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今年はブナに沢山実がついていますので、この機会にブナの種子の特徴、育て方などをおさらいしてみましょう。
ブナの種子(写真)は落葉の頃に落ちて来ます。その数は豊作年であれば1平方メートルあたり数百から千粒ほどにもなり、翌春にはあたり一面芽生えます。翌年以降に遅れて芽生えるものはありません。その代わり稚樹は成長できなくてもしばらく生き続けることが出来ます。そしてその間に親の木が倒れれば後継木として伸びて行きます。木が倒れて明るくなったところでは沢山の植物が生い茂っているため、そうなった後に落ちた種子は芽生えても負けてしまうようです。豊作の間隔は4、5年程度、そして約10年に一度は大豊作があるとも言われます。
このような発芽の特徴から、種子を保存するのはやや厄介です。乾かし過ぎれば枯れ、湿らせておけば発芽してしまいます。冷凍技術もありますが(本誌平成17年8月号)、種子を採ったらなるべく早く撒いて稚樹にしてしまうのが得策でしょう。稚樹は比較的丈夫で2、3年で丁度良い苗になりますし、根切りで大きさの調整も出来ますし(本誌平成22年6月号、23年11月号)、枝を切り戻しても良いと思います。
種子は樹冠の下にネットを仕掛けるなどすると効率よく拾えます。道路の上に落ちた種子を掃き取ることもあります。新潟県では県内各地に母樹林を指定し、地元産の苗を作れるようにしています(本誌平成18年11月号、平成24年8月号、平成28年9月号参照)。
植林の課題は下刈り時の誤伐です。適度に間伐されたスギの林内や林縁などではそれが楽なので、これからは小面積伐採など育てやすい環境を作りながら植林する方法を考えると良いのではないかと思います。
いかがでしょうか?数年に一度の貴重な機会です。ぜひブナ林を訪れ種子に触れて見てください。ただし実を食べに来た熊に出会わないようくれぐれも気をつけて下さいね。
※本文中に引用したバックナンバーは森林研究所のホームページから参照できます。
ブナの実。この中に種子(枠内)が二つずつ入る(平成30年7月魚沼市にて撮影)
上:林床の芽生えの様子(平成18年7月魚沼市にて撮影)
下:苗畑での芽生えの様子(平成24年7月十日町市にて撮影)
森林・林業技術課 塚原雅美