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ダムに関する用語

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0048190 更新日:2019年3月29日更新

水文用語

  • 確率洪水(超過洪水)
    ××年に1回起こるとかいう想定の洪水のこと。正確には対象流域においてある発生(生起)確率を有する規模の洪水で、この確率はその洪水の規模を超える確率(年超過確率)で表現される。例えば、ある規模を越える洪水の発生する確率が50年に一度相当あれば、その洪水は50分の1の確率と呼ばれる。
  • 計画雨量
    基本高水流量や計画高水流量の検討にあたっては、雨量から流量へ変換する方法を用いている。計画雨量は、流量の算出根拠となった雨の量を表し、洪水防御計画の規模を表す数字のひとつとなっている。
  • 降雨強度
    短時間の降雨の強さを表すために単位時間当たりの降雨量で表したもの。一般には1時間あたりの降雨量(mm/hr)を単位として用いられますが、よく聞く「1時間雨量」は毎時0分から60分間の降雨強度平均値のこと。
  • ハイドログラフ
    任意の基準点における時刻(時間軸)と水位または流量との関係をグラフ化したものであり、水位ハイドログラフ及び流量ハイドログラフがある。水位や流量の時間的変化が視覚的に確認でき、洪水中の水位、流量の変動状況を把握することができる。

基本高水流量、計画高水流量、計画基準点

  • 高水(こうすい)
    「たかみず」ともいう。洪水時などの大きな流量のこと。
  • 低水(ていすい)
    洪水時以外の平常時の流量のこと。
  • 基本高水流量
    正確には基本高水のピーク流量のこと。基本高水とは、洪水防御計画の基本となる洪水流出の波形のことをいい、基本高水流量は計画基準点における基本高水のピークの値という。
  • 計画高水流量
    基本高水は、合理的に河道、ダム、遊水地などに配分される。この結果、各地点の高水流量が決定されるが、これを計画高水流量という。
  • 計画基準点
    既往の水理、水文データが十分得られて、水理、水文解析の拠点となり、しかも全般の計画に密接な関係のある地点を計画基準点として選定している。計画の基準となる水位標のある地点やダム等主要な洪水調節施設が設けられる地点が適している。
  • 流入量
    貯水池に流れ込んでくる河川水の量のこと。流入量を直接測定することは出来ないので、貯水位からダム貯水量とその変化量を求め、ゲート開度からダム放流量を計算し、流入量とその変化量を計算する。
  • 放流量
    発電やゲート等の操作によりダムから下流に放流する河川水の量のこと。
  • ダムの洪水量
    ダム毎に定められていて、ダム下流河川の未整備区間の状況(下流河川水防団待機水位等)や河川公園などの河川内利用の状況を考慮し、河川水が河道内を安全に流下できるとした流量をダム地点に換算した流量で、通常、1年に1~3回程度起こる流量を設定。

流水の正常な機能の維持

 河川においては、河川環境や利用の面から確保すべき流量があります。この量は、各河川ごとに、魚類などの保護やかんがい用水の必要量などから、求めています。
 流水の正常な機能の維持とは、渇水時においてもこの流量を川で保つことをいい、通常、ダムは、渇水時、貯めた水を放流することにより、この流量を維持する役目を果たしています。

  • 正常流量
    流水の正常な機能を維持するために必要な流量。政令10項目により検討。
  • 維持流量
    政令政令10項目のうち水利流量を除く9項目で検討。(舟運、漁業、景観、塩害の防止、河口閉塞の防止、河川管理施設等の保護、地下水位の維持、動植物の保護、流水の清潔の維持)
  • 水利流量
    正常流量を定める地点より下流における流水の占用のために必要な流量
  • 正常流量の安全度
    河川砂防技術基準(案)によれば、原則として1/10程度としている。これは、過去に計画された水資源開発や、水利使用許可が同様としており、既得の水利使用の安全度を尊重したことによる。

