも作成できます(写真1)。オルソ画像とは、地図と同様に真上から見たように修正された画像です。そのためGISソフトウェア上で地図データと合わせて使用することができ、様々な活用が可能となります。
写真1 図1と同じ場所のオルソ画像
ドローンによる空撮自体は特に難しくなく、最近話題のスマート林業の推進には必要不可欠な機器でもあります。しかし、そのためにはSfMソフトで得られた点群データの取り扱いや、オルソ画像の活用などを行うためのGISソフトの操作等に習熟しなければなりません。
森林・林業技術課 岩井 淳治
注1:DJI GS Proで地上100mからサイドラップ率、オーバーラップ率ともに90%で設定した場合の平均値。
注2:Structure from Motionの略で、移動するカメラから被写体形状を復元する技術を用いたソフトウェア。森林研ではMetashape Proを用いている。