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当研究所ではエノキタケの品種開発を行っており、新品種「雪ぼうし」が誕生したことは、既に皆様の知るところと思います。しかし最近、この「雪ぼうし」開発当初と市場や生産者の求める品質が変化してきました。そこで「雪ぼうし」に継ぐ品種を開発するべく育種や試験栽培を繰り返したところ、実用性の高い系統を2つ選抜できたので、ここに紹介いたします。
まず、現在求められている品質ですが、これには、スーパー等の販売先や消費者の要望が強く働いています。これまではどちらかというと「茎が細くて、傘が小さく、スラッとしている」ものが求められていました。しかしこれらは、見た目の良さや包装のし易さから生産者や市場が好んでいたもので、そこに消費者の要望は含まれていませんでした。まあ、エノキタケは品種が少ない上に、各々の違いもわかりにくいため、消費者は選びようもなかった訳ですが。しかし、他県で「株元が太くてしっかりしており、日持ちが良い」という、従来品種にはない特徴を持った新品種が開発されました。その結果、販売先や消費者もこの特徴、特に「日持ちの良さ」を求めるようになりました。この要望は市場を通じて生産者に届き、県内の生産者は品種変更の必要に迫られました。
さて、このような状況の中、当研究所で選抜された2系統は次のような特徴を持ち、生産現場での試験栽培でも高い評価を得ることができました。
これらのうち1~3については、従来品種にはない、現在求められている品質です。4の収量性に関しても、従来品種に比べ、2割近い収量増が確かめられています。最後の5ですが「茎が細い」従来品種よりも歯応えが良いため、この「茎の太さ」を利点としてアピールできないかと考えています。
今回選抜された系統のうちの一つ。茎が太くて食感が良い。
現在県内では、先に述べた他県産の品種が主流を占めるようになっていますが、この品種も従来品種と同様に「茎が細い」形質です。しかし、今回選抜された系統は「茎が太い」というこれまでにないタイプであるため、差別化が図れると思います。そして、今までと違う特徴を持たせることで、消費者が選ぶ機会をつくることが出来るのではないかと考えています。どちらのタイプが好みかは、人それぞれでしょうが、他品種と競争するためには何らかの差異があった方が有利だと思います。
今のところ、選抜された2系統に目立った違いはないのですが、より優れた1系統を選び、品種登録申請をする予定です。近い将来、皆様の食卓に当研究所の開発したエノキタケが並ぶことを願っています。
きのこ・特産課 武田綾子