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【新発田】農業水利施設百選: 阿賀野川右岸地域を守る排水機場
福島潟から新井郷川排水機場までの水位イメージ図
新井郷川排水機場は、阿賀野川と加治川の間にある新井郷川下流に設置されています。新井郷川は福島潟を水源とし、北区内だけを通って、日本海に注いでいる全長約14kmの1級河川です。河川が改修される以前は、流れが濁っていたため、下流付近では新井郷川のことを「濁川」とも呼んでいたそうです。
新井郷川周辺の地域は福島潟を中心とした低湿地帯のひとつです。少しの降雨でも河川が氾濫し、宅地・農地への湛水被害が多く発生しました。そこで、たまった水を日本海にポンプの力でくみ出すことを計画し、新井郷川排水機場を建設しました。それからは、この地域の人々が安心して暮らせるようになり、また水田での湛水被害が減少し、農作業の軽減が図られました。
新井郷川排水機場の様子
新井郷川排水機場には1号機から5号機まで5台のポンプがあります。通常時は2号機と3号機を運転しています。そして大雨が降り、福島潟の水位が高くなるとポンプの運転台数を増やして排水します。洪水用ポンプのうち、2台は停電時も使用できるよう、重油を燃料とするガスタービンエンジンが使われています。
新井郷川排水機場の中の様子
そのポンプを運転するために、新井郷川の水位や雨量などのいろいろなデータを集め、ポンプを動かしているのが操作室です。操作室では他にも除塵機や水門なども操作します。水門は、ポンプだけの排水では間に合わないくらいの大洪水が発生した時など新井郷川の水位が海面より高くなったときに開きます。
それと併せて舟通し水門もあります。これは排水機場が建てられたことで、漁船や工事用の船が行き来できなくなることから、このゲートを操作して船が通行できるよう工夫された水門です。
新井郷川排水機場の除塵機の様子
除塵機は、排水機場に流れてきたゴミを掻き上げる機械です。これが無いとポンプがゴミを吸い込んでしまい、壊れてしまいます。草や木の他に、空き缶や古タイヤ、自転車などいろいろなゴミが流れてきます。特に大雨のときはたくさんのゴミが流れてきて、片付けるのがとても大変です。
地域の人たちが安心して生活できるよう、新井郷川排水機場は24時間365日休むことなく稼働しています。
国営阿賀野川右岸農業水利事業の概要
福島潟及び阿賀野川右岸全体の排水改良を行うために、昭和16年(1941)から開始した事業です。新井郷川の水位を低下させるため、新井郷川下流にある新井郷川排水機場を建設するほか、福島潟・新発田市・阿賀野市周辺の排水路の改良・新設を行いました。
当時の新発田川工事の様子
内容は、新井郷川排水機場の建設(途中福島潟干拓により90立法メートル/sから110立法メートル/sに変更)、新井郷川排水路の改修、新発田川機械排水幹線の改修(旧新発田川、太田川)、新発田川自然排水幹線の改修(新新発田川)、新発田川自然排水支線(中田川)、分川(現新発田川:入舟町付近)、赤沼排水路、太田川(現天辻川)、新発田川自然幹線排水(松岡川:戸板沢付近まで)内沼排水路、駒林川排水路、旧小里川排水路万十郎排水路、吹切川排水路、奥右衛門川排水路、山倉川排水路(折居川)ほかとなっています。
また、建設する新井郷川排水機場の負荷を軽減するため、五頭山系から新井郷川に流れている川を直接阿賀野川に流すための放水路の建設も進められました。
法柳樋門、安野川排水路(現安野川)、法柳排水路、旧安野川排水路(現阿賀野市街地付近駒林川)、小里川排水路、小里川支線、安野川排水路(現大荒川)、白川堰、羽黒堰、安野川支線(現安野川上流部)、大室川排水路(現大日川下流)などの排水路が改修されました。