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本誌2006年9月号の林業行政情報で県内産ブナ苗木の安定供給にむけた取り組みが紹介されました。今回はその種子生産量調査の結果をお知らせします。
2005年に母樹林候補地として調査した林分は表1のとおりです。
落下種子は各調査林分に20基ずつ設置した種子トラップ(じょうご状の網)で採取しました。10月から12月にかけて、約二週間ごとに落下種子を回収し、健全、シイナ、虫害、獣害に分類して数を記録しました。充実種子は、乾燥して重さを測定し、平均値を算出しました。
その結果、どの林分の落下種子量も過去の調査例と比較して、大豊作であったことを示していました(表2)。
表1 調査した林分と調べた林分因子
毎木調査で平均樹高、平均胸高直径、幹密度、株密度、総樹冠面積(楕円近似)、総樹冠体積(円柱近似)、胸高断面積合計を求め、落下種子密度数に影響を与える林分因子を調べました(表1)。
その結果、総樹冠体積密度との間に強い正の相関関係がありました(図1)。したがって樹冠体積が大きい林分ほど落下種子数は多くなることが明らかになりました。しかし、これ以外の林分因子との関係は認められませんでした。
単木あたりに平均した樹冠体積と落下種子数との間には有意な関係は認められませんでした。これまで単木では、胸高直径や樹冠の大きな木が多くの種子をつける等の報告がありましたが、林分単位でみた場合には単純にはあてはまらないようです。
一方、充実種子の重さは株密度、幹密度との間で相関がありました。すなわち、林分の株数が多いほど充実した大きな種子が期待できると言えます。その理由として、株数が多いと効率良く他家受粉が行われるので、健全種子が増えると考えられます。
表2 種子の量と質
翌年に発生した実生密度数は落下種子密度数、充実種子密度数との間に有意な相関がありました。落下種子が少ないと野ネズミなどにほとんどが食べられてしまいまいますが、大量に種子が落下したことによって、食べられた種子よりも生き残った種子がはるかに多かったと考えられます。豊作の翌年であれば山引き苗の育成は可能と言えます。
今回の調査結果から“豊作“のブナ二次林では
ことが明らかになりました。これらの結果は、今後のブナ種苗の供給予測に応用できます。
一方、単木あたりに平均した樹冠体積と落下種子数との間には有意な関係は認められませんでした。これまで単木では、胸高直径や樹冠の大きな木が多くの種子をつける等の報告がありましたが、林分単位でみた場合には単純にはあてはまらないようです。しかし、豊作以外の年で同様の関係が成り立つかどうかは不明であり今後の課題です。
なお、この調査は新潟県が新潟大学農学部紙谷智彦教授と共同で行ったものです。本文は、同研究室の鶴田尚人氏の卒業論文を元に、まとめさせていただきました。種子の回収、林分調査にご協力頂いきました皆様に心よりお礼申し上げます。
図1 樹冠体積と落下種子の関係
森林・林業技術課 塚原雅美