ページ番号を入力
本文
本年は、林業試験場から森林研究所と名称が変わってから十周年となります。十年一昔といいますが、この十年間に開花した研究成果について三つほど紹介します。
昨年、偶然にもほぼ十年前に林業担当だった元財政課の二人と話す機会がありました。彼ら曰く「あの当時は研究所の成果が見えず、査定は本当に困った。でもようやく見えるようになった」と。そう言えば某農林水産部長が、研究所なんてつぶしてしまえと言ったとか、言わなかったとか。
昨年は抵抗性アカマツ苗とエノキタケ新品種「雪ぼうし」がそれぞれ市場にでました。
抵抗性アカマツ「にいがた千年松」は知事が命名し、約二万本の苗が生産されました。県内各地から選抜した五八系統を使い、暫定採種園を当所構内に造成し、研究を重ねてきた成果です。今後は抵抗性の強い系統に絞り込む計画です。
にいがた千年松の採種園
雪ぼうしは当県四代目のエノキタケ登録品種で、専門学校生西脇さんがイメージキャラクターをデザインしてくれました。雪ぼうしはこれが印刷された袋に入って市販されています。今後は更なるコスト低減を目指して、栽培条件の適応性が広く、多収量の品種開発を進める予定です。
千年松も雪ぼうしも市場にでるまでに長い年月を要しました。特に千年松のような林木育種は苗の成長に時間が掛かり、15年位は必要です。
一方雪ぼうしは研究者が多いほど目的にあった品種を早く開発できますが、当所では限られた数の研究員で15年の年月を要しました。
これら育種の研究は、研究の積み重ねが重要で、たまたま昨年は成果が現れたまでです。先輩方の研究の継続が無ければ開花しなかったのです。
三つ目は木材研究です。平成12年に県工業技術総合研究所(新潟市)に分室を設置しスタートしました。
この間に、県産スギの強度特性、人工乾燥技術、スギ合板の曲げ特性、スギ製品の耐久性など次々に調査結果を発表してきました。
特に実大材による曲げ強度特性は福島県など他県の研究施設を借用しての試験であり、研究員にはつらい思いをさせてきました。その成果はスパン表や越後杉ブランド認証などに役だっており、震災復興のお手伝いができたものと思っています。
「雪ぼうし」イメージキャラクター デザイン:西脇奈央子
エノキタケ優良品種の開発(接種作業)
このように昨年は、研究所の顔が見せられた記念すべき年ではなかったかと思っています。これも研究所を暖かく見守ってくださった皆々様のお陰と感謝申し上げます。
今年もご支援を賜りますようお願いし新年のごあいさつとします。
森林研究所長 保科孝且