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技術委員会電子会議室(9月14日付け議題(3)「燃料棒からの放射性物質の漏えい」に関する委員意見)
代谷座長(9月17日)
報告の内容から、漏えい燃料の抑制は適切に行われており、現在の状態を維持して運転を継続することについて安全上の問題はないと判断する。
また、新潟県中越沖地震後初めて起動したプラントであることを勘案し、通常の定期検査時期を待たずに9月下旬を目途に原子炉を停止して、シッピング検査を実施し、漏えい燃料を特定して取替えを行うとともに、すべての異物フィルタなしの燃料体を異物フィルタ付き燃料体に交換すると決断した事業者の姿勢を評価したい。
さらに、予断を持たずに漏えい原因を特定するための点検を行い、漏えい燃料棒を特定して詳細点検を行って、その結果に応じて今後の対応を検討するとしているのは妥当と考える。
代谷座長(9月16日)
質問1
添付資料-24に気体廃棄物処理系フィルタ出口流量が図示されていますが、この流量が8/21頃から徐々に増加しているように見受けられます。この原因をお教え下さい。(これに伴って、気体廃棄物処理系除湿冷却器出口放射線モニタ、活性炭式希ガスホールドアップ塔出口放射線モニタの指示値が徐々に低下しているようにも見受けられます。排気塔放射線モニタの指示値には変化がないようですが。)
東京電力の回答
気体廃棄物処理系フィルタ出口流量は、復水器内から気体(非凝縮性ガス)を抽出し気体廃棄物処理系に入っている気体の流量であり、復水器の真空度等に影響を受けるものです。
7号機は8月中旬頃から海水温度が上昇傾向で、復水器真空度が徐々に悪くなる傾向にあります。この影響で気体廃棄物処理系フィルタ出口流量が徐々に増加しているものと考えております。
よって、この変化は通常の運転範囲内であり、この程度の流量上昇においては放射線モニタへの影響は小さく、十分監視ができているものと考えております。
現在までの監視からは、7号機の燃料からの放射性物質の漏えいは増加しておらず、安全上の問題はありません。
引き続き、関連データを十分監視してまいります。
質問2
添付資料-28に最大線出力密度の推移と最小限界出力比の推移の図がありますが、いずれの図においても実績値の9月初旬頃に段差が見られます。この原因をお教え下さい。(今後もこのような不審な挙動が図に表れる際には、少なくとも注記を付けておいていただきたいと思います。)
東京電力の回答
添付資料-28の最大線出力密度と最小限界出力比の9月初旬の段差は、9月4日に中性子検出器(LPRM:局所出力領域モニタ)の校正を行ったことによるものです。LPRMは炉内に52本×4個あり、月1回全校正を行ってその結果を炉心性能計算に反映させております。
なお、今後はこのように変化のある点については注記をつけるようにいたします。
鈴木(賢)委員(9月15日)
- 報告内容から、漏えい燃料の抑制が行われていると判断できる。
- 9月下旬に燃料交換を前倒ししたことについては、慎重な運転姿勢として評価できる。
- それまで(9月下旬まで)引き続き漏えい燃料の出力を抑制して運転を継続することについては、排気筒放射線モニタ、高感度オフガスモニタ及び原子炉水中のヨウ素131濃度を見ても安全が確保されている。
- 原子炉を停止した後に実施する詳細点検については、初期の検査として概ね妥当である。場合によっては、損傷箇所の特定と原因に応じた検査も必要である。
吉川委員(9月17日)
7号炉の定格運転後に生じた、燃料ピンの微細ホール発生に起因すると推定されている核分裂生成物の検出問題については、東京電力においては、破損ピンのある集合体近傍の制御棒を全挿入して、核分裂生成物の放出を抑制しつつ、ピン破損が拡大しないかをモニタ頻度を高めて、定格運転状態に戻す制御棒パタンの再構成方式で営業運転に移行との初期の方針を転換して、9月末までには運転を停止して、破損燃料の同定とその原因の解明に当たるとされました。
東京電力においては、当初方針で良しとする保安院や安全委員会の是認もありながら、大地震後の再起動への地元の不安という情勢も勘案しての運転停止の決定ということのようです。
地元の不安感への対処という面からの判断ですので、これについては1技術委員としては意見は差し控えますが、今後は停止に至るまでのモニタリングに万全を期されると共に、運転停止後の原因解明分析に努められ、その結果の公表を期待しています。
