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新潟県では、海岸松林を守るために、松くい虫被害に抵抗性のある「マツノザイセンチュウ(以下ザイセンチュウ)抵抗性クロマツ」の開発に取り組んでいます。
今回は、その開発に欠かせない接種検定の概要と、現在の開発状況および今後の試験研究について紹介します。
【抵抗性マツとは】
松くい虫被害の原因となるザイセンチュウに対する抵抗性があると認められたマツを抵抗性アカマツ・クロマツと呼びます。
抵抗性アカマツは、クロマツと比べてザイセンチュウに対する抵抗性が高く、にいがた千年松として普及していますが、海岸の一番海に近い過酷な場所で生育できるのはクロマツなので、抵抗性クロマツの開発が求められているのです。
【接種検定】
抵抗性マツとして認められるには、2つの要件があります。
1つ目が、県で実施する「一次検定」です。2~3年生の苗木に傷をつけ、その傷口へ森林研で培養したザイセンチュウを定量流し込みます。これを「接種」といいます。翌年もう一度接種し、枯れなかったものが「一次検定合格木」となります。
2つ目は、林木育種センター(注)で実施する「二次検定」です。一次検定合格木を接ぎ木で20本以上増やし、それに接種し、生き残り率を統計処理します。その結果、優良種苗として「認定」されれば「抵抗性マツ」となります。
苗木に付けた傷口にザイセンチュウを0.1cc流し込んでいる。
【新潟県の抵抗性クロマツ】
接種検定を経て、抵抗性クロマツと認められた品種は、県独自で開発したものが13品種あります。それ以外に、国など他機関で開発されたものも加えて、現在、採種園を造成し、令和3年より種子供給を開始する予定です。
【今後の試験研究】
認定された抵抗性クロマツはザイセンチュウに強いのですが、その「子供」はわかりません。蛙の子は蛙と言いますが、鳶が鷹を生むとか、氏より育ちとも言います。種子で普及する以上、種子由来の苗木=「子供」の抵抗性を把握する必要があります。そのため、抵抗性クロマツ同士の種子から苗木を作り、それに接種して「弱い子供を生産する抵抗性クロマツ」を炙り出そうとしています。また、子供が強いものを選ぶことで親の数が減りすぎると、多様性が失われ種子生産に支障が出るため、数が減りすぎないように、抵抗性クロマツを開発しつづける必要があります。
抵抗性クロマツの開発とその種子の品質向上のために、今後も接種検定を繰り返していく予定です。
森林研究所と村上地域振興局の応援も含めて、10人以上で1000~1500本程度接種する。
注:(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センターの略
森林・林業技術課 番塲由紀子