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数年前までは「特定母樹とは何ぞや」と思われた方もいたかもしれませんが、今は少しずつ浸透してきているのではないでしょうか。今回改めて、新潟県の特定母樹の導入と品種選抜等について簡単に紹介します。
特定母樹とは、成長等の特性が特に優れ、かつ花粉症対策に資する苗木を普及するために指定される樹木です。現在全国的に増殖・促進され、採種園の主力であった精英樹からの移行が図られています。新潟県においても、林木育種計画に基づきスギ特定母樹採種園の造成を行っています(林業にいがた令和四年三月号「県からのお知らせ」を参照)。
本県の採種園では、新潟県及び近隣県の国有林で選抜された品種や、雪害抵抗性(雪圧による根元曲がりに対して抵抗性を持つ)家系など成長が良いだけでなく多雪地域に適した品種も導入しています。これらは主に国の研究機関で選抜し指定されたものですが、さらに少しでも多く県内品種を導入すべく、新潟県森林研究所でも選抜を試みています。
調査方法は、県内の次代検定林(※)から特定母樹の申請基準を満たす個体を候補木として選抜する方法をとっており、調査項目には、(1)成長量(2)剛性(3)通直性(4)雄花着花特性があります。(1)成長量に関しては、次代検定林の定年調査データから特定母樹の候補となる個体をある程度机上で選抜できるため、残りの項目を現地で調査していくことになります。(2)剛性は、立木のまま調査する場合、適切な器具を用いて応力波伝播速度の計測を行い(写真1)、(3)雄花着花特性では、目視による着生量の観察(図1)を数年続ける必要があります。
これら複数の調査を経て、特定母樹の基準に見合った個体を品種登録申請します。調査は現在、国有林で既に特定母樹申請の実績がある森林総合研究所林木育種センター東北育種場と共同で実施しているところです。
次代検定林の定年調査データは、多くの林業関係者により数十年に渡って蓄積されたものです。これらを有効活用して今後も選抜に取り組んで参りたいと思います。
※昭和三十年前後に全国で開始された精英樹選抜事業で選抜された個体(精英樹)、及び次世代の成長把握のために県内各地に設定された試験地
森林・林業技術課 伊藤由紀子