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森林施業・経営計画の立案には森林の詳細な情報が必要であり、特に伐期を迎える林分において、立木単位の幹材積や位置情報等の詳細な情報を得ることができれば、伐採・搬出にかかるコストと収益を計算することができ、より確実な計画の立案が可能になります。しかし、現地調査には多くの人員と時間が必要であり、調査対象が広域になるほどその実施は困難になります。
そのため、現地調査における効率的な毎木調査の手法として、地上型レーザースキャナーによる計測(以下、地上レーザー計測)が近年注目されており、当所でも昨年度、スギ人工林現地調査において地上レーザー計測を実施したので、その結果を報告します
森林における地上レーザー計測では、その名のとおり林内でレーザーを照射して、得られた三次元データ(点群データ)を解析することで立木の樹高、胸高直径、位置、形状(曲がりや高さごとの直径)、地形及び林内の三次元画像等のデータを得ることができます。
地上型レーザースキャナーは、一定時間林内に設置して測定する据置き型と、林内を歩行しながら連続して測定する歩行型の二つのタイプに大別されますが、当所では据置き型のOWL(アウル:アドイン研究所)という機器(図1)を使用し、地上レーザー計測データと、直径巻尺、測高器による毎木調査データを比較しました。
図1 OWL本体(左)とOWLで取得した林内の三次元画像(右)
毎木調査データを実測値、レーザー計測データを推定値として、樹高、胸高直径を比較した結果、樹高は平均で4.8mの過小推定となり、胸高直径は平均で1.5cmの過大推定となりました。
樹高が過小推定されることは他県の事例でも報告があり、樹冠に遮られる等の理由で立木の梢端部までレーザーが照射されないことが要因として考えられています。
胸高直径は平均では過大推定となったものの、単木でみると36cmの過小値や17cmの過大値がみられました(図2)。誤差が大きかった立木は、幹の周辺で下層植生が繁茂していた個体が多く、それにより樹幹が正しく認識されなかったためと考えられます。
図2 樹高(左)及び胸高直径(右)の実測値と推定値の関係 (調査本数:57本)
巻尺や測高器を用いた従来型の毎木調査では複数の調査人員が必要となりますが、地上レーザー計測では一名でも操作、データ取得が可能であり、調査時間及び人員の削減につながります。今後は地上レーザー計測に、本誌2021年5月号(823号)でも紹介したドローンによる空撮を組み合わせ、効率的で精度の高い計測方法を検討していきたいと考えています。
きのこ・特産課 伊藤 幸介