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技術委員会電子会議室(7月30日付け議題(2)「燃料棒からの放射性物質の漏えい」に関する委員意見)
北村委員(7月30日)
(2) 特定された漏えい燃料近傍の制御棒5本を全挿入して、当該箇所の出力を抑制する手法は、燃料から微小な漏洩が起こった場合の対応策として合理的である。中性子束や熱出力の空間分布形状に影響はあるが、保安規定で定める熱的制限値を越えないのであれば、技術的な問題が生じる可能性は小さい。
(3) 今後定格出力に上昇して、漏えい燃料の出力を抑制した効果を確認するという措置についても、保安規定で定める運転上の制限を逸脱しないことが重要であり、その要件を満たしているのであれば、対応には合理性があると判断できる。
今回観測された異常は、燃料からの放射性物質放出を早期に高い感度で検出できる測定系を導入した結果として観測されている。高感度モニター導入前には検出されなかったレベルの異常事象である。軽く見ることは慎むべきであるが、技術的にも規制のルール上も問題とはならない異常事象であるゆえ、定格出力まで出力を上げた後も監視を強化しつつ運転を継続することは技術的に合理的な方策である。
ただし、炉心内の他の燃料集合体からも同様な事象が複数回観測されるような場合には、保安規定の定める運転上の制限は満たしていたとしても、運転継続について十分慎重な判断をすべきと考える。
吉川委員(7月30日)
核分裂生成物の放出に効く周辺部5制御棒を全挿入することによって放出量を低減できたこと、今後も抑制できるということを示すデータはどこを見ればそう言えるのか。
東京電力の回答
核分裂生成物の放出量を低減できたことは、添付資料―4の丸く囲った箇所にある、漏えい燃料周辺の制御棒挿入時のデータから判断しております。5本の制御棒を全挿入したことにより、高感度オフガスモニタの指示値が一時的に上昇し、その後指示値が徐々に低下しておりますが、過去に燃料漏えいが発生し出力抑制法を実施した際と同様の傾向です。これは漏えい燃料の出力が抑制されたことによりペレットが縮小し、燃料被覆管と燃料ペレットの隙間が大きくなり、放射性ガスが放出されたものと考えられ、このような現象を示すことはすなわち制御棒の挿入により漏えい燃料の出力が確かに抑制されたことの証左になると考えられます。
また、現在の値として30cps程度まで安定的に低下しています。
さらに、別表10-1及び別図10-1~3に示すように、出力抑制法により漏えい燃料の範囲を特定し出力を十分下げることにより、その後数ヶ月(最長約9ヶ月)運転を継続した実績もあります。
以上のことから、漏えい燃料の出力を抑制した状態を維持しながら今後も運転を継続することは可能と考えています。
添付資料17では、破損燃料の存在部近傍らしき5制御棒を全挿入される一方、それらに近い周辺部制御棒は、挿入位置を若干以前より引きぬかれた配置とされています。その分出力分布形状が、以前に比して、右半分がよりひずんだ形になると考えられますが、この制御棒パタンで、燃料棒温度分布が熱的制限値をクリアするという詳しい3次元核熱計算結果は、資料として添付されていないため確認できません。
東京電力の回答
3次元核熱水力計算の結果につきましては、添付11-1に示しております。この評価結果は、今回出力抑制のために挿入した5本の制御棒は全挿入のまま操作しないものとし、炉心内の反応度調整のため他の制御棒の挿入位置を調整した制御棒パターンを入力条件として運転サイクル末期までの解析を行ったものであり、運転サイクル末期までの全期間において最も厳しい結果を記載しております。
すなわち、今回5本の制御棒を全挿入することにより、ご指摘のとおり非対称な制御棒パターンとなり、制御棒を全挿入した領域以外の部分で定格熱出力を維持することとなりますが、この場合においても最大線出力密度や最小限界出力比の値は保安規定に定めるの運転上の制限値を満足していることを確認しております。
