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【農業技術・経営情報】大豆:大豆適期収穫による品質向上-亀甲じわ粒の発生軽減-

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0345747 更新日:2021年2月1日更新

1 平成25年産大豆品質低下要因

 近年、新潟県産大豆の品質はしわ粒により低迷しています。とくに昨年(平成25年産)は、しわ粒の多発生により品質が著しく低下し、特定加工用大豆が出荷量の8割を占めました。この要因として、梅雨期間が長く8月下旬から9月上旬にかけても降水量が多く土壌の過湿な状態が続いたことや開花期以降日照時間が少ないことなどから生育後半の栄養凋落が大きくなりちりめんじわ粒(子実のへその反対側が細かく波状になる)の発生が助長されました。さらに、10月上旬の高温乾燥や成熟期の早まりに対し、収穫開始の遅れや莢先熟などの影響で収穫が後手に回ったことから、亀甲しわ粒(種皮が亀甲状に隆起する)の発生も助長されたと考えられます。

 2 しわ粒発生軽減のために

 しわ粒による品質低下を軽減するためには、しわ粒の種類毎に対策を講じる必要があります。ちりめんじわ粒発生防止のためには土壌水分の適正管理(排水対策、干ばつ対策)、地力の維持・増進など基本技術を励行し、目標生育量を確保するとともに生育後半の栄養凋落を抑えて、莢数、粒大を確保することが重要です。一方、亀甲しわ粒の発生防止のためには適期収穫と収穫後の適正な乾燥が重要です。

 これからみのりの秋を迎える中で、適期収穫の実践によりどれだけ亀甲しわ粒を減らせるかがポイントです。適期収穫は、裂莢による自然脱粒や収穫ロスを軽減することもできます。以下の「3立毛中における亀甲じわの発生機構」、「4適期収穫のための収穫開始の目安」により、今一度、万全の準備・心構えで適期収穫を行ってください。

3 立毛中における亀甲じわ粒の発生機構
  (ダイズの亀甲じわ粒の発生成熟後の子実水分の影響:2008佐藤らより)

 亀甲じわの発生要因は以下のとおりです。

 成熟期頃に晴天が続いた場合や刈り遅れなどにより、子実水分が13%以下、とくに11%まで乾燥した粒が、その後、夜露や降雨により子実が吸湿する際に、子葉よりも種皮の吸湿直後の水分吸収速度が速いため、子葉から種皮が剥離します(図1)。

図1種皮が剥離した状態(作物研)の写真
図1 種皮が剥離した状態(作物研)

 さらに、種皮が吸湿を続けることにより種皮が伸長し、伸長した種皮が波打ち亀甲じわになると考えられます。なお、晴天日の場合、日中の湿度の低下とともに子実水分が低下する一方、夜間の湿度は90~100%と高くなるため、晴天日でも日中と夜間で子実の乾燥と吸湿が繰り返されていると考えられます。

 また、一度、亀甲じわ粒になった粒は、再度乾燥させるとしわ粒が消える粒と消えない粒があります。このことから、ほ場では日中の乾燥により一旦しわが消える粒もありますが、夜露などにより再度亀甲じわが発生し、その後も日中の乾燥と夜の吸湿との繰り返しや晴天日と雨天との繰り返しにより、亀甲じわ粒の発生と消滅が繰り返され、徐々に種皮の弾力性が失われ、亀甲じわへと固定されると考えられています(図2)。

 したがって、立毛中の亀甲じわ粒発生防止のためには成熟期以降、子実の乾燥・吸湿の繰り返しをできるだけ避けることが重要で、適期収穫の励行が求められます。

図2乾湿の繰り返しと亀甲じわの発生(作物研)の画像
図2乾湿の繰り返しと亀甲じわの発生(作物研)

注)9-16時室内:気温20℃、湿度50%、16-9時定温器内:温度12.5℃、湿度95%、
子実水分11%の種皮が剥離した粒を使用

4 適期収穫のための収穫開始の目安

 倒伏や湿害などの影響により、ほ場間及びほ場内で成熟の早晩は大きくなりますが、黄葉期から概ね15日前後に成熟期となります(参考1)。黄葉期の観察から、ほ場間の成熟の早晩を把握し、適期収穫のための作業計画を立てて下さい。収穫開始が遅れるほど亀甲じわ粒発生のリスクが高まり、全体の品質低下が懸念されます。収穫開始は、成熟期以降、子実水分、茎水分を確認して、適正値(子実水分60%、茎水分22%、軸流式コンバインの場合)以下になったら直ちに行って下さい(参考2)

参考1 黄葉期から収穫期までの日数目安
参考1黄葉期から収穫期までの日数目安の画像

参考2 外観などからの茎水分、子実水分の目安
参考2外観などからの茎水分、子実水分の目安の表

 莢先熟による収穫の遅れを防止 大豆が成熟期を迎え子実水分が低下して莢は収穫に適する褐色になっているのに、茎葉部は青々して水分含量が高い「莢先熟」の状態になると、コンバイン収穫では汚粒発生の恐れが高いため、適期収穫ができずに亀甲じわ粒の発生が助長されるばかりでなく収穫そのものが困難になります。

 「莢先熟」の大豆は、シンク(莢などのソース受容器官)に比べて、ソース(貯蔵タンパク質など)が過剰な状態になっています。「莢先熟」を防止するためには適正な栽培管理により過剰生育の防止と各種ストレスの軽減を図ることが重要です。このため、干害や湿害、虫害などによる莢数の減少、着莢のバラツキに注意してください。

【経営普及課農業革新支援担当 岩津 雅和】

 

 

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