貯水容量、貯水位等

貯水容量、貯水位関係の画像
貯水容量、貯水位関係図

  • 総貯水容量
    洪水調節容量、利水容量、堆砂容量、死水容量を全部合計したもの。
  • 有効貯水容量
    ダムで最大貯めることの出来る水量を表す総貯水容量から、上流からの流出土砂を見込んで確保される堆砂容量および死水容量を差し引いた容量のこと。つまり、ダムで利用できる容量のこと。
  • 堆砂容量
    一定期間(一般的にダム計画では100年間)にダム貯水池に堆積すると予想される流入土砂を貯える容量のこと。なお、発電ダム等で堆砂容量の最上面と最低水位が一致しない場合のその間の容量を死水容量といいますが、県土木部管理ダムでは死水容量をもつダムはない。
  • 利水容量
    最低水位から平常時最高貯水位(常時満水位)までの容量のことで、利水目的に用いらる。
  • 洪水調節容量(治水容量)
    平常時最高貯水位(常時満水位)から洪水時最高水位(サーチャージ水位)までの容量のことで、洪水調節に用いられる。
  • 洪水期、非洪水期
    その地域で1年のうち通常、梅雨や台風など洪水の発生しやすい期間が洪水期であり、それ以外は非洪水期。洪水期には貯水容量を確保するため、貯水位を低く保つダムがある(制限水位方式)。なお、県土木部管理ダムでは6月15日から9月30日を洪水期としている。
  • 貯水位
    ダム貯水池(ダム湖)の水面の高さ方向の位置のことで、ダムの貯水位は一般的に標高(EL.エレベーション・海抜標高)であらわす。
  • 最低水位
    貯水池からの取水口の最低敷高で通常これよりも下の貯留水が利用できない水位。
  • 洪水貯留準備水位(洪水期制限水位)
    洪水調節容量を大きく取るために洪水期に常時満水位よりも水位を低下させる場合の水位。
  • 平常時最高水位(常時満水位)
    平常時(非洪水時)にダムによって貯留することとした流水の最高水位。
  • 洪水時最高水位(サーチャージ水位)
    洪水時にダムによって一時的に貯留することとした流水の最高水位。
  • 予備放流水位
    洪水貯留準備水位または平常時最高貯水位に水位を保持していた場合でも、洪水調節容量に不足のあるダムでは、洪水を受ける前に、一時的に水位を下げる計画を持っており、この目標水位のこと。この操作(予備放流)により確保できる容量を予備放流容量という。所管のダムでは、笠堀ダム(洪水期)、早出川ダム(非洪水期)が目標限度としての予備放流水位を持つ。
  • 堆砂位
    堆砂容量の最上面の標高。死水容量のない一般的なダムでは堆砂位=最低水位。

ダム操作

  • 操作規則
    河川法第14条に基づき県知事がダムごとに定めた規則のこと。ダムの目的や容量の配分(洪水時使用する容量、発電に使用する容量、水道に使用する容量等)のほか、洪水時の具体的な操作方法や体制、関係機関への放流に係る通知の方法、河川利用者への警報・周知の方法、その他点検整備の方法や管理記録の作成方法等が定められています。なお、「洪水前にダムを空っぽにしておけなかったのですか」といった問いが多く寄せられますが、多目的ダムでは、河川管理者及び各事業者が使用できる貯水池の容量は、あらかじめ操作規則で定められているので、すべての容量を洪水調節のために使用することは操作規則上はできません。
  • 放流の原則
    通常ダムでは、初期の放流時は河川利用者が安全に河道内から退避できるように、段階的に放流量を増加させ河川の水位が急激に上昇しないような操作を行っている。ただし、予想を超えるような豪雨(計画を超えるような豪雨)による洪水の調節により、ダムの貯水位が洪水時満水位(サーチャージ水位)を超えると予想される場合には、ダムの安全を確保するためやむを得ず流入量の増加割合の範囲内において放流量を増加させ、河川の流況に変化を生じさせる場合がある。そのような場合には、現地の警報局におけるサイレンの吹鳴や警報車によるパトロールを行い河川利用者へ周知を行うとともに、関係機関への通知を行い安全の確保に努めている。
  • 予備放流操作
    貯水池の有効利用を図るために利水容量と洪水調節容量の一部を兼用する場合、予備放流の操作が必要となる。操作としては予備放流水位を限度に一時的に貯水位を下げること。ただし、予備放流の遅延により洪水調節容量の不足を招く、あるいは無効放流により利水容量の不足を招く恐れがあり、洪水予測の高度なノウハウが求められる。
  • 異常洪水時防災操作
    「ただし書き操作」ともいう。ダムの計画と同等もしくは上回る洪水の流入により、ダムが満水となった時点から、貯水位をこれ以上あげないように、流入量をそのまま放流する操作のこと。過去の豪雨において、笠掘ダム(平成16年、平成23年水害)と刈谷田川ダム(平成16年水害)、下条川ダム(平成23年水害)においてその操作を行い、ダムは洪水調節容量をほぼ使い切ったが、洪水を低減させ、急激に増加した流入水を緩やかに放流するなど効果を発揮した。
  • 非常用洪水吐きからの越流
    ゲートレスダムにおいて、ダムの計画と同等もしくは上回る洪水の流入により、貯水位がサーチャージ水位を超えて非常用洪水吐きから越流に至る状態。過去の豪雨において、大谷ダムと破間川ダム(ともに平成23年水害)、ダムは洪水調節容量をほぼ使い切ったが、洪水を低減させ、急激に増加した流入水を緩やかに放流するなど効果を発揮した。