東京電力の回答
出力抑制法(以下、PSTという)を実施して以降、これまで運転・監視データを採取しながら運転を継続しておりますが、オフガス中の放射性希ガスの濃度は十分低く抑えられ、原子炉水中のよう素濃度の変動も現れておらず、漏えいの拡大が抑制された状態でプラントは安定して推移しています。
プラント停止後は、漏えい燃料を特定するため燃料集合体全数についてシッピング調査を行います。特定された漏えい燃料については、通常実施する水中カメラによる外観調査に加え、超音波調査により漏えい燃料棒の位置を特定した後、ファイバースコープを集合体内部に挿入して漏えい燃料棒の外観や異物の有無の確認等の詳細な点検を行い、予断を持たず漏えいの原因究明に努めていく所存です。
また、これら調査結果につきましてはまとまり次第ご報告させていただく予定です。
また、原因解明分析の調査を、このような破損燃料事象発生の監視方法、事象発生検知後の運転継続ないし停止の処置方法等についての安全基準の作成と国内全BWRへの普及に有効に反映活用されますように期待します。
例えば、燃料棒1、2本程度にピンホールがでてもその周辺の制御棒を全挿入し、他の制御棒は引き抜いて、全体としてはいびつな出力分布のままで定格運転していると、そこにさらに別の原因で異常が発生したとすれば、安全解析で事前検討された安全運転範囲を超える異常事象(事故)に発展する可能性もあるわけですし、初めは微小なピンホールでも、そこから冷却材の水が燃料棒内にじわじわと入っていって燃料棒内の伝熱を悪化させる、被覆材を内面から劣化させる等の現象で、燃料破損が拡大していくといった事態も想定されるかも知れないので、この際こういった懸念の可能性を分析検討されて、破損燃料の存在の許容運転限界を、(燃料破損の原因が分からなくてもスタックでの法定許容放射能放出限界以内の核分裂生成物放出ならOKといった)技術的に解明されていなくても周辺環境に影響がなければ良しとする基準よりは、AS LOW AS PRACTICALLY REASONABLE(合理的可能な限り低く)という観点からの、合理的な事業者の運転基準の設定を検討されておくことが、事業者の技術的能力への信頼感醸成につながるように思いました。
東京電力の回答
今回の事象では、高感度オフガスモニタを用いて早期に漏えいの発生を検知し、早期に出力抑制法による漏えい燃料の出力の抑制を行い、漏えい事象による放射能の放出を極めて小さく抑制することができたケースと考えております。
今後は、プラント停止後の原因調査と共に今回の事象について詳細な検討を行い、過去出力抑制法を実施して運転を継続した事例と比較評価することにより、出力抑制法の標準化を図ることにより、漏えい事象における放射能放出を極めて小さくする将来有用なプラントの運営管理手法を確立して、国内のBWR事業者全体で共有していく所存です。
<参考>
原子炉の運転にあたりましては、漏えい燃料の発生を想定して、漏えいが拡大しても環境に影響を与えないよう放射能放出量を制限・管理することで安全を確保するという考え方を採用しています。その考え方に基づいて、設置許可の安全解析の解析条件としてよう素131濃度を設定し、運転段階においても保安規定にて制限しています。一方、ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の考え方に基づき、放射性の気体・液体廃棄物に対して放出管理目標値を保安規定に定めより厳しく管理しております。また、放射性物質の測定値が連続的に上昇する等、漏えいの拡大が想定される場合には、よう素131濃度のみを基準にすることなくプラントを停止するなど適切な対応を講ずることとしております。
原子力安全・保安院の回答
- BWR各事業者では異物混入対策として、異物混入フィルタを設置した燃料集合体の導入や、燃料漏えいを初期の段階で検知できる高感度オフガスモニタの導入を図ってきています。
- 更に、東京電力は今後実施する漏えい燃料に対する詳細点検の結果から得られる知見とあわせて、BWR事業者協議会の場でガイドラインとして取りまとめる方針としています。
- 当院は、東京電力に対して、取得したデータに基づく評価と今後の対応について取りまとめを行い報告するよう求めているところであり、今後、これらの報告に対して厳格に評価を行う予定です。
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