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盲導犬訓練士に憧れる
ー 子供の頃、将来の夢は何でしたか?
小学校1年生の時に初めて犬を飼ったことがきっかけで、犬が好きになりました。小学校6年生の時、下校時に捨て犬を保護したことで犬が捨てられてるという事実を知り、それから犬に関わる職に就きたいと思い始めました。その頃に「盲導犬クイールの一生」という映画を観て、盲導犬訓練士に憧れました。
警察犬訓練所で修行
ー なぜ警察犬訓練所に入所しようと思ったのですか?
動物専門学校在籍時に、仙台第一警察犬訓練所の方が講師で訓練の授業を受ける機会があり、その時の講師の訓練を見て、犬の顔の表情や動きに感銘を受けました。そして、その講師に憧れて警察犬訓練所に入所しました。その後ジャパンケネルクラブ公認訓練士と日本警察犬協会公認三等訓練士の資格を取得しました。講師は私の訓練士としての師匠です。
佐渡市にUターン
ー 地元で働こうと思った動機を教えてください
2011年3月11日に東日本大震災が発生し訓練所も被災したため、落ち着いてからの退所となり6月に佐渡にUターンしてきました。当初は新潟市でドッグスクールの開業準備を考えていました。佐渡市には獣医師はいますが、犬のしつけや病気予防の仕事をする人が少ないので、佐渡市でドッグスクールを開業することに決めました。
犬の成長を見届けることができる喜び
ー 仕事のやりがいは何ですか?
家庭犬のしつけをすることが主な仕事です。犬の飼い主さんが犬のしつけを正しく理解し、一生懸命に犬に接すると犬は反応するようになります。犬が成長していくことはとても嬉しいし、やりがいです。
ー 仕事の面白い点と難しい点は何ですか?
犬がどう反応するか考えながら訓練しています。伏せができなかった犬が伏せができるようになったり、気持ちが通じた瞬間が楽しいです。そして、犬とコミュニケーションがとれなかった飼い主さんの悩みが解消されて、感謝されることが一番嬉しいです。その反面、しつけに預けたら犬が変わると思う飼い主さんが多いです。飼い主さんに飼い犬と信頼関係がしっかりとできることや犬だけが学習するのではなく、飼い主さん自身が変わらなければいけないということを理解してもらうことが大変で難しいです。
佐渡市初の嘱託警察犬までのストーリー
ー お客様との忘れられないエピソードはありますか?
新潟県内各地に嘱託警察犬はいますが、それまで佐渡市にはいませんでした。佐渡市初の嘱託警察犬は、オスのシェパード『アスティ』で、宿根木はんぎりの看板犬です。『アスティ』は意欲的な性格で訓練がしやすく警察犬に向いていると思い、私が飼い主の金子さんに警察犬を薦めました。飼い主の金子さんは家庭犬として飼い続けるつもりでしたが、警察犬になる訓練を承諾してくれました。『アスティ』は、飼い主の金子さんが自分で訓練を覚えて、警察犬の競技会に出場しました。金子さんは、競技会に出場できる位に犬の扱いができるようになり、とても記憶に残るエピソードです。
犬と飼い主さんの関係性が改善されることが嬉しい
ー 仕事で一番嬉しかったこと、一番大変だったことは何ですか?
飼い犬に嚙みつかれ触れなかった飼い主がいます。犬とコミュニケーションをとれなかった飼い主さんの悩みが解消されて、犬と飼い主さんお互いが癒やしを得られる関係性になることが一番嬉しいです。犬の訓練競技会ではお客さんの犬を預かり出場します。成績を競い合う訓練競技会はお客さんの要望もあって、プレッシャーになるので一番大変です。
ー 大変だったことをどう乗り越えましたか?
新潟、山形、福島、宮城県で開催される犬の訓練競技会に出場しています。競技会はプレッシャーに押しつぶされそうになることもありますが、いつも通りの訓練だと思うことと、相棒の犬を信じることを心掛けています。
犬の訓練競技会を開きたい
ー 今後チャレンジしたいことはありますか?
今後は佐渡市で犬の訓練競技会を開くことにチャレンジしたいです。飼い主さんと飼い犬を表彰する大会を年1回主催し、その大会に向けて飼い主さんのみんなが犬のトレーニングをするようになれば良いと思います。
犬猫保護団体の設立
ー 犬猫保護活動を始めた動機は?
