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かつて、海岸クロマツ林やそれに続くアカマツ林は、落ち葉などが燃料や肥料として利用され、たくさんの食用きのこが出ていたようです。現在は広葉樹が繁茂し、食用きのこも見ることができなくなりました。昔の林にするためには、何をすればよいのでしょう。
海岸林には飛砂防備、防風等の役割を期待しており、
などから、汀線(ていせん)に近い部分には塩に強いクロマツ、内側にアカマツなのです。
マツは根に菌根菌をつけています。菌は根を鞘(さや)状に覆って、病気から守ったり、土中に広く菌糸を伸ばして、水分やミネラルを集めてマツに与えています。逆にマツの方は、光合成で作った養分を菌に与えています。この二つは仲の良い夫婦のように見えますが、環境変化に応じて、菌の種類を変えてしまいます。
落ち葉は腐ると土壌が肥沃になります。すると、菌は養分の少ない所に適したものから多い所に適したものに移り変わります。また、落葉広葉樹なども侵入して、肥沃な土壌の好きな彼らの方がより大きく成育します。
侵入してきた広葉樹だけを取り除くと、マツの成育は良好ですが、健全とは言えないようです。人間の肥満と同じで、病気にかかりやすいのです。つまり、肥満になるのを防ぐには落ち葉掻きです。
若いマツには、コツブタケやショウロが、腐植層が溜まってくると、食用になるハツタケ、アミタケ(写真1)などが、さらに大きくなるとシモコシなどが出るようになります。さらに腐植層が厚くなるとヌメリササタケなどのきのこが発生するようになり、アミタケなどは徐々に出なくなってしまうのです。つまり、かつて海岸マツ林で食用にしてきたきのこは、腐植層が少し溜まったくらいに棲みつくきのこなのです。
柏崎刈羽原子力発電所構内のアカマツ林できのこの発生環境改善施業として腐植層の除去などを行う試験をしました。菌根菌のうち傘をもたないカベンタケなどを除くと、菌根菌発生本数のうち食用に適するシモコシ、アミタケなど七種の本数割合は全体の約37%でした。
構内では以前から小型のバックホーを用いて腐植層を除去しており(写真2)、1年後にはアミタケが発生し、2年後には増加していました。機械を使っての作業は、一見無謀とも思えますが、昔のマツ林で行っていたような継続的な落ち葉拾いに代わる方法としては有効です。
今年も海岸マツ林の手入れなどを行う活動が予定されています。人力で腐植層の除去を体験してみませんか。
写真1 食用になるアミタケ
写真2 腐植層を除去し、きのこの発生をうながす
きのこ・特産課 松本則行