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耕作放棄地をそば畑に再生!そば産地における安定生産への挑戦【株式会社 ばんば】
代表取締役 樋口 克二 氏
法人の概要
株式会社ばんばは、平成24年3月に十日町市馬場地区において有志9名で設立した農業法人です。そば、大豆、水稲の生産に取り組んでおり、そばでは高齢化や担い手不足によって生じた耕作放棄地を再生し利用しています。
生産した玄そばの一部は自社で製粉加工し、「挽きたて」のそば粉を地元のそば店や直売所等に供給しています。
平成27年度全国そば優良生産表彰で全国農業協同組合中央会会長賞を受賞しました。
経営面積・品種と内訳(平成30年産)
作目 |
品種 |
作付面積 (ha) |
収量 (kg/10a) |
品質 (%) |
---|---|---|---|---|
そば |
とよむすめ |
16.6 |
40 |
1等 100 |
大豆 |
エンレイ |
2.5 |
260 |
3等・特定加工 |
水稲 |
コシヒカリ 新潟次郎 |
9.6 2.6 |
500 570 |
1等 100 合格100 |
そば作の概要
工程 | ポイント |
---|---|
ほ場 準備 |
・主に標高 180~350mの台地上の排水が良い畑地で作付 |
播種 施肥 |
・播種は、畝立て(条間30~35cm)の側条施肥播種機の使用を基本とし、ほ場条件に応じて動散による表面散播に切り替え |
防除 |
・5月下旬、6月下旬、播種直前の7月下旬に耕うんすることで、雑草が種子を付けないように管理 |
播種作業の様子
インタビュー ~樋口 克二 代表にお話を伺いました~
― そばを導入したきっかけと経緯について教えてください。
「高齢化や担い手不足による耕作放棄地の解消のため、そば栽培に取り組みました。」
かつて当地の畑地ほ場は、「ユリ」の産地として球根生産が盛んでした。しかし、高齢化や担い手不足、農業情勢の変化から耕作放棄地が増えるようになってきました。今後もその傾向が続くことが見込まれ、水田も含めて農地の多面的機能の喪失が危惧されています。そこで、株式会社ばんばを設立し、この地域の農地の受け皿として、耕作放棄地の再生、利用に取り組むことにしました。
そばを選んだ理由は、十日町市の近郊は「へぎそば」が有名でそば店も多くあり、地元産そばの需要が見込めると判断したからです。
― 多収・高品質のために工夫していることについて、教えてください。
「そばは中間管理がほとんどないので、播種量と土づくりがとても大切です。また、選別も徹底しています。」
播種機の設定に注意しています。条播では条間30~35cm程度、苗立数100~120本/平方メートルを目標としていますが、条間を広げすぎると株間が狭くなりすぎ、株元が過密となって倒伏したり、面積当たりの苗立数が不足して減収したりと、苦労しました。また、特に側条施肥では過剰施肥となって倒伏しないように注意しています。
畑地ほ場では連作年数が長くなり、当初は収量が100kg/10aを越えていたほ場でも年々収量の低下を感じています。連作回避の他、発酵鶏ふんの施用、緑肥の試作などを行っており、今後は土壌調査も実施して、収量向上に向けて、必要な対策をとりたいと考えています。
選別は高品質な玄そばに仕上げるため、徹底して行っています。2番口に出るもの以外はすべて1等に格付けされています。収穫物は乾燥機に入れる前に粗選機で夾雑物を取り除きます。乾燥機はそばに対応した機種を用い、乾燥後は唐箕を2台通して、未熟粒や乾燥時に発生した破砕粒などを除きます。さらに2.5mmのグレーダーを通して雑草種子やごみを取り除いて出荷製品に仕上げます。自社製粉する場合は、石臼製粉の前に、みがき、石抜き、脱皮の工程が加わります。選別・調製にかかる時間は長くなりますが、高品質な玄そばやそば粉を出荷できるように心がけています。
―加工・販売の取組について教えてください 。
「自社で栽培した玄そばから挽きたてのそば粉を提供できます。」
平成26年に製粉施設を整備しました。これにより、自ら生産した玄そばを製粉して、挽きたてのそば粉を供給できるようになりました。県内食品加工技術の専門家から指導を受け、自社製そば粉の成分や粒度を科学的に調査したほか、製粉作業の担当者を配置して、そば粉の品質向上を図ってきました。
また、出荷先の好みに応じて、ふるいの使い分けや1番粉と2番粉の配合割合を調整するなど、希望に沿ったそば粉製粉も可能となりました。
製粉作業の様子
※経営面積や品種情報については取材時のものです