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【農業技術・経営情報】野菜:いちご栽培における効果的な二酸化炭素施用技術
いちご「越後姫」高設栽培において灯油燃焼式の二酸化炭素発生機による二酸化炭素施用が行われています。ここでは、現地栽培ほ場における二酸化炭素濃度の測定結果と、園芸研究センターの研究成績を踏まえ、効果的な二酸化炭素施用技術について紹介します。
1 栽培ハウスでの施用濃度の推移(現地事例より)
現地栽培ほ場において、二酸化炭素濃度の推移について調査しました。
- 二酸化炭素の施用(午前3時~8時)により二酸化炭素濃度は約2000ppm まで上昇しました。快晴の日(4月1日)は、日の出とともに濃度が急に低下し、換気により外気の濃度とほぼ同じ400ppm 程度に低下します。日射の無い日(3月31日)では、濃度は徐々に低下し昼前後までに400ppm 程度に低下します(図1)。
- 二酸化炭素を施用しないと、夜間の呼吸により濃度は700ppm 程度に上昇しますが、日の出と共に400ppm 程度まで低下します(図1)。
- 土耕栽培では、常に土中から二酸化炭素が放出されるため夜間の濃度は1000ppm以上になりますが、日の出とともに低下し、換気により400ppm 程度に低下します(図1)。
図1 二酸化炭素濃度の推移
養液炭酸有:AM3時00分 ~ 8時00分 に二酸化炭素施用・ダイニチ製ファンヒータータイプ、
養液炭酸無:二酸化炭素無施用、土耕:土耕栽培、平成25年3月から4月に測定
五泉市、7.2 × 54 mの同一規格パイプハウス3棟、促成作型、二重ハンモック式の
高設栽培と土耕栽培、群落内の二酸化炭素濃度を測定
2 園芸研究センターでの研究
- 植物群落内の二酸化炭素濃度は、対照区では日中300ppm 程度まで低下しましたが、二酸化炭素ガス施用区では日中700ppm 程度に維持されます(図2)。
- 果実の収量は、二酸化炭素ガス施用区で大玉果収量及び商品果収量が多くなる傾向となりました(表1)。
- 果実の品質は、二酸化炭素ガス施用区で糖度が高い傾向が示されましたが、有意差は認められませんでした(表2)。
図2 二酸化炭素濃度の日変化
表1 二酸化炭素ガス施用が収量に及ぼす影響(個/株、g/株、g/個)
表2 二酸化炭素ガス施用が品質に及ぼす影響
二酸化炭素ガス施用は、栽培ベット真上から二酸化炭素ガスを局所施用
(8時~16時2分間隔)処理は平成24年10月から25年5月
3 二酸化炭素施用の注意点
- 目標とする二酸化炭素濃度は、植物体近傍で700 ~ 800ppm とします。灯油燃焼式の二酸化炭素発生機が導入されているハウスでは、ハウス内に太陽光が入線する時間までに二酸化炭素濃度が目標とする濃度に達するよう機器の稼働開始時間を設定してください。
- 太陽光の入線とともに二酸化炭素濃度が低下するので、濃度を確認しながら施用時間を決めます。濃度が外気並みの400ppm 程度に低下するようであれば施用時間を継続してください。場合により午後の施用も検討しますが、午後3時以降は施用しません。
- ハウスを換気すると外気の流入により二酸化炭素濃度は外気並みの400ppm 程度に低下し施用効果は極少なくなります。
- 土耕栽培では土壌中から二酸化炭素が発生するので、あえて施用する必要はありません。
- ハウス内の二酸化炭素濃度を測定する機器を設置し、濃度の推移から対応してください。
- 循環扇や暖房機の送風を活用して、ハウス内濃度の均一化を図ってください。
【経営普及課 農業革新支援担当 齋藤 勲】