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【魚沼】メンタルヘルスシリーズ第6回 「冬は明るく過ごしましょう-冬季うつ病について-」
雪がちらつき、家の周りを白く染め、本格的な冬が近づいてきました。
冬は、インフルエンザやノロウィルスなどの感染症が流行しやすいため、身体の健康により注意を要する季節ですが、冬は身体だけでなく、こころの健康にも気を配りたい季節であることをご存じですか。
このメンタルヘルスシリーズでは、これまで暑さ、寒さがストレス要因のひとつであることや、季節の移り変わりが自律神経のバランスを崩し心身の不調を引き起こすということを紹介してきました。
シリーズ第6回では、気温の変化以外で、冬という季節がどのように身体やこころに影響を与えるのか、一緒に考えてみましょう。
(1)冬に過眠過食になりませんか?
季節の変わり目やその季節の気候は、身体とこころの健康に影響を与えます。
暑さ・寒さがストレッサーとなってストレスが溜まりやすくなったり、日々の気温の変化により自律神経が上手く働かなくなって心身の不調になったりすることには、日本のはっきりした四季も深く関係しています。
さて、この時期、「なぜだか気持ちが落ち込む」「たくさん寝ても眠たくて、朝起きるのが辛い」といったことを感じる方はいませんか。
季節の変わり目による不調かもしれませんが、そこには冬特有のメカニズムが関係している可能性があります。
「冬の朝はなかなか布団から出ることができない」と言う方は、寒いからだけでなく、「眠たくて起き上がれない」からではないでしょうか。
冬になると「眠くて仕方がない」、「ついつい甘いものを食べ過ぎてしまう」ということが他の季節より増えます。
これは、厳しい寒さを乗り切るためにエネルギーを蓄えようとする身体の生理的な現象です。
しかし、こうした状態に加えて、気分の落ち込みなどが増し、日常生活に支障をきたすほどのうつ症状となってしまう人がいます。
季節によって症状が出たり出なかったりするうつ病は「季節性感情障害」と言われています。季節性感情障害の中でも、特に秋から冬の間(10月頃から3月頃まで)に症状が出る場合が、「冬季うつ病」と呼ばれています。
(2)冬季うつ病の症状
冬季うつ病に見られる症状の多くは、季節性ではない一般的なうつ病と同じです。
しかし、一般的なうつ病では、眠れない・食欲がないといった代表的な症状が出ますが、冬季うつ病では、逆に、睡眠時間が長くなる・食欲が増するといった症状が出やすくなります。
例えば、冬の間、朝起きるのがとても辛くなり、日中にも眠気を感じることが多くなる、また、チョコレートなどの甘いもの、菓子パンなどの炭水化物食品に対する食欲が非常に強くなる、といった症状です。加えて、運動量が低下しがちであるなため、太りやすくなります。
このような症状が強く出ていて、日常生活に支障をきたす状態が2シーズン以上続くようなときは、冬季うつ病の可能性があります。
冬季うつ病は季節性のもので、冬以外の季節は健康な状態である人が多いです。また、20代くらいの比較的若い女性が罹りやすくと言われています。
毎年繰り返し症状が出る場合、症状が重たく日常生活に支障が出るほどであるときは、精神科や心療内科など専門の医療機関に相談すると治療につながることもあります。一度相談してみてはいかがでしょうか。
(3)冬季うつ病のメカニズム
冬季うつ病の発症は、日照時間と深く関係していると考えられています。
人間は、朝起きて明るい太陽の光を浴びると目から脳に信号が伝わり、脳内で働く神経伝達物質の一つ「セロトニン」の合成が活発になります。すると、「メラトニン」という睡眠に関係するホルモンの分泌が抑制され、体内時計が調整されます。
ところが、十分に太陽の光を浴びることができないと、「セロトニン」の合成が促されず脳の活動が低下し、「メラトニン」が正常に分泌されなくなり、体内時計が狂います。
こうして、睡眠リズムが乱れ、疲れやすい、食欲が抑えられない、気力が落ち込む、といった症状が現れやすくなるという仕組みです。
日照時間の短さが冬季うつ病の原因であると考えられています。このため、降雪などで冬季の天気が悪い地域では、冬季うつ病に罹る人が多いと考えられています。
実際に、緯度が高く冬の日照時間が極端に少ない北欧では、冬季うつ病は一般的な病としてよく知られています。
(4)規則正しく生活し、明るく過ごしましょう
健康づくりのために日常生活で行っていることを少し意識することで、冬季うつ病は予防・改善することができます。
以下の対策を取り入れて、寒い冬を明るく元気に過ごしましょう。
(1)規則正しく生活し、太陽の光を浴びましょう
朝起きて、太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされます。
太陽の光を浴びることが難しい場合は、部屋の照明を明るくするなどして目から光を取り込み、セロトニンとメラトニンの活動を調整しましょう。
(2)トリプトファンを摂取しましょう
セロトニンが不足すると、メラトニンも上手に働かなくなります。セロトニンは「トリプトファン」と呼ばれる必須アミノ酸を原料に作られますが、「トリプトファン」は人間の体内では作り出すことができないため、食事で摂取することになります。
「トリプトファン」はタンパク質に含まれます。体内吸収を助ける食材と組み合わせた食事メニューを考え、いつもの食事に追加してみましょう。
- トリプトファンを含む食材
肉類、魚介類(ぶり、いわしなど)、豆腐、のり、バナナ、牛乳、チーズなど - トリプトファンの吸収を助ける食材
ビタミンB6(まぐろ、にんにく、鮭、ごま、抹茶など)
ビタミンB12(青魚、かつお節、いか、レバーなど)
(3)手軽な運動から取り入れてみましょう
運動すると、脳から抗うつ作用のあるホルモンが分泌されることが明らかになっています。屋外で行える運動があれば、日光にあたることもできます。
晴天時のウォーキングはもちろん、スキーやクロスカントリー、スノーシューなど、魚沼地域でできる運動を行ってみてはいかがでしょうか。ゆっくりと雪上を歩くクロスカントリーは、高齢者も参加しやすく、長く続けやすいというメリットもあります。
一方、外で運動する機会を取ることが難しい人は、家事や部屋の片付けで積極的に体を動かすなど、日常的にできることから始めてみましょう。