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近年、低コスト再造林の手法の一つとして「コンテナ苗」を活用した「伐採と造林の一貫作業システム」が導入されつつあります。新潟県森林研究所でも平成26年度から試験的に「コンテナ苗」を植栽し研究を進めてきました。以前にも「コンテナ苗」は効率的に植栽できること(2016年5月号)2成長期後の生育状況は緩傾斜地では裸苗と同等であること(2017年5月号)等を紹介してきました。
今回は、3成長期後のコンテナ苗の生育状況について調査結果をお知らせします。
今回の調査地は、村上市高根地内の2箇所(村上1と村上2)でいずれも積雪量が1メートル以上の多雪地です。
コンテナ苗の生育状況(村上2中傾斜地・令和元年11月撮影)
生残率の結果は、緩・中・急いずれの傾斜地でも裸苗と同程度であり、幹折れ等の被害は裸苗より少なく、コンテナ苗が幹折れ等の雪害に弱い傾向は見られませんでした(表)。
表 各調査地の3冬期後の生残率と雪害状況
調査地 |
傾斜区分 |
植栽日 | 最終 調査日 |
総数(本) | 枯死(本) | 生残率(%) | 幹折れ・梢端折れ(本) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
裸苗 | コンテナ苗 | 裸苗 | コンテナ苗 | 裸苗 | コンテナ苗 | 裸苗 | コンテナ苗 | ||||
村上市1 | 緩 | H27年6月 | H30年6月 | 90 | 90 | 2 | 2 | 97.8% | 97.8% | 11 | 5 |
村上市2 | 中 | H28年5月 | R元年5月 | 58 | 59 | 1 | 3 | 98.3% | 94.9% | 2 | 1 |
村上市2 | 急 | H28年5月 | R元年5月 | 29 | 24 | 0 | 0 | 100.0% | 100.0% | 0 | 0 |
* 下刈りによる誤伐は総数から除外した
* 傾斜区分は、緩:約10°,中:約20°,急:約30°
形状比(樹木の形態を表す指数で「樹高/根元径」)は、植栽当初は数値が高く徒長気味であったコンテナ苗ですが、いずれの傾斜地でも植栽から年数が経つに従い、その数値は徐々に低くなり裸苗との差が小さくなりました(図)。
図 植栽から3成長期後までの形状比の変化(エラーバーは標準偏差)
今回の調査結果から、生残率や幹折れ等の被害については、コンテナ苗は裸苗と遜色はなく、形状比についても差が小さくなり裸苗と同じように生育していることが分かりました。
植栽作業を省力化できる「コンテナ苗」については、生育調査を継続していますので、今後も調査結果について随時報告していきたいと思います。
きのこ・特産課 涌井克彦