非常用洪水吐きからの越流(説明)の画像
非常用洪水吐きからの越流(説明)

放流設備

  • 放流設備
    通常(計画洪水)の洪水を調節する常用放流設備と計画洪水規模以上の洪水を処理する非常用放流設備、維持流量等の低水放流を行うための低水放流設備と放流設備の維持管理を目的とする予備ゲート等の種類がある。放流設備をゲートの型式毎に分類すれば、常用放流設備等に用いられるコンジットゲート、オリフィスゲート、クレストゲート、スライドゲート等、非常用放流設備にはクレストゲート等、低水放流設備としてはジェットフローバルブ、ホロージェットバルブ等、予備ゲートとしてはスライドゲート、ローラーゲート等の型式が設置される場合が多いが、各ダムによって採用される型式は様々である。
  • 洪水吐き
    ダムへ洪水が流入するとき、ダムの安全の確保のために設けられた放流設備の総称。ダム設計洪水流量以下の流水を安全に流下できる構造が求められる。「余水吐き」とも呼ばれたが、洪水吐きに統一されている。また、流量調節が人為的にできるかどうかでも区別され、前者をゲート付き洪水吐き、後者をゲートを有しない洪水吐きという。
  • 常用洪水吐き
    洪水吐きのうち、主として洪水調節に用いるもの。ダム設計洪水流量の放流を目的として設けられる非常用洪水吐きに対する用語で、一般にはオリフィスや高圧放流管の管路式放流設備が用いられる。
  • 非常用洪水吐き
    洪水吐きのうち、ダム設計洪水流量の放流を目的として設けられる放流設備。洪水調節を行うために設置される常用洪水吐きに対する用語で、常用洪水吐きでの放流量とダム設計洪水流量の差を放流するために設けられ、一般にコンクリートダムでは堤体上部などに洪水をあふれさせる越流式として作られる。フィルダムでは、堤体とは別にコンクリート製の越流部を設けます。
  • 取水設備
    水道用水、農業用水等の利水用水や維持用水等の放流を行うために設置するもので、ダム貯水池から直接導水する場合と、ダムから下流に放流し下流の取水堰等で取水導水する方式があり、後者の場合は低水放流設備等の設備の一部を共用することが多い。取水設備は利水や河川環境に留意してダムに貯留されている水の中から良質な水を取水する必要があるため、選択取水機能を持つ場合が多く、ダムの形状や取水地点により半円形、直線、円形といった多段ゲート、多孔ゲート等が採用され、水温や濁度等で最も良好な水深から取水できるように設計されている。

