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本県では森林資源の循環利用のため、人工林の主伐・再造林を推進しています。しかし、育林経費のうち造林初期費用は約7割を占め、その約半分を下刈り経費が占めている現状であり、推進上の支障となっています。下刈りは一般的に植栽木が雑草木より大きくなるまで、多くの場合、植栽後、5、6年に渡り実施するため、下刈りの回数を削減できれば低コスト化につながります。
そこで、翌年の下刈り実施を検討する際、植栽木の樹高成長を推定できれば、実施判断の目安となり得ると考え、スギ植栽木の林齢4年の成長期終了時点(降雪前)の樹高推定式(以下、式)を林齢3年の成長期終了時点の樹高を基に作成しました。
式は、県内4市町村(村上市・三条市・湯沢町・関川村)9地点に植栽された1,697個体(コンテナ苗:897個体、裸苗:800個体)のスギ植栽木のうち、植栽から林齢四年の成長期終了時点(以下、林齢4年)までに獣害・雪害・誤伐などの被害がなかった1,132個体(以下、無被害個体)のデータを使用して作成しました。
式および推定するための簡易的な図を図1、2に示します。式のxに林齢3年の成長期終了時点(以下、林齢3年)の樹高を代入すると、林齢四年の樹高を推定できます。式の「±35cm」は新しく得られるデータの約95%が含まれると考えられる範囲の上限と下限であり、例えば、35cm足した値には、ほとんどの場合達しないと考えられます。
式に代入せずとも、林齢4年の樹高を図2から推定可能です。まず、横軸から垂線を伸ばします。そして、垂線と式の実線との交点から、縦軸方向に線を伸ばします。最後に、その線と縦軸との交点が推定値となります。
なお、式および図2の使用にあたっては、全ての植栽試験地で、林齢4年にあたる年の夏季に下刈りしたため、下刈りしない場合には推定がうまくいかない可能性があることを念頭に置いてください。
図1 推定された回帰線及びそれを基に作成した樹高推定式
図2 樹高推定式の使用例
スギ植栽木の成長は、雑草木との競争に加えて、植栽時の樹高、植栽場所の違いなど様々な要因により決定されると考えられます。今回の樹高推定式でおおよその樹高は推定可能であると考えますが、より推定精度を高めるためには、スギの成長メカニズムを詳細に調査・分析することが重要だと考えます。
最後になりますが、本研究は、多くの林業事業体、森林所有者等の協力のおかげで行うことができました。この場を借りて感謝申し上げます。
きのこ・特産課 清水達哉