東京電力の回答
次回定期検査時において、漏えい燃料を特定した後、原子炉から当該の漏えい燃料を取り出し詳細点検を実施します。
最近は実時間計算能力のある3次元核熱解析技術の精度も向上しているので、今後の監視強化の中でそれを活用して、破損燃料の拡大や伝播を防止するなどを検討されるのは如何でしょうか。
東京電力の回答
- 次回定期検査時において、まずは原子炉内で漏えい燃料を確定し、漏えい燃料を原子炉から使用済燃料プールに取り出します。取り出しにあたっては、原子炉停止後から時間が経っていることから燃料棒内の放射性ガスは十分に減衰しているものと考えられますが、炉心をビニルシートで養生するとともに局所排風機で内部の空気を引っ張る等の措置をとりながら慎重に取り出します。
漏えい燃料については、詳細点検を実施した後使用済燃料プールで適切に保管します。
なお、柏崎刈羽原子力発電所において過去に発生した漏えい燃料についても、現在使用済燃料プールにおいて保管しておりますが、定期的に使用済燃料プールの水質を監視しており、これまで特に異常は発生しておりません。 - 今回出力抑制のため挿入した制御棒については、今後も挿入し続けながら運転を継続していきますので、当該領域の燃料集合体の出力は今後も十分低い状態に保たれていくものと考えております。
よって、今後運転継続するに当たって全挿入した制御棒を除く他の制御棒の操作(制御棒パターン調整)を計画する際には、今回制御棒を挿入した付近の燃料集合体の出力が大きく変化しないことについてプロセス計算機の三次元核熱水力計算により評価・確認するとともに、当該領域の燃料集合体について、プロセス計算機の三次元核熱水力計算により線出力密度及び限界出力比を継続的に確認することにより、燃料漏えいが拡大しないよう適切に対応していくこととします。
鈴木(元)委員(7月31日)
高感度オフガスモニタの指示に現れた核分裂生成ガスXe同位体の放射能濃度およびXe133の濃度変化から判断して、漏えい燃料が発生したことは確実である。しかし、炉出力低下に伴いXe133の濃度が低下したこと、及び炉水中の(核分裂生成物の)ヨウ素131濃度が低い状態を維持していることから、燃料被覆管の損傷(小さな孔あるいはクラック)が未だ小さいままであって、大きな損傷に拡大してはいないと判断できる。
2.漏えいの原因について
東電は、被覆管における異物フレッティングの可能性を強調している。確かに今回、燃料棒の製造上の欠陥、取り扱いその他の通常の因子が原因となっていることは、燃料棒製造における品質管理レベルの高さや従来の実績を考えると非常に考えにくく、異物フレッティングの可能性は大きいと考えられる。ここで7号機にはデブリ(異物)フィルター付きの集合体とフィルターがない集合体が混在しているが、漏えい燃料を含むと思われる複数の集合体がそのいずれかであるかも示してほしい。
また東電は地震の影響を否定している。確かに、地震後の燃料集合体に対する東電の解析評価及び点検結果の示すところは、地震時の振動が直接的かつ即時的に燃料被覆管に(小さな)損傷を与えた可能性はないということであるが、ここから直ちに地震とは無関係との結論を引き出すには時期尚早であろう。真の原因は漏えい燃料棒を含む集合体を取り出して詳細に検査して初めて明確になる。現時点では、異物フレッティングはあくまで仮説であることを忘れないようにすべきである。
東京電力の回答
出力抑制法は、制御棒を挿入することにより漏えい燃料の出力を低下させることで、漏えい燃料の範囲を特定するものであり、漏えい燃料は全挿入した位置の制御棒に隣接する、あるいはその周辺の燃料であると考えております。
これら燃料の異物フィルタの有無は下図のとおりで、フィルタ付きのものもフィルタなしのものもあります。
・次回定期検査時の詳細点検
