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【農業技術・経営情報】病害虫:新之助の病害虫防除
平成29年度から新之助の一般栽培が開始されました。品種の育成過程や現地試験、先行栽培の事例などから明らかになった注意すべき病害虫を中心に、新之助における病害虫防除について紹介します。
1 いもち病
新之助の葉いもち、穂いもち発生程度は、県内栽培品種の中で「弱い」分類のわたぼうしとほぼ同程度です(図1)。いもち病が発生しやすいため、葉いもち及び穂いもちの防除は必ず行う必要があります。
葉いもちの防除は、育苗箱施用粒剤や側条施用又は水面施用粒剤により予防的に行います。また、予防防除を行っても葉いもちを十分に抑えられなかった場合は、追加防除を実施します。
穂いもちの防除は、適期に必ず実施します。粒剤で防除する場合は薬剤毎の散布適期に、粉・液剤で防除する場合は、1回散布では出穂期、2回散布では出穂期の直前と穂ぞろい期に散布します。特に、上位葉に病斑が容易に見つけられるなど、葉いもちの発生が多い場合には2回の防除を実施します。
また、いもち病の発生を助長するので過剰な施肥は避け、栽培指針に従った適切な施肥量としてください。
図1 同一施肥条件におけるいもち病発病度(現地試験 平成28年)
注1)施肥:基肥はN4kg/10aを施用。穂肥はN1.5kg/10aを各品種の適期に計2回施用。
注2)いもち病防除:両品種ともオリゼメート粒剤(3kg/10a)を6月1日に水面施用。
注3)調査日:葉いもちは7月26日。穂いもちは、新之助9月6日、わたぼうし8月18日。
注4)出穂期:新之助8月8日、わたぼうし7月21日。
2 紋枯病
新之助は紋枯病が発生しやすい短稈・多げつの草型で、紋枯病の発生しやすさは発生しやすい「こしいぶき」と同程度です(図2)。 紋枯病の被害を受けやすいので、ほ場をよく観察し、発生を認めた場合は遅れないよう防除してください。紋枯病は前年発病した株で作られた伝染源がほ場で越冬します。このため、前年の多発ほ場では当年の発病が多くなる可能性が高いので、前年に紋枯病が多発したほ場では薬剤防除を行います。
図2 紋枯病の発病推移(作研 接種試験 平成28年)
注)同一ほ場に新之助とこしいぶきを作付けし、7月4日に紋枯病菌を接種し発病株率を調査した。
プロットの数値は、発病株率(%)を示す。
出穂期:こしいぶき7月25日、新之助8月8日。
3 斑点米カメムシ類
斑点米カメムシ類対策の基本技術である(1)畦畔等の雑草管理、(2)水田内の雑草防除(特にカメムシの餌や産卵場所となるノビエ、ホタルイ)、(3)本田の殺虫剤散布を確実に行います。殺虫剤散布は、アカスジカスミカメを主な防除対象として行います。
現在、早生品種とコシヒカリの防除適期に合わせて実施されている斑点米カメムシ類の共同防除は、共同防除地区内の新之助に対しても十分な効果が期待できます(表)。このため、共同防除によりカメムシ防除が実施されている地区では、基本的に追加防除(共同防除とは別に行う新之助の単独防除)は不要です。
ただし、下記のいずれかの場合には追加防除を実施してください。
- 共同防除の実施日から「新之助」の出穂期までの日数が10日を超える場合。
- 新之助ほ場の付近でカメムシの多発生地がある場合。
- ほ場でノビエやホタルイの発生が多く、すくい取りでカメムシが確認された場合。
年次 | 地点数 | 品種 | 斑点米率(%) | |
---|---|---|---|---|
平均 | 最大 | |||
平26 | 2 | 新之助 | 0.005 | 0.009 |
コシヒカリ | 0 | |||
平27 | 4 | 新之助 | 0.009 | 0.027 |
コシヒカリ | 0.004 | 0.006 | ||
平28 | 5 | 新之助 | 0.001 | 0.005 |
コシヒカリ | 0 |
注)1等米における混入限界は0.1%
4 その他の病害虫
(1)稲こうじ病
発病のしやすさはコシヒカリと同程度です。例年、コシヒカリで稲こうじ病の発生が見られるほ場(常発地)では薬剤による予防防除を行います。
(2)墨黒穂病
発病のしやすさはコシヒカリと同程度です。コシヒカリで墨黒穂病による規格外が発生するような多発生ほ場では薬剤による防除が必要です。
(3)ニカメイチュウ、イネツトムシ、コブノメイガ
発生しやすいので、発生状況を確認して必要な防除を行ってください。
以上のように、品種の育成過程や現地試験、先行栽培の事例から新之助で注意すべき病害虫が明らかとなってきました。しかし、新之助で実際にどのような病害虫が発生し問題となるかは、大面積で栽培してみて初めてわかったり、地域によって問題となる病害虫が異なる可能性もあります。
平成29年度は特に一般栽培の開始年であるため病害虫の発生経過をよく観察し、どの病害虫が問題となるかを細心の注意を払い見極める必要があります。また、作付け初年目で病害虫の発生が問題とならなくても、たまたまその年は病害虫の発生しにくい気象条件だったのかもしれませんので、少なくとも数年間は注意深く観察を続け、それぞれの地域に適した防除体系を組み立ててください。
※この資料は、平成29年5月17日現在の農薬登録情報を基に作成しています。
農薬の使用に際しては、必ず最新の登録内容を確認して使用してください。
【経営普及課 農業革新支援担当(病害虫) 石川 浩司】