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6 新発田川放水路と福島潟放水路
昭和41年7月19日の下越地域の湛水エリアイメージ
福島潟周辺地域は、福島潟を中心とした土地標高0mから3mの新潟県内有数の低湿地帯のひとつで、十数本の河川や排水路が福島潟に流入しています。このことから、洪水時には周辺の耕地や宅地が浸水するなどの被害をたびたび受けていました。中でも昭和41年7月の下越水害、昭和42年8月の羽越水害により、この新発田地域では大きな被害をもたらしました。
この災害を契機に昭和43年に新井郷川恒久的治水対策が策定され、この基本計画に従って、国土交通省による胡桃山排水機場建設や農林水産省による大荒川の安野川付け替え工事が実施されました。また、県土木部でも昭和44年から福島潟放水路、昭和48年から新発田川放水路の工事に着手し、県農地部でも平成10年から安野川改修を進めています。
新発田川放水路
新潟東港に流れる新発田川放水路
新発田川は、大きな降雨があったときには新発田川放水路を流下し、新潟東港から日本海に洪水を排水しています。なお通常時は、新発田川から福島潟放水路を平面交差し、新井郷川排水機場の下流の新井郷川へ排水しています。
昭和48年に工事着手を行い、平成11年に完成しましたが、途中、平成7年8月2日から3日の下越地方を中心に発生した豪雨では、新発田川、太田川では水位上昇による溢水の危険が生じました。このため、聖籠町、新発田市からの「新発田川放水路への緊急通水」の要請を受けた新潟県では、関係機関への連絡を取りながら、電気設備工事が完了していなかった潮留堰へ急遽発電機を搬入してゲート操作の準備を行い、3日午後4時10分に新発田川右岸堤防を切り落として、新発田川放水路への緊急通水を開始しました。
これにより、午後5時には水位が低下し、新発田川、太田川流域では溢水の危険を回避することができました。
ラジアルゲート構造の潮止堰
新発田川放水路の最下流部、国道113号と交差する東港大橋の直上流部には、日本海側からの流水を防ぐために潮止堰があります。この堰は3門のゲートがあり、ゲートの上部・下部の両方から洪水を流すことのできる中央部の調節門1門とゲートを上げて洪水を流下させる両端部の制水門2門の構造となっています。この新発田川上流の水位がEL2.0m未満のときは、潮止堰からの放流は原則として行わず、水位が2mを超えようとするときは、調節門を下げてゲートの上部からの放流を開始し、最終的にはゲート3門を上げて最大550立法メートル/sの洪水を流下させます。
福島潟放水路
福島潟周辺の排水のイメージ
福島潟放水路は、福島潟の水位が高くなったときに、洪水を福島潟から分水して新潟東港を経由し、日本海に放流するために開削した河川で、周辺の浸水被害の軽減を図ります。
昭和43年に策定された「新井郷川恒久的治水対策」の一環として昭和44年から始まった工事は、事業費481億円をかけ、延長6,740m、川幅約100m、計画洪水量300立法メートル/sの放水路が平成15年に竣工しました。
放水路の下流には、豊栄潮止堰があり、海水が放水路内に遡上するのを防止するための堰があります。この堰はゴム引布製の堰で、河川水を入れて膨張させる構造となっています。
H3.6m×B46.2m×2門の椋堰
また、そこから上流約4.5kmのJR白新線と交差する上流に椋堰があります。この堰も放水路の水が福島潟へ逆流するのを防止するためのものであり、また両堰の区間では、新発田川の流入や農業用水のための揚水機場が設置されており、その水位を適正に維持する役割を担っています。
構造は豊栄潮止堰と同じゴム引布製の堰ですが、河川水ではなく空気によって風船のように膨らませる堰となっています。洪水時には倒伏させて福島潟から放水路を通じて流下させます。
この放水路は平成16年の豪雨、平成23年の豪雨時等に通水し、福島潟周辺の地域の安全度はかなり上がってきています。
福島潟放水路縦断イメージ図