燃料漏えいの原因としては異物によるものと考えておりますが、次回定期検査にてしっかりと調査を行いいたします。
今回東電が実施した出力抑制法によるプラント出力低下、漏えい燃料(集合体)の特定、漏えい燃料の出力抑制は、漏えい燃料が発生した場合に通常行う対策として実績があり、有効と考えられる。
東電は、漏えい燃料を含む1体の集合体を明確に特定できてはいないが、数個の集合体のいずれかに存在することまで絞り込めたので、東電としてはそれらの複数の集合体に囲まれた制御棒5本を全挿入することで、定格出力に復帰しても漏えい燃料棒の出力を十分低いレベルに維持することが可能と考えている。低出力状態とすれば、燃料の温度が低下して核分裂生成物の放出や燃料棒内移動が抑制され、燃料棒内ガス圧力も低下して外部への放出が低下し、同時に被覆管の機械的負荷やクリープ変形速度が減少するので被覆管の破損箇所の拡大が抑制される効果を持つ。したがって、東電の判断はとりあえず妥当と考えられるが、炉心燃焼解析などによりその低出力レベルを十分確認評価し、開示してほしい。特に、資料で赤色で示された「指示値の変動が大きかった制御棒周辺の燃料集合体」の外側に3体の集合体があるが、これらの集合体の出力についてもその抑制出力レベルを十分確認評価し、開示してほしい。
東京電力の回答
下図に今回出力抑制法により全挿入とした制御棒に隣接する燃料集合体ならびにその外側に配置している燃料集合体の燃料棒最大線出力密度をお示しします。この図は燃料集合体毎に74本ある燃料棒の単位長さあたりの出力を示したものです。
また東電は、炉心の他の集合体に対して制御棒挿入位置の調整により炉心出力のバランスを維持して定格出力状態に復帰するとしている。これは、出力が抑制された集合体による出力低下を他の健全な集合体の出力増加で補うことを意味する。この出力増加は大きいものではないと予想されるが、東電は、こうした出力増加に伴う熱的・機械的負荷が燃料集合体および炉の許容範囲(各種制限値)に収まることを予め解析により確認するとしている。この解析は重要であるので、その結果を開示してほしい。また定格出力に上昇する過程、および定格運転中に、各集合体の出力をプロセス計算機により十分慎重に確認していくことも重要である。
東京電力の回答
出力抑制のために挿入した5本の制御棒は全挿入のまま操作しないものとし、炉心内の反応度調整のため他の制御棒の挿入位置を調整した制御棒パターンを入力条件として、運転サイクル末期までの解析を実施しております。解析結果につきましては、運転サイクル末期までの全期間において最も厳しい結果として、報告書添付11-1に示しておりますが、下表に示すとおり、保安規定に定める運転上の制限値を満足しております。これらの値は通常の運転経験と比べて特に厳しい値ではありません。
また、定格出力に上昇する過程、および定格運転中におきましては、最大線出力密度及び最小限界出力比をプロセス計算機により毎時間確認してまいります。
東電は、漏えい燃料が発生する前に行ったプレス発表では、営業運転を今後6ヶ月、来年1月まで継続して、定期検査に入る予定としている。また今回東電は定格出力運転復帰のために以下の対策を条件としている。
(1) 高感度オフガスモニタおよび漏えい燃料に関するパラメータの監視強化。
(2) 制御棒パターンの安全性の確認。
(3) 炉水中のヨウ素濃度の測定の頻度を上げ、オフガス測定値が上昇した場合はさらに測定頻度を上げる。
(4) (3)の監視においてパラメータが前日の2倍程度に上昇した場合や燃料破損の度合いの拡大が疑われる場合はプラント停止の必要性を判断する。ヨウ素濃度が規定値を超えた場合は炉の運転を停止する。
(5) 定期検査時に漏えい燃料の詳細点検を実施する。
