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DNA分析手法による水稲品種「新之助」の判別技術
市販の水稲品種判別用キットで、「新之助」と新潟県水稲奨励品種、種子対策品種の判別ができます。また、全国水稲作付面積上位20品種との判別も可能です。
DNA分析手法による水稲品種「新之助」の判別技術 [PDFファイル/181KB]
「新之助」は平成29年度から本格的に一般作付され、市販米が流通します。
「新之助」の品種判別技術を紹介します。
本題に入る前に、DNA分析による水稲品種判別技術の特徴について説明します。
分析試料はDNAが取れればイネのどの部位を使用してもかまいません。一般的には米粒や葉組織を試料とします。
分析結果は非常に明瞭で、分析を失敗しない限り、曖昧な結果は出ません。
分析に要する日数は最短で1日、長くても数日で結果が出ます。
しかし、イネのDNAは作付地や年度によって変化しないため、分析によって産地や産年を判断することはできません。
次に具体的なDNA分析手法について、順を追って説明します。
最初にイネ細胞内からDNAを取り出し、分析可能な純度に精製します。
写真にある機械は米を物理的に粉砕するために使用するために使用します。粉砕後に数種類の試薬で処理し、純度を上げます。
次に、取り出したDNAの、品種ごとに異なる部分を増やします。
イネのDNAは99.9%以上は同一でごくわずかな違いしかありません。
この工程は品種判別技術の中核となる部分でありますが、「新之助」の判別にはS社が市販しているプライマーセットA及びCを用います。
写真はDNAを自動で増やすPCR装置です。
最後に増やしたDNAを大きさの順に並べ、可視化します。 この工程では電気泳動装置という特殊な機械を用いて行います。 写真はプライマーセットCで「新之助」といろいろな品種を分析した結果で、白で示されたバンドの本数とその位置の違いから、品種判別を行うことができます。
表は「新之助」と新潟県水稲奨励品種、種子対策品種及び全国作付面積上位20品種の分析結果を一覧にまとめたものです。
バンドが出た部分は+、出なかった部分は-で表記してあります。
「新之助」はプライマーセットAで分析した場合、「きらら397」以外の品種と判別することができます。
同様にプライマーセットCで分析した場合、「きぬむすめ」以外の品種と判別できます。 両方の分析結果から、「新之助」は新潟県水稲奨励品種、種子対策品種及び全国作付面積上位20品種と判別することができるのです。
本技術は種苗の品種検定に利用できます。
混種事故は主に種子収穫調製時、育苗期、出穂期に見分けることができますが、いずれの場合でも本技術による迅速な判定が可能であり、その原因解明することができます。
また、種子生産現場で混種事故が発生すると、その経済的な被害が甚大ですが、生産した種子を配布前に検定することにより、品質を担保することができます。
次に本技術は流通米の偽装防止にも利用できます。
偽造の実態の事例は少ないですが、参考に新潟県産コシヒカリとして販売されている米250点の分析結果を示しますと、品種に偽りがないと断言できるのは全体の65%です。
品種偽装は価格の高い品種がターゲットとされやすいですが、「新之助」の市場価格が高価格となった場合、偽装のターゲットになる可能性があります。
本技術は「新之助」と表示された米の品種検定に利用できるのみならず、本情報を公開することにより、偽装の抑止力になると考えられます。
作物研究センターは公的な研究機関のため、「新之助」の品種判別を受託できませんが、本技術を利用して民間の分析機関に技術の普及を図るために成果として公開しました。
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