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新潟県は全国上位のきのこ生産県であるため、排出される廃菌床が多く、平成22年には約15万トンの廃菌床が発生しています。この廃菌床の多くは燃料や堆肥として処理されていますが、堆肥は施用時期が限られていることや稲作では多くの堆肥を必要とするわけではないため、堆肥として処理される量は限られています。そのため県外の処理施設まで搬出されることもあり、きのこ生産者の経営を圧迫する要因のひとつになっています。
このような背景から平成23~25年の三年間、新潟大学(工学部、農学部)、新潟県(農業総合研究所、森林研究所)、(株)三高土木が共同で十日町市をモデルとして「キノコ栽培廃菌床からのエネルギーと肥料の同時生産」に取り組みました。この試験課題の中で、森林研究所では熱需要の多い冬期まで廃菌床を保存すると共に、よりハンドリング性の良い燃料に加工するためにエノキタケ廃菌床のペレット化にとりくみました。
エノキタケにはスギおが粉等木質資材とコーンコブミール等非木質資材の二通りの培地があります。そこでまず培地資材別の燃料特性を検討しました。
図1には木質資材と五生産者の非木質資材の廃菌床の灰分と発熱量を示しました。木質資材の廃菌床の灰分は概ね5パーセント、発熱量はキログラム当たり約4700キロカロリーで、樹皮ペレットとほぼ同じ燃料特性となっています。しかし、非木質資材の廃菌床の灰分は10パーセント以上あり、燃焼には多い灰に対応した特殊な機器が必要になると考えられます。
次にエノキタケ廃菌床を原料に間伐材に適したダイスを用いてペレット製造を行い、製造したペレットについて「木質ペレット品質規格」の基準に照らし合わせ、品質を検討しました。
木質資材の廃菌床ペレットはかさ密度がやや高い傾向があるものの、原料の水分を調整することで水分10パーセント以下と機械的耐久性97.5パーセント以上の基準を満たすペレットを製造することができました。しかし、非木質資材の廃菌床ペレットは木質資材の廃菌床ペレットと比較すると機械的耐久性が低く、基準の97.5パーセント以上を満たすペレットを製造できませんでした。
そこでより圧縮率の高いダイスを用いてペレット製造を行い、機械的耐久性を検討しました(図2)。その結果、間伐材に適したダイスよりも機械的耐久性が向上し、ペレットの水分が15パーセント前後で97.5パーセント程度の機械的耐久性が得られました。しかし水分が10~12パーセント以下になると機械的耐久性が急激に低下していました。したがって圧縮率を高くしても、水分と機械的耐久性の基準を同時に満たすペレットは製造できませんでした。そのためスギおが粉等のバインダー(接着剤)を添加して機械的耐久性を高める必要があると思われます。
図1 エノキタケ廃菌床の燃料特性
図2 廃菌床ペレットの水分と機械的耐久性
森林・林業技術課 武田 宏