定格運転に復帰した場合、出力が抑制されているとはいえ漏えい燃料の破損の拡大防止が最重要であること、そのためには拡大の兆候を遅滞なくとらえることが必要である。特に高感度オフガスモニタは鋭敏であり、かつ半減期の異なるXe同位体組成を検出できることから、Xeの由来(燃料棒内部からか、被覆管表面からか、など)を推定できるので、破損状況の監視に有効である。こうした観点から、(1)(2)(3)の条件は妥当と言える。
一方、東電は地震の影響を否定しているが、しかし、仮に今回の漏えい燃料発生が地震の何らかの影響によるとしても、上述したように破損は小規模にとどまっており、(1)(3)の条件で破損拡大の兆候をとらえることが可能と考えられる。
(4)の「パラメータが前日の2倍程度に上昇した場合」という条件は、必ずしも技術的根拠が明らかではないが、「大きな変化が生じた場合は、炉停止を含めた対策を直ちに検討する」という意味で、とりあえず認められる。
漏えい燃料の出力を抑制して6ヶ月の定格運転を行うことは、やや長い期間のような気もするが、十分低出力状態では、二次破損(同一燃料棒の被覆管の最初の破損箇所以外の部分での破損)が仮に生じるとしてもそれまでにかなりの時間を要すると予想されるので、その間、(1)~(4)の条件で慎重に監視すれば、破損の拡大を見逃す危険性はないと考えられる。しかし万一、二次破損が生じた場合は、直ちに炉を停止することが必要である。
(5)の詳細点検は当然であるが、この場合も、「異物フレッティング原因説」を含むあらゆる予断を排して、慎重かつ徹底的な検査をし、結果を公表する必要がある。
東京電力の回答
次回定期検査において漏えいした燃料棒の詳細点検を行い、燃料棒の状況、漏えいの原因について詳細に確認してまいります。
鈴木(賢)委員(7月31日)
1.漏えい燃料特定の調査結果
出力抑制法により、燃料被覆管の破損箇所が特定された。検出放射性ガスがキセノン133であり、キセノン138の放出が検知されないことから、漏洩の度合いは小さく、損傷形態は微小であると判断できる。
2.漏えい燃料近傍の制御棒5本を全挿入した出力抑制対策
破損部位が特定されたことから、当該箇所の制御棒の全挿入により、排ガス放射線を通常に運転することができる。ただし、以下については重要なので再度確認を要する。
- 制御パターン変更による核反応の変化により、燃料棒をはじめとする炉への影響について安全性を確認すること(熱的制限値など規定範囲内であること)
- 高感度オフガスモニター、オフガス分析などの態勢・監視を厳格に継続し、異常時には逐次報告すること
東京電力の回答
制御棒パターン調整にあたっては、事前に解析により燃料棒の出力をはじめとして、原子炉の状態を評価し、原子炉が安全に運転できる見込みであることを確認するとともに、原子炉の状態を毎時確認してまいります。また、7号機の継続運転にあたっては、高感度オフガスモニタの監視、オフガスの分析をはじめとした、監視の強化を行い、原子炉の安全運転に努めてまいります。
3.定格出力上昇した漏えい燃料出力抑制効果の確認
これまでの燃料漏洩下での運転実績は、東京電力では9例ほどある。最長9.5ヶ月の例もあり、それらの実績では、炉水中のヨウ素レベルは10E-2Bq/g程度であり、今回も同様のレベルを示すものと思われる。この値は、制限値10E3Bq/gに対して十分に小さく安全は確保できるものと判断できる。
なお、定格出力運転にあたり、以下について確認すべきである。
- 次回の定期検査(来年1月?)の期日を明らかにすること(運転期間の明確化)
- 次回定期検査以降は、損傷した燃料棒を一切使用しないこと
- 破損原因を特定するための計画を作成すること(新たな知見を得る努力をすべき)
- 運転中の監視を態勢を強化し、ヨウ素濃度の上昇が見られ、制限値に達すると予測される場合は、炉を停止すること
東京電力の回答
