ページ番号を入力
本文
当所では、マツノザイセンチュウ(以下、センチュウ)抵抗性品種の開発等を目的として、毎年マツの苗木にセンチュウを接種する検定(以下、接種検定)を実施しています。検定材料は、構内のクロマツ(一次検定合格木)から採取する場合もありますが、今年度はマツ枯れ被害が進行した林分に残存する個体(以下、候補木)から種子を採取する「現地選抜」を実施する予定です。今回は、現地選抜の手順について紹介します。
検定材料の収集は、森林総合研究所林木育種センターの品種開発実施要領に基づいて行います。候補木は、広範囲でマツ枯れ被害が発生している林分から、健全な上層木(クロマツ)を選抜します。樹形が著しく劣るものや、病虫害、気象害などの影響を受けているものは除外します(写真一)。
候補木は、後年の追跡調査が可能となるよう位置情報を記録します。過去に収集した地域で再度収集を行う際は、重複しないよう十分に確認する必要があります。
写真一
これまで収集を行っていなかった地域を新たな候補地として選定し、地域機関から被害林分に関する情報提供を受けます。候補地を絞り込んだ後は、現地で候補木を探索します。
現地では、候補木の樹高や球果の着生状況を確認します。球果が多く着いている個体は、将来的にも安定した採種が期待できるためです。一方、樹高が十二メートルを超える個体は球果採取が難しくなることから、候補木から除外します。
激害地に一本だけ残ったマツは、高い抵抗性が期待できます。しかし、周囲にマツがない場合、結実した種子は自家受粉である可能性が高く、発芽率や苗木の健全性に影響することも考えられます。そのため、数本のマツが残存する林分から候補木を選抜する方が望ましいと考えています(写真二)。
写真二
候補木を選抜した後は、森林所有者の承諾を得て球果を採取します。充実種子が得られた場合は翌年に播種し、三年間育苗した後に接種検定(一次検定)を行います。生き残った個体を定植し、穂木が採取できる大きさまで四~五年間育苗した後、穂木を国に送付し、接種検定(二次検定)により抵抗性品種の登録候補となるか判定されます。品種登録までには十年以上を要する長期的な取組です。
現在、当所で選抜した抵抗性クロマツの登録品種数は十六品種となっています。今後も、より高い抵抗性を持つ品種の開発を目指して取り組んでいきます。
森林・林業技術課 阿部 紋郁