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障害者芸術文化祭の文芸作品
文芸作品は、短歌34作品、俳句65作品、川柳28作品、自由詩32作品もの応募がありました。
いずれも、作者の皆さんの思いが込められたすばらしい作品ばかりです。
入賞作品は下記をご覧ください。
短歌部門
県知事賞
- 作者 中山 節美さん
- 作品
よく学ぶ 女孫(めまご)に夢を 問うてみる 医療の道と 迷わぬ答 - 審査委員コメント
よく学ぶお孫さん、祖母にしてみれば目に入れても痛くない孫、夢は孫の希望でもあり、作者の夢でもあって、歌のポイントでもあり「医療の道」の副詞になっています。
それらを五句の「迷わぬ答」が一種引き締めました。
審査員特別賞
- 作者 河内 勝哉さん
- 作品
真夏日の 暑さに耐える 運動会 ハンディーのり越え 友らは走る - 審査員コメント
今年の夏は殊に暑さが厳しかったですが、その暑さに耐えての運動会。
ご不自由の身の上の「ハンディーのり越え」と自らリアルに表現されました。
更に「友らは走る」に明るく力強さがあります。
五つの句を順よく並べ、無理なく平明に詠まれていて好感が持てました。
俳句部門
県知事賞
- 作者 石黒 正裕さん
- 作品
短夜(みじかよ)の 夢まだ父母も 我も若き - 審査員コメント
季語が守られ、定型17文字と俳句の骨法がきちんと整っていて、情があり、しかも自らに溺れず、回想がセンチメンタルでなく、誰にでもわかる平明さの中で共感させられる句となって完成しています。
審査員特別賞
- 作者 安田 喜勇治さん
- 作品
手を取りて 触れさせられし 赤き薔薇 - 審査員コメント
肢体の不自由なので手にとどかぬ薔薇を誰かが触れさせるようにしてくれた。
有り難いことだとの感謝の心がこの句には隠喩されているとことが良いです。
感謝に対する直接的な表現ではないところがいかにも俳句的であって好ましいです。
川柳部門
県知事賞
- 作者 本間 光子さん
- 作品
故郷に この手を洗う 川が消え - 審査員コメント
同作者の「点字読む指から光満ちてくる」を最優秀に推薦しようと思いました。
しかしそれよりも「故郷にこの手を洗う川が消え」の「この手を洗う」の「この手」の表現の巧みさと具体的な表現に心打たれまた。
故郷が作者の体にまさに「光満ちてくる」思いでした。
審査員特別賞
- 作者 メグミさん
- 作品
ボージョレヌーボー 深まる秋の 朝ですな - 審査員コメント
ボージョレヌーボーの持つ深みがうまく表現されています。
「深まる秋の朝ですな」がごく自然に読む人に伝わってきます。
川柳はこのような世界ももっております。
川柳は人間の喜・怒・哀・楽のひとつを表現するものなのです。
自由詩部門
県知事賞
- 作者 松田 ふさ子さん
- 作品 一杯のみそ汁
私の人生の最後に ひとつだけ願いがあります
この両の手に 自由をください
一時間 三十分間でもかまいません
みそ汁を作りたいのです
六十年間
私の手となり 足となりしてくれた恩人たちに
みそ汁を一杯 あげたいのです
“ありがとう”の言葉を添えて
還暦を迎え 私は知っています
そんな願いは かなわないことを
それでも 願わずにはいられないのです
この両の手に 自由をください
一杯のみそ汁を作りたいのです
私の恩人たちにささげたいから…
何ひとつ 惜しむものなどありません
この願いが届くのなら - 審査員コメント
人は一人では生きられないという実感は過去をふり返れば思い当たります。
そのとき感ずる「感謝」には人により深浅があるでしょう。
この詩には素直な深さが表現されています。
「みそ汁を作ってあげたい」というさりげないことばに、非常に深い気持ちがありますね。
審査員特別賞
- 作者 山崎 妥さん
- 作品 木
憂鬱な唄を 歌う木を
私は 見つけた
ウウウウウ-
ザザザザザ-
木を枝を揺すり
実を振るわせて歌う
ウウウウウ-
ザザザザザ-
だから
この木には
誰も 寄り着かない
私以外は
私は
この木の憂鬱の原因を
知っているのだ
この木の 憂鬱の原因
それは
私だ- - 審査員コメント
自分の心をみつめた詩です。
自分をふかく見るとき、辛いことが多く、逃げ出したいと思っても逃げられませんね。
それを「歌う木」にしたところで、よい詩になりました。
ウウ、ザザという擬音もよい効果を生みました。