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賃金(一時金以外)に関する調整事例
賃上げに関する事例
申請までの経過
A会社の賃上げについて、B組合は一人平均8,000円の賃上げを要求したところ、会社は2,000円の賃上げを行うと回答した。組合は、会社の収益が対前年比で増加していることから、少なくとも前年実績である3,000円以上の賃上げを要求したが、会社は、遅れていた設備投資を行う必要があることを理由に、これ以上の上積みは不可能であると回答し、妥結には至らなかったため、組合はあっせんを申請した。
あっせんの概要
あっせん員が双方に対して、少しでも譲歩できないか聞いたところ、会社は、低給与所得者については更に2,000円上積みし、計4,000円を上限とする賃上げを行うとの考えを示し、組合もこれを受け入れる意向を示した。そこで下記あっせん案を提示したところ、双方が受諾したため、本争議は解決した。
あっせん案要旨
- 賃上げは、組合員一人当たり月額2,000円とする。ただし、是正措置の必要な組合員については、月額2,000円から4,000円の範囲内で調整する。
- 是正措置の対象者及び調整額については、今後労使で協議する。
賃金カットの復元に関する事例
申請までの経過
I会社とJ組合との間で、賃金カット等を内容とする協定書が締結され、以来、約2年間、賃金カットが実施されてきた。ところが、協定書には賃金カットの終期が規定されておらず、組合は団体交渉や労使協議会の場で賃金カットの復元を要求してきたが、会社からは明確な回答は得られなかったため、組合があっせん申請を行った。
あっせんの概要
あっせんでは、現段階ですぐに賃金カットの復元には至らなくとも、労使間で今後も話合いを誠実に継続すること、及び会社が組合に対して会計資料を開示するという方向で双方とも合意に至った。そこで下記あっせん案を提示したところ、双方とも受諾したため争議は解決した。
あっせん案要旨
- 会社は、経営状況を示す会計資料の写しを組合三役に交付する。
- 組合三役は、前項の資料を他に配付してはならない。
- 協定書による賃金カットの回復については、組合員の生活実態と会社の経営状況を労使双方で理解し合い、引き続き誠実に交渉する。
退職金に関する事例
申請までの経過
G会社は自主廃業することになり、退職金について、中小企業退職金共済制度に加入している分以外に、同制度に加入する以前の分に関しては会社として支払えないと従業員に説明した。H労働組合は、同制度に加入する以前の分についても各組合員の勤務年数に見合う退職金を支払うよう求めて話合いを行ったが、進展がなかったため組合があっせん申請を行った。
あっせんの概要
あっせんは2回行われた。
第1回あっせんで会社は、現時点で退職金を支払うことは不可能であると主張したため、あっせん員は、清算終了時に残余財産があった場合に退職金を支払う方向で解決を図れないか双方に打診し試案を作成した。そして、この試案について次回期日に意向を聴取することとした。
第2回あっせんで、会社から「退職金は清算が終わる前に支払いたい。また、勤続年数だけでなく役職や功労等も踏まえて支払う額を決定したい。」との意向が示された。そこで、あっせん員が組合とも調整したうえで、下記のあっせん案を双方に提示したところ、双方とも受諾したため、争議は解決した。
あっせん案要旨
- 会社は、組合員に対して、中小企業退職金共済制度で支給される退職金に加え、勤続年数、功労に応じた退職金を支払うよう努力する。退職金の配分は、会社と従業員代表との話合いで決定する。
- 前項の退職金の支払いができなかった場合には、会社は、清算結了時に残余財産がある場合に、組合員に対して、中小企業退職金共済制度加入前の勤続年数1年につき1万円を上限とする退職金を支払うものとする。
- 会社の清算手続の進行にあたっては、組合は、会社にできる限りの協力を行う。
賃下げ、退職条件に関する事例
申請までの経過
L組合は、3月に月額1,500円の春闘賃上げ要求書をK会社へ提出したところ、会社は、5月分賃金から15%の賃金カットを行うことを提案し、それを実施した。組合は十分な労使協議なしに行われた賃金カットは労使協定違反であるとし、その撤回を求めて計3回の団体交渉を行ったが進展はなく、「賃下げの撤回」を求めてあっせん申請を行った。
また、上記あっせん申請の後、会社は組合に対して、合理化の一環として予定していた整理解雇の具体的提案を行った。組合は、会社の経営の悪化から、解雇は受け入れざるを得ないと判断し、「解雇に伴う退職条件」についてもあっせん申請を行った。
あっせんの概要
あっせんは2件の申請について一緒に行われた。組合は「十分な労使協議なく行われた賃金カットを撤回すること」、「解雇の提案のあった者の退職金については、退職金規定の額より5割から10割の割増をすること、及び年次有給休暇の買い上げをすること」を主張したが、会社は「賃金カットは撤回できない」、「解雇者の退職金は、本給を賃金カット前に戻した額で、退職金規定により算定した額を支給する」、「年次有給休暇の買い上げはできない」と主張した。
双方から事情聴取を行った後、あっせん員が会社を説得し、経営状況の説明のために、会社が組合役員に決算書の開示を行った。そして、双方の主張を勘案したうえで下記のあっせん案を提示したところ、双方とも受諾したため、争議は解決した。
あっせん案要旨
- 会社は、解雇者の退職金について、退職金規定により算定したものに1.2を乗じた額で支給する。なお、算定の基礎となる基本給月額は賃金の15%カットを行わないものを用いる。
- 会社は賃金15%カットに関して、組合との協議が必ずしも十分なものでなかったことを踏まえ、今後の組合員の労働条件の基本的な変更については、事前に誠意をもって協議する。
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