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にいがた水利施設百選「開拓の稔りを支える津南のダム群」
城原ダム、大谷内ダム、大場頭首工、中子の池
河岸段丘台地のとうもろこし畑
十日町盆地の南西部、長野県との県境に位置する津南町は、「農を以て立町の基と為す」を町是としています。この町是に違わず、津南町では、魚沼コシヒカリをはじめ、アスパラ、スイートコーン、にんじんなどの農産物が生産されています。
津南町の農地の多くは、町を北東に流れる信濃川へ合流する中津川、志久見川などの河岸段丘上を中心に広がっています。この信濃川右岸の段丘上の農地開発は、明治後年から始まったとされており、戦前から戦後すぐに、いくつかの農地開発事業が行われました。
そして、高度経済成長後期、苗場山麓の林地開発や田畑の高度利用、低い生産性の克服の意欲が高まり、昭和48年、国営苗場山麓農地開発事業に着手しました。この大プロジェクトは、30年の歳月をかけ、約2,400ヘクタールを整備し、現在の津南町農業の礎を作りました。
城原ダム
国営苗場山麓農地開発事業では、農地の造成や区画整備のほか、用水源が乏しい河岸段丘の台地を潤すため、大規模な用水施設が造られました。
右の写真は、苗場山麓第一地区(昭和48年~平成6年)で造成された城原(じょうはら)ダムです。
夏のひまわり畑が有名な沖の原台地などに用水を供給しています。
所在地 津南町大字谷内
ダム形式 均一型フィルダム
総貯水量 1,200千立法メートル
堤高 27.0m
堤長 662m
大谷内ダム
左の写真は、苗場山麓第二地区(昭和50年~平成11年)で造成されたで大谷内(おおやち)ダムです。このダムは、貯水池全てが堤体で囲まれおり、堤長1,780メートルは、日本一を誇ります。
所在地 津南町大字秋成及び中深見
ダム形式 均一型アースフィルダム
有効貯水量 1,170千立法メートル
堤高 23.2m
堤長 1,780m
戦後間もない頃の大谷内ため池造成
大谷内ダムは、まず、昭和24年からの国営津南原開拓事業で、大谷内ため池として新設され、次に国営苗場山麓第二地区で、現在のダムの形となりました。
ため池として整備された当時の貯水量は、現在の3から4割程度でした。右の写真は、当時、農林産省職員として現場監督に携わっていた植木静一さんから提供いただいたものです。
大場頭首工
大谷内ダムへ用水を供給しているのが、左の大場頭首工です。
頭首工は河川を堰上げて取水するのが一般的ですが、この頭首工のある釜川は急流で堰上げできないことから、河床に埋設した導水管路へスクリーンで水を取り込むチロル式という取水方法が採用さてれいます。
この頭首工から管径110センチのパイプで5キロ下流の大谷内ダムまで用水が運ばれます。
ダムや頭首工を維持管理し、地域農業を支えているのが津南郷土地改良区です。職員の桑原さんは、各施設は大規模で広い範囲に点在しているので管理していくのはたいへんだと語ります。
中子のため池
右の写真は、津南町中子にある中子のため池です。中子集落の田んぼ80ヘクタールを潤すため池は、昭和33年に築造されました。
このため池は、写真の撮影ポイントとして、ゴールデンウィーク前後に多数のカメラマンが訪れます。もともと、観光地として有名だった場所ではなく、あるアマチュアカメラマンによる雑誌の写真コンテストへの投稿がきっかけで、賑わうようになったそうです。
タイミングがあえば、桜の下の残雪、そしてその雪から霞、湖面に映る満開の桜が、幻想的な情景を醸し出します。