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【GAPの取組事例紹介】JA北魚沼
GAP実践に向けて共に歩み
農家の皆さんの安全意識を高めたい
JA北魚沼は、2012年に「穀物」でJGAP団体認証を取得。17農場・耕地面積172haは、当時、国内最大規模での認証となりました。
今回は、GAP認証取得を希望する農場のサポートを行うJA北魚沼 営農部営農指導課 GAP部会事務局の山内隆弥さんにお話を伺いました。
■JA北魚沼 営農部<外部リンク>
魚沼市井口新田645-13
“下準備”をすることでGAP認証のハードルを下げる
GAP認証に向けた取組を始めたきっかけは、GAPに精通した新潟県の普及指導員からの進言。JAが主体となってGAPに取り組む動きとしては県内でも早い動き出しでした。
「まずは参加農場と事務局の役割分担表を作成しました。GAP認証取得は一農場では金銭的負担も労力も大きく、規模の小さな農場ではなかなか取り組みづらいものです。そこでJAが事務局となり取りまとめや下準備をすることで、可能な限り生産者の皆さんの負担を軽減し、より多くの方にGAP認証を受けてもらえるようサポートしています」。
“GAPに取り組む”とは、農場をGAPの管理点と適合基準が満たされている状態に整えること。管理や状態の維持ももちろん大変ですが、それ以上に大変なのが、具体的に何を行うかを決める作業です。
JA北魚沼では、農場用マニュアルとオリジナル看板の配布、全体研修、現地視察、内部監査などを段階的に行い、生産者と共に考え悩みながら二人三脚で認証取得に取り組んでいます。
初年度は20回の研修会を行い認証検査に臨みました。
制作したオリジナル看板は20種。
研修で配布する他、ホームページから各自でダウンロードして使用することもできます。
「見える化」によって双方にメリットが生まれた
これまでに計30の農場がGAP認証取得を受け、参加している農家の皆さんの意識が少しずつ変わってきたと言います。
「作業の“見える化”によって、販路拡大や資材費の削減、新規雇用者の働きやすさ向上などさまざまな利点があったと感想をいただいています。また、定期的な面談や作業記録の確認を通して生産者の皆さまと交流する機会も増えました」。
年間の栽培計画を共有しているおかげで、具体的な作付相談などの提案活動が出来るようになり、JAと生産者との信頼関係の強化にもつながっています。
一方、記録を残すという作業に慣れていない生産者の中には、負担に対して直接的なメリットを感じられず更新審査を諦める方もいます。JA北魚沼では、GAP認証にかかる経費の約半分の負担、奨励金による助成など金銭的負担の軽減措置も行なっています。もちろん、GAPは利益を出すために行なうものではないので、「安全な農産物の供給、農作業の安全性向上を目的に取り組むものとする」という基本理念が書かれた看板を常に作業場に掲げながら、GAPの実践に努めています。
また、GAP認証農場から出荷される米には「GAP認証シール」を貼付し、認知向上にも力を入れています。まだまだ流通業界や消費者間では認知が低いのが現状。今後は、付加価値を付けた販売につなげられるような取組をしていく方針です。
現地研修で気付いた危険箇所をその場で改善する様子。
「GAP認証シール」は、GAP認証農場から出荷され、なおかつJA北魚沼が定める出荷数の条件をクリアした米だけに貼付されます。
農家の後継者問題にも貢献 “記憶”を“記録”にするために
JA北魚沼に出荷をしている生産者の中には、後継者問題を抱えている方も少なくはありません。GAPの取組は、これまでの“記憶”を頼りにしていた農業から“記録”とともに取り組む農業に転換することであり、経験値の引き継ぎが簡単に行えるようになる効果も期待できます。
「まずは、生産者の皆さんの怪我や危険に対する意識が高まって、事故が減ることが第一です。2018年度は16農場が団体認証を取得しましたが、昨年度の出荷量を考えると面積比では管内の6.7%、人数比では全体の1%にも満たない数字。GAPは特定の人だけではなく、全員が取り組むべきものだという認識が浸透するよう頑張っていきたいです」
来年は新たに1農場が認証取得に挑戦予定。来年度の新規取得・更新審査に向けたJA北魚沼の“下準備“は、すでに始まっています。
初年度の団体認証取得農場の皆さん
取材日 2019年1月21日