7号機については、現在の計画では平成22年1月17日より原子炉を停止して定期検査を行う予定となっております。原子炉を停止後、漏えい燃料を特定するためシッピングを行い、漏えいが認められた燃料集合体については今後一切原子炉内で使用いたしません。漏えいが認められた燃料集合体については、しっかりと調査を行う計画です。今後具体的な計画について検討を進めてまいります。
また、今後の継続運転にあたっては、原子炉水中のよう素濃度の分析、高感度オフガスモニタの監視、オフガスの分析をはじめとした監視の強化を行い、原子炉水中のよう素濃度が制限に達するおそれがある場合には原子炉を停止し、漏えいが認められた燃料集合体の取り出しを行います。
今回の被覆管破損の原因が異物であるならば、フレッチングによる同様の損傷が、他の原子力設備も含め増加することも懸念される。経年化対策として、異物やフレッチングの検討を進めることも必要である。
東京電力の回答
当社では、これまで異物による燃料漏えいを低減するため原子炉内の清掃を行うとともに、原子炉に直接つながる配管において微小な異物の発生源となるワイヤブラシ等の使用を禁止するなど異物の混入防止対策を進めております。また燃料集合体に異物が混入しにくいフィルター付き燃料を順次採用しております。今後もこれら対策の徹底、改善を進め、燃料漏えいの防止に努めてまいります。
西川委員(7月31日)
但し、燃料被覆管の損傷度合いの拡大が疑われるようなデーターが出た場合には、速やかにプラント停止等の対応をとることとしてください。
また、定期検査で炉内に異物が混入したことが判明した場合には、その原因を調査し、再度そのような事態が起こらないようにする対策を示して下さい。
東京電力の回答
今後の継続運転にあたっては、原子炉水中のよう素濃度の分析、高感度オフガスモニタの監視、オフガスの分析をはじめとした監視の強化を行い、原子炉水中のよう素濃度が制限に達するおそれがある場合には原子炉を停止し、漏えいが認められた燃料集合体の取り出しを行います。
炉内で異物が混入したことが判明した場合には、その混入ルートなど原因を調査するとともに再発防止対策措置を講じてまいります。
なお、当社では、これまで異物による燃料漏えいを低減するため原子炉内の清掃を行うとともに、原子炉に直接つながる配管において微小な異物の発生源となるワイヤブラシ等の使用を禁止あるいは制限するなど異物の混入防止対策を進めております。また燃料集合体に異物が混入しにくいフィルター付き燃料を順次採用しております。今後もこれら対策の徹底、改善を進め、燃料漏えいの防止に努めてまいります。
角山委員(7月31日)
要因分析表に基づく調査結果から、原因は「異物等による影響」の可能性が高いとする結論は妥当と考えます。
しかし、やや上げ足とりの感はあるものの、「9.(6)(b)燃料集合体に対して地震後に実施した点検について(報告書5ページ)」の中に示されている点検の時点で、今回燃料漏えいを起こした燃料棒に原因になり得るピンホールが存在したとしても、それを発見できたかどうか疑問に思われます。
東京電力の回答
BWR導入初期においては、漏えい率が現在よりも高く、炉内に数万本ある燃料棒に偶発的な製造欠陥などによる漏えいを完全にゼロにすることは困難であるとの考えに立ち、BWRの設計・安全解析は、燃料の漏えいがある状態で運転していることを前提としています。
その前提に立ち、燃料の点検においては、設計不良等、特定の原因で多くの燃料棒に漏えいが発生することがないよう、燃料集合体の外観を確認し、設計不良等により、燃料棒の曲がり、膨れ等の異常が発生していないことを確認しています。今回の新潟県中越沖地震後の点検においても、地震の影響により、燃料棒に過大な力が加わり、燃料棒などに変形、割れ等の異常が発生していないことを確認する目的で、水中テレビカメラやファイバースコープ等による確認を行いました。
