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かつて薪炭林だったブナ二次林に用材としての活用が期待されるようになってきました。広葉樹用材は太りが早いほど品質が良くなるため間伐は有効です。そこでその効果的な方法についてご紹介したいと思います。
広葉樹の間伐は立て木仕立て方式による上層間伐(図)が基本です。これはヨーロッパに発祥し世界に広く行き渡っている方法で、日本には1940年代に導入されました。主木仕立てとも言います。
図 広葉樹林の上層間伐と成長の模式図(Smith 1997の図を元に作成)
上段は間伐直後の状態(立て木候補木は濃いグレー、伐り木は破線)。下段右側は間伐により立て木が成育した状態。
特徴は、最終の収穫対象となる立て木候補木を選び、その成育を妨げる隣接木を伐り木とすることです。条件に見合った木がない場所は伐り木を選ばず残し、優れた木が隣接していたらどちらかを伐り木として周囲が開けるようにします(写真)。
写真 立て木候補木の周囲が開けた様子
立て木の条件は、優勢で樹冠が均等に発達し、幹が通直で傷がない形質優良木であることです。初回間伐では最終収穫時の密度の2、3倍を目安に選びます。イギリスの最終収穫時の密度や日本の密度管理図(東北地方ブナ)などから類推すると1ヘクタール当たり300~600本程度が妥当なようです。
魚沼市の大白川生産森林組合は1976年からブナ林施業を進めてきました。その山の神ブナ林での記録では、初回は1ヘクタール15,000本を約3,000本に、ついで1995年に300本程に仕立てたとされます。その結果現在は用材収穫期に入り、利用の取り組み、スノービーチプロジェクトが進められています。
また糸魚川市の槇集落林(現在糸魚川私有林)では1989年に地権者や糸魚川林業事務所(当時)らにより、間伐効果の実証試験地が設定されました。1ヘクタール300本に仕立てられた試験区では施業効果が現在も続いており、全国にも貴重な実証データが継続調査により得られています。
立て木仕立て方式は、林分状態にあわせて応用でき効率的な方法とされています。下層木は本来伐らないのですが、先の実証事例では作業の安全のため下層木も伐採していました。ブナはきのこの菌床栽培用のオガ粉原木としても有用ですので下層木の利用も期待できるかもしれません。ただし、広葉樹の伐倒は掛り木になりやすく大変危険なので熟練者の指導は必須です。
最後になりましたが、調査地の設置、調査にご協力をいただいております大白川生産森林組合、糸魚川市、糸魚川地域振興局、新潟大学の関係各位に厚くお礼申し上げます。
森林・林業技術課 塚原雅美