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村上岩船で暮らすヒト・働くヒトへのインタビュー(3)
「トマトとドローンを愛し、地域の農業を支える」
髙野 貞昭さん
村上市出身。高校卒業後、東京の専門学校へ進学。その後スポーツインストラクターの会社に勤務したが、都内のタイトな生活スタイルに合わずUターンし、JAかみはやしに就職。その後農事組合Miraiこいわうち(現株式会社Miraiこいわうち)を設立し、ドローンを活用したスマート農業に取り組んでいる。
Q高校時代の夢や職業観を教えてください。
高校時代はスポーツインストラクター養成学校に通ったりと、農業に興味があったわけではありません。今育てている米の名前もトマトのことも何も知らなかったんです。地元村上にUターン後、農協で働いているときに集落のおじいちゃんたちが、「もう田んぼの管理もできない」と言っていたのを聞いたんですね。自分も少し田んぼをやっていたこともあって、自分の集落の田んぼを守ろうというコンセプトで「株式会社Miraiこいわうち」を立ち上げました。農協時代に米の販売だったり、取引先との価格交渉も面白そうだと思って、会社の経営に興味を持ったのも一つの要因ですかね。
Q今やっている仕事を教えてください。
柱が三つありまして、お米、トマト、ドローン。お米は東京ドーム四つ分の田んぼで作っています。新之助という品種をドローンを使って栽培して「空舞米」として販売しています。ドローンを使えば、播種、除草、肥料、日々の確認、動画撮影全てできます。
トマトハウスはクラウドで情報を管理しています。タブレット一つあれば二酸化炭素の濃度などトマトの生育環境をリアルタイムでどこにいても確認できます。ちなみに、元々トマトは作ったことがなくて初心者でしたが、食卓に出る身近な食べ物を作りたくて、ミニトマトなら手に取りやすいし、良いかもしれないと思って栽培を始めました。
うちの農業の方針としては、泥まみれになって汗かいてという、今までの農業のイメージを変えて、若手が働きやすい農業にチャレンジすることです。ドローンやセンサーを使ったスマート農業で作業を効率化したり、LINEも当たり前に使って、気軽に情報共有するようにしています。また、社員には自ら考え・行動してほしいと日々伝えています。
少子高齢化による担い手不足は農業でも同じです。地元の原風景でもある農地を、若い世代に引き継ぐためにも、固定観念にとらわれず新しいことにチャレンジしていきたいと思います。
Q村上岩船で暮らし・働くことについてどう考えていますか?
東京で8年スキー・スノーボードのインストラクターとして働いていましたが、人が多かったり、目まぐるしく変わる環境に慣れないところがあって、村上に戻ってきました。アウトドアも大好きで、こうやって海・山・川が揃っているところはなかなかありません。村上はこれだけ四季折々な風景に出会うことができます。今、皆さんは地元にいると分からないかもしれませんが、外に出て分かる部分もあります。やっぱり自分も県外に1回出たことで、地元の良さが分かったと思います。
Q将来に向けてやっておいた方が良いことを教えてください。
一つでもいいから得意なものをつくったほうがいいと思います。人に誇れるようなものでなくてもいいので、自分の強みを見つけてほしいです。ちなみに私はトマトとドローンでは絶対負けません。
もう1点、仲間を大切にしてほしいです。高校時代の仲間とは今でもつながっていて、令和4年8月の県北豪雨では、田んぼやトマトハウスが被災したときもいち早く地元の仲間たちが駆けつけてきてくれました。仲間を大事にすることで、自分の応援者になってくれることを覚えておいてください。
Q今後の展望を教えてください。
大きな夢として、地元で採れたトマトを県内のみならず、世界中の人にも食べてもらいたいと思っています。あとは、我々が育てる地元のお米を使って、おにぎり屋さんを開きたいとか何となく思っています。
そのためにも、これまでとは違う何か新しいことにチャレンジしたいです。まずは、私たちが作った農産物をたくさんの人に食べてもらうために栽培面積を増やすとか、トマトやお米に続く、お客様に喜ばれる新しい野菜を育てるとかです。新しいことには準備がつきものなので、社員と一緒にしっかり備えていきます。
Q高校生へのメッセージをお願いします。
いつもと同じ行動の中で何か一つ変えてみる。いつも右足から靴を履いていたとしたら今日は左から履いてみるとか、身近なことでいいので。そうすると何か違ったことが見えてくると思います。
また、人のやっていることを真似て自分のスタイルに変えていくことも大事だと思います。私も、トマトは他県の事例を真似して、そこから自分たちの栽培環境にあった育て方に変化させています。
あとは、自分から発信することも大事です。水害の時、田んぼやトマトハウスが浸水した状況の中で助けてほしいということを毎日発信しました。そうしたら多くの人が県外からも手伝いにきてくれて、一人ではどうすることもできない中でとても嬉しかったですね。スーパーとかでもSNSを見てくれた人に声をかけていただいたりすると、応援してくれる人のために美味しいものを作りたい気持ちが湧いてきます。ぜひ、自分から色々なことを発信してみてください。
- (株)Miraiこいわうち<外部リンク>