一方、現状では設計の改良と運転方法の改善等により燃料の漏えい率は大幅に小さくなっているものの、いまだに異物等を原因とする偶発的な燃料漏えいについては、完全に防止できるに至っておりません。このような偶発的な燃料漏えいにつながるような燃料被覆管の局所的な磨耗の有無について、炉内に装荷している数万本の燃料棒すべてに対し実施できる技術は現時点においてなく、将来的にも極めて困難なものと考えられます。
このように、異物等による偶発的な燃料の漏えいを、被覆管の貫通に至るまでに、事前に検査によってその予兆を発見することは極めて困難と考えます。従って、今後とも燃料漏えいに繋がるような金属製の異物が炉内に混入しないよう機器の点検作業方法や管理方法を改善するとともに、仮に炉内に異物が混入しても、それが燃料集合体内に侵入しないようなフィルタ付きの燃料への取替を進め、燃料漏えいの撲滅に努めて参る所存です。
なお、当社としては、今回の燃料漏えいの原因を異物等による偶発的な事象と考えているところではありますが、地震により燃料漏えいが生じる可能性の一つとして、地震の際に燃料棒とスペーサ等の燃料棒の周囲にある構造部材とが振動により摩擦を生じることも想定し得ます。しかしながら、以下に示す理由から、そのような事象は少なくとも系統的に多数の燃料棒で生じることは考えがたく、また、仮に発生したとしても軽微なものに留まると考えられ、今回と同様、漏えいを早期に検知し、出力抑制法により進展を抑制することで、原子炉の運転上の制限を遵守して、安全に運転を行うことができるものと考えます。
- 燃料棒の周囲の部材は燃料棒と面で接触するよう(鋭利な突起を持たないよう)設計されており、振動による摩擦によって、燃料漏えいにつながるような深い傷が燃料棒につく可能性は極めて低いと考えます。
- 新潟県中越沖地震後の点検において、2体の燃料集合体についてファイバースコープを用いてスペーサ部を確認しましたが、1000箇所以上に及ぶ燃料棒とスペーサの接触部分では、確認可能な範囲に地震によりついたと考えられるような傷は確認されていません。
なお、今回の事象に関して言えば、新潟県中越沖地震発生直後の原子炉冷却材中のよう素濃度の分析結果から、地震発生時には燃料棒に漏えいが生じておらず、また、原子炉の圧力、燃料棒の内圧が大きく変動する起動時においても燃料漏えいの徴候が見られなかったことから、地震の影響によって、今回の燃料漏えいにつながった深い傷が燃料棒に生じた可能性は極めて低いものと考えております。
この手法は過去に9件の実績があり、問題なく運転を継続してきたことから、対策は妥当と考えます。
(3) 今後定格出力に上昇して、漏えい燃料の出力を抑制した効果を確認するとした対応の妥当性
今回制御棒5本を全挿入したことによって、定格出力に上昇した場合に残りの燃料棒にどのような影響が及ぶかが危惧されますので、「11.(2)測定と監視(報告書7ページ)」を強化して、パラメータの指示値が上昇した場合には、速やかにプラントの停止を含む処置を行うよう要望します。
東京電力の回答
今回制御棒を5本全挿入し、当該領域以外の部分で定格熱出力を維持することとなりますが、炉心全体で広く受け持つため集合体個々の負担は小さいものとなり、この場合においても最大線出力密度や最小限界出力比の値は保安規定に定める運転上の制限値を満足するとともに、通常運転時における値と特に変わらないことを確認しております。
また、今後の継続運転にあたっては、原子炉水中のよう素濃度の分析、高感度オフガスモニタの監視、オフガスの分析をはじめとした監視の強化を行い、原子炉水中のよう素濃度が制限に達するおそれがある場合には原子炉を停止し、漏えいが認められた燃料集合体の取り出しを行います。
なお、全挿入した制御棒を除く他の制御棒の操作(制御棒パターン調整)を計画する際には、事前に解析により燃料棒の出力をはじめとして、原子炉の状態を評価し、原子炉が安全に運転できる見込みであることを確認していきます。
東京電力の回答
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