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新潟県では平成11年から無花粉スギの研究を続けています。既に流通している無花粉スギさし木苗は、無花粉スギ原種と複数の新潟県精英樹を掛け合わせて開発された100品種の総称であり、これらの成長等の性質は今も調査中です。
そして、現在は無花粉スギを実生苗で供給するための研究に取り組んでいるので、これまでの成果と内容を紹介します。
無花粉形質は、雄性不稔遺伝子が一対揃った時に現れます(図1)。そして、この雄性不稔遺伝子は4種類発見されており、全国のスギ林でこれらの遺伝子を持つ無花粉スギ原種が選抜されていますが、どの県でも1種類又は2種類しか見つかっていません。
そのような中、唯一新潟県では全ての原種が発見されています。さらに、その後の長年の研究により、雄性不稔遺伝子をヘテロ接合体で保有する(可稔の遺伝子と不稔の遺伝子を対で持つ)個体を新潟県精英樹の中から複数個体見つけることができました(注1)。これらの経緯から、現状では新潟県が全国で最も多く雄性不稔遺伝子の育種素材を持っていると考えられます。
一般的に品種改良を行う際には近交弱勢(近親により次世代の成長や耐性が低下すること)を避けるために、複数個体を育種素材とする必要があります。新潟県では、これらの豊富な育種素材に加え、先述の無花粉スギさし木苗等も合わせて幅広く交配材料として活用することが可能なことから、多様な無花粉スギの作出ができるようになりました。
最終的には、雄性不稔遺伝子を持つ育種素材を数世代交配に用いることで、全体の75%が無花粉スギ実生苗となる、効率的な種子生産を目指しています(図2)。そのため、この生産に最も重要なダブルホモ個体(図2の第3世代)を選抜中ですが、多種類を選抜するには大変に時間を要します。そこで、これまでの研究過程で得た育種素材の中に第3世代の親として使用できる個体が他にもないか確認する試験も同時に行っています。
さらに、実際に実生無花粉スギ苗を生産する将来を見据えて、令和元年度から効率的な交配方法の試験も開始しています。このように無花粉スギの活用にはどうしても手間が掛かってしまいますが、新潟県にとってより良い種子生産ができるよう研究を進めて参ります。
森林・林業技術課 伊藤
注1:
日本森林学会誌(2021年第103巻)に短報が掲載されました。
「MALE STERILITY 1とは異なる雄性不稔遺伝子を持つスギの選抜」
(平山 聡子, 岩井 淳治,樋口 有未,金子 岳夫, 森口 喜成)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfs/103/2/103_161/_article/-char/ja/<外部リンク>