猫を一時保護をしたことがきっかけで、その猫を飼うようになりました。地域の野良猫の実情を知り、改善しようと2018年11月に『アニマルレスキューdear PAWS(ディアパウズ)』という犬猫保護団体を立ち上げ、保護活動を始めました。2019年5月から佐渡保健所と猫の譲渡会を開催したり、飼い主さんが不明の猫の避妊去勢手術や適正飼育の普及啓発の活動をしています。今後はペット防災について、イベントやチャリティーマルシェを開催することで、佐渡市のみなさんに人と動物の共生について考えるきっかけにしてもらいたいです。
子供たちにドッグトレーナーの仕事を知って欲しい
ー 学校訪問での講演について教えてください
佐渡市の学校を訪問して出前授業をしています。出前授業は「人と動物の共生」「ドッグトレーナーのお仕事」「犬猫の適正飼育と接し方」「野良猫のお話」などが主な講演内容です。「ドッグトレーナーのお仕事」では犬の代弁者として、子供たちに犬と接する上で大切なことや命の尊さを伝えています。子供たちが将来ドッグトレーナーを目指してくれたら嬉しいです。
みんなが暮らしやすい島にしたい
ー 山本さんの夢は何ですか?
ペットの犬猫、飼い主さん、地域の住民すべてが心地よい環境で暮らすために、犬猫の飼い主に適正飼育を啓発することで、飼い主の理解が向上すればペットは守られます。そして、飼い主の適正飼育が広がり、みんなが暮らしやすい島になれば良いと思います。人と犬猫が共生する社会を目指して、今後も獣医師さんやトリマーさんと共に、犬の訓練のプロとして地域に貢献できるよう頑張りたいです。
子供の頃から運動が好き
ー 休日はどう過ごされてますか?
プライベートは愛犬と過ごしたり、1年前は友人や家族と旅行していました。非日常の雰囲気を楽しめて、美肌にもなる温泉が好きです。温泉でのんびりと過ごすのは、心身ともにリラックスできて良いです。趣味の陶芸やバトミントンは知人の紹介で始めました。陶芸は一からものを作るのは大変ですがとても面白いですし、教室のみなさんとおしゃべりするのも楽しいです。バトミントンは中学生の時にやっていて、知人のチームに入ったことがきっかけで佐渡のリーグにも参加しています。子供の頃から運動は好きでした。体力維持にもなりますし、やはり気分がスッキリします。
好きなことが仕事でとても楽しい
ー 熱中していることは何かありますか?
持続可能な開発目標(SDGs)について学び、人と動物の共生について興味をもって考える『A-SDGs実行委員会』主催のイベントに、『アニマルレスキューdear PAWS(ディアパウズ)』も参加しています。『A-SDGs』のAはAnimal(アニマル)の頭文字で、「人にも動物にも持続可能な社会にしたい」という思いが込められています。今後の佐渡の動物愛護やペット事情について、みんなで話し合うことで興味をもって欲しいと思います。また、犬の栄養学と動物福祉の勉強もしています。ドッグトレーナーの仕事は常に勉強することが必要です。「ドッグトレーナーと犬猫保護団体の活動は、忙しくて大変でしょう?」と聞かれることはありますが、動物が大好きで興味があることなので、続けられます。今、好きなことが仕事でとても楽しいです。
人もペットも自由に暮らせる
ー ドッグトレーナーから見た佐渡市の生活はどうですか?
佐渡市は広い耕地に民家が点在している地域があるので、都会に比べて犬同士で接する機会は少ないと思います。犬同士の問題が起こらないため、飼い主さんの適正飼育への意識は低いように感じています。佐渡市は大自然の中で人も犬も自由に暮らすことができます。犬と暮らすには最高の環境だと思います。
佐渡市では新しいことは受け入れられないと以前は感じていました。今では生まれ育った地元は安心しますし、家族の支えもあるので、地元で独立したことはとても良かったと思います。そして、佐渡市は時間の流れが緩やかなので、とても心地よい所です。近年は島外から来られた人達が新しくお店を開いたりと地域を盛り上げてくれているので、住民が島の魅力や良さを再認識出来ていると思います。
「時間」は暮らす場所によって速さも使い方も変わってきます。ぜひ、「佐渡時間」を体感してみてください。
山本絵里子さん
1986年佐渡市生まれ。
宮城県仙台市にある日本動物専門学院で家庭犬の訓練を学ぶ。
仙台第一警察犬訓練所に入所し4年間家庭犬、警察犬の訓練を修行。
2011年佐渡市でヤマモトドッグスクールを開業。
2018年犬猫保護団体アニマルレスキューdear Paws(ディアパウズ)を設立。
愛犬 甲斐犬ミックス「賢」 トイプードル「あい」
愛猫 ハチワレ「オレオ」
【資格】 ジャパンケネルクラブ公認訓練士 《練士》
日本警察犬協会公認三等訓練士
ヤマモトドッグスクールHPへのリンク <外部リンク>
【インタビュアー】 企画振興部 中川茂夫