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農業法人の円滑な事業継承に向けた問題点と対策

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0296148 更新日:2020年7月1日更新

県内の農業法人の半数以上で準備が不十分なまま継承が行われています。後継者の能力養成には3~5年程度を要することを想定し、後継者確保や能力養成に向けた組織体制の見直しなどに計画的に取り組むことで円滑な事業継承が期待できます。

農業法人の円滑な事業継承に向けた問題点と対策 [PDFファイル/285KB]

 

 

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平成26年に(公社)日本法人協会が行った会員基礎調査によると、新潟県の法人代表者の平均年齢は60.9歳(全国平均58.2歳)であり、年々年高齢化する傾向が見られます。
また、平成24年に県庁経営普及課が県内の6次産業化に取り組む農業者(法人を含む)に後継者の目処を尋ねたところ、「後継者の目処が立たっていない」との回答が全体の3割を占めていました。
このため、円滑に事業継承を行ううえでどういった課題があるのかについて、経営普及課とも連携してアンケート調査を行いました。

 

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平成25年及び26年に、3年以内に代表者を交代したばかりでまだ事業継承時の記憶が残ると考えられた「稲作を主体とする農業法人」の経営者に対し、当該法人における事業継承の実態を尋ねるアンケートを実施しました。
その結果、配布総数143通のうち98通の有効回答を得ることができました。

 

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有効回答が得られた98法人を、法人のタイプ((1)集落営農、(2)有志型の法人で農事組合法人の形態のもの、(3)有志型の法人で会社形態のもの計3区分)別に整理し、分析を行いました。

 

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平成19年にスタートした国の品目横断的経営安定対策に対応すべく設立された法人が多いことがわかると思います。(図3)
平均で見ると、集落営農型>有志型(農事)>有志型(会社)の順に設立年次が新しいなど、法人形態の違いにより特徴があることが明らかとなりました。(表1)

 

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棒グラフの凡例は、集落営農型を基準に回答割合が高い順番に並べています。それぞれのグラフの形を見てもらうとわかると思いますが、法人のタイプによって事業継承のきっかけにも違いが見られました。

 

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事業継承が計画的に行われたかどうかを尋ねた設問では、全体の3割が計画的に継承したと回答していますが、このウラを返せば7割は計画的に継承を行っていないことがわかります。(図5)
表2から見えてくることは、下方向(企業的な経営を重視するタイプ)に行くほど継承準備に時間をかけていることがわかると思います。

 

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現経営者のために先代経営者が継承準備として取り組んでくれた項目を尋ねたところ、いずれの法人タイプでも「特定部門の権限付与」が多いですが、継承準備としては「何もなし」という回答も結構見られ、特に有志型(農事)ではもっとも回答として多い項目でした。

 

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先代経営者が取り組んでくれた継承準備項目のうち、最も役に立った取組は何かを尋ねたところ、やはり法人タイプによって回答が異なる傾向が見られました。
集落営農型では「特定部門の権限付与」、「組織体制の整備」が多く、有志型(農事)では先の項目に加えて「役員登用」が役に立ったと回答されています。有志型(会社)では「社内での業務経験」と「(地主を含む)取引先等への紹介」が役立ったと回答されています。

 

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現経営者が事業継承後に苦労したことは、「収量・品質の向上」(→思うように改善できないということか)、「従業員の協力」、「(他の)役員の協力」、「従業員の育成」等でした。従って、継承準備としては、法人内の人間の協力がスムーズに得られるよう合意形成を含む事前の働きかけが必要となることが伺われます。

 

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後継者育成にどのくらいの期間が必要かを尋ねたところ、やはり経営志向が強い(下方向に行く)ほど長期間を要するとの回答が得られました。既に経営体の内部で後継者のメドが立っている状況で3年~5年必要なのであれば、後継者を新たに確保するところからスタートする場合には、さらに長期間の継承準備期間が必要になることが伺われました。従って、事業継承には早め早めに取り組む必要があります。

 

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先に提示した図6(先代がしてくれた継承準備)と図10の右のグラフ(次の継承で必要と考えている取組)を比較したところ、全体的に項目によらず準備内容として取り組みたいと考えている項目が多くなる傾向が見られましたが、最も顕著であったのは「(継承準備として)何もなし」との回答で、集落営農型(ごく一部あり)以外では回答がありませんでした。
この研究の結論にもなりますが、継承準備として必要となる取組内容としては「社内業務経験」、「役員登用」、「組織体制の整備」、 「特定部門の権限付与」などが特に重要となると思われます。

 

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次回の継承時に心配されることは、「後継者の確保」と「後継者の育成」が他を引き離して回答割合が高くなりました。事業継承を最近終えたばかりの法人であっても、後継者問題は組織が抱える永遠の課題であることがこの設問から伺われました。

 

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事業継承を代表者の交代時に限定して捉えるのでなく、可能な部分から部分的、段階的に権限委譲を進めることで、現経営者が後継者とでOJTを行いながらスムーズな代表者機能の引継を行うことができると思われます。

 

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人数が少ない法人では、法人内でのジョブローテーションも困難かと思われますが、可能な限り(また従事期間は短くても良いから)他の事業部所を経験させることは、後継者が経営全体を見る目を養うのに効果的だと考えられます。
今回の調査で、法人のタイプの違いにより予め想定できる「継承に当たっての課題」や「その解決に必要となる対策」が予想できるようになったことで、これまでに比べて円滑な事業継承に繋がる支援を行うことができるようになると考えています。

 

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