管理支援設備

  • ダム管理用制御処理設備(ダムコン)
    雨量、貯水位、流量といったダム水文量の演算、放流設備の操作のための演算、放流設備の制御、ダム水文量の表示及び記録、管理支援及び訓練機能を持ち、実管理上では根幹となる設備。
  • 電気設備
    管理所で使用する電力や、放流設備、管理支援設備等の一切の電力を供給する設備であり、電力供給に支障があるとダムとしての機能を失ってしまうことになるため信頼性の確保と代替え手段の確保が必要となる。電気設備には商用電源を受電して核管理施設をで必要な電源に変換する受変電設備、商用電源の供給が停止した場合に電力を供給する発電設備と照明やモータと配電線等を含めた負荷設備等がある。
  • 観測設備
    ダム流域の水文情報を収集するために設置されるもので、上流のダム流域には雨量観測設備、主要な流入河川及び下流の基準地点等に水位観測設備が設置され、広域的な降雨の観測を行うためにレーダ雨量計が利用される。雨量及び水位の観測データはテレメータ設備によりダム管理所に収集されて操作制御設備に伝送され時間雨量や流域平均雨量等に加工されて表示される。また、積雪地域では積雪計が設置される場合がある。レーダ雨量計データはレーダ雨量観測局で観測し処理、合成されてダム管理所等に配信され、レーダ雨量計端末装置で表示される。
  • 通信設備
    ダム管理上必要となる関係機関との連絡、情報の伝達等を目的として、台風や洪水等の災害時にも確実に連絡が取れるように専用の通信設備が設置される。下流の地域整備部や県庁との間に光ケーブル等の専用回線設備が設置されダム放流時や利水放流等の連絡、データ伝送に使用されている。移動無線設備はダム放流時の下流巡視、警報におけるダム管理所との連絡やダム湖管理や施設管理の連絡用として設置される。また、公衆回線によりダム放流連絡を下流自治体、関係機関(警察、消防等)に行うために利用され、確実な情報伝達を確保するためにファクシミリ等を使用する場合が多い。
  • 放流警報設備
    ダムが下流に放流する場合には河川法施行令等で「立て札による掲示を行うほか、サイレン、警鐘、拡声器等により警告しなければならない」と規程されており、河川内又は周辺地域に危険を知らせる放流警報設備による警報が必ず必要となる。サイレン・スピーカ等の音声による警報を行う警報局があり、ダム管理所から無線制御によって吹鳴し、放流水の流下に合わせて上流から順次警報を行うものである。また、標識、立て札はダムによる放流があり危険である旨の啓蒙とサイレン・スピーカの吹鳴の意味を河川利用者及び周辺住民に掲示するために設置するものである。

付帯設備

  • 管理所建物等
    管理要員の執務室、管理支援設備の機器収容室、監視操作室及び庁舎として必要な部屋があり、必要な広さが確保される必要がある。監視操作室等からはダム堤体およびダム湖(量水標等)が見渡せるようになっているが、必要によりCCTVカメラでも監視できるようになっている。付帯の建物として必要な車庫や倉庫等が設置される。
  • 貯水池付帯設備等
    貯水池等を管理するために必要な設備で、網場(あば)は流木や流芥を貯留して、放流設備を保護するほか、下流への流下を防止する機能があり、流木等をダム湖から引き上げて処理するための施設と合わせて流木処理設備や貯水池巡視船等の船舶を係留する係船設備がある。また必要により水質改善施設が設置される場合がある。
  • その他付帯設備
    ダム堤体の巡視や監査廊等へ機材を搬入するための昇降設備(管理用エレベータ)や監査廊の巡視を行うためのモノレール設備(奥三面ダム)が設置される場合がある。貯水池及び下流域のパトロール、警報巡視を行うための警報車、貯水池巡視を行う巡視船及び流芥処理を行う作業船等が配備される。なお、流木処理の焼却処理はできないので、一部を利用しやすく加工し流域住民に配布しているダムもある。
  • ダム管理用発電
    ダム管理者自らが、維持流量や利水放流を利用することでダム管理用の電気を発電するために、水力発電設備を設置するものである。発生した電気は、ダム管理用に使用し、ダム管理費用の節減を図るとともに、余った電力は一般電気事業者に売電し、売電収入はダムの管理費用等に充当し、ダムの合理化を図っている。胎内川、加治川治水、大谷ダムで運用している。再生可能な国産エネルギーでしかもクリーンなエネルギーであることから、今後、採算がとれるダムでは積極的な設置が望まれる。

ブロック工法

 コンクリートを一度に大量に打設すると、硬化時に発生する水和熱の放散割合が小さくなるためコンクリートの温度上昇差が大きくなり、その後コンクリートが冷却していく過程における体積収縮量も大きくなり、温度ひび割れが発生しやすくなります。ブロック工法は、このような温度ひび割れを防止するため、ダム堤体を柱状に分割して鋸の歯のように凸凹状にコンクリートを打設していく方法です。

全面レア工法

 コンクリートダムの施工において、ブロック工法のようなリフト差を設けずに、振動目地切り機により横継目を設置しながら、堤体全体を一様に打設していく工法です。

出典等

「ダムに関する用語」の作成にあたっては、河川総合開発用語集(財団法人ダム技術センター)やダム管理の実務(財団法人ダム水源地環境整備センター)等を参考にさせていただきました。

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