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森林研究所たより マツノザイセンチュウ品種・接種頭数と生存率の関係(林業にいがた2022年8月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:1952202208 更新日:2022年8月1日更新

1 はじめに

マツノザイセンチュウは体長約1ミリメートルで、マツノマダラカミキリとの共生関係によってマツ枯れを起こす原因線虫です。全国から様々な線虫が採取され、採取地域の名がついた品種もあります。現在は、事業的に接種する場合(注1)にも用いられる「島原」と、抵抗性個体の選抜に利用される枯らす力の強い線虫「Ka4」などの品種があり、研究分野では線虫品種を区別して取り扱っています。

2 線虫別の枯損能力の把握

研究所では抵抗性の高いクロマツの選抜を進めているため、近年接種する線虫は「Ka4」だけでした。「島原」で接種試験を行った知見があまりないため,今後、事業での線虫接種が検討されている「島原」の接種頭数や予測される生存率について把握しなければなりません。また一方で、「Ka4」の10000 頭接種は今までに20交配1200本ほどが試験され,十分なデータが蓄積されてきています。このデータを「島原」に置き換えて、接種頭数を任意に変えて換算できる方法はないものでしょうか?これはロジスティック回帰分析という手法を用いることで解決出来ると考え、そのための接種試験を行うこととしました。

3 接種試験の概要

接種試験用のクロマツは、枯れすぎても枯れなさすぎても良いデータが得られないため、適当な抵抗性のあるクロマツ母樹を選ぶ必要があります。今回は種子が大量に採れた一次検定合格木の上越8-1号を選びました。この種子を3年苗まで育てます。接種線虫は「島原」、「Ka4」の2種類、接種頭数は4種類(1000頭、2000頭、5000頭、10000頭)の計8パターンとなり、各パターン60苗ずつ線虫を接種し生存・枯損を調査しました。

4 結果

それぞれの生存率からロジスティック回帰分析を行ったところ、線虫品種ごとに図1のような曲線グラフと曲線式(注2)が得られました。このグラフから、線虫は接種頭数(注3)が多くなるほど枯れやすく、「島原」より「Ka4」の方が枯れやすいことも確認できました(表1)。

ロジスティック曲線

       図1 線虫接種頭数別生存率(横軸は対数軸)

 

表1 線虫・接種頭数別生存本数および生存率
線虫
品種
  接種頭数区分
  1000頭 2000頭 5000頭 10000頭
島原 生存本数 44 38 19 16
実測生存率(%) 73.33 63.33 31.67 26.67
推定生存率(%) 74.19 59.03 36.64 22.47
Ka4 生存本数 29 17 8 5
実測生存率(%) 48.33 28.33 13.33 8.33
推定生存率(%) 46.95 30.73 15.11 8.19

                            (接種本数は全て60本)

データと曲線式の適合も良いことから、「Ka4」を接種した生存率データを用いて「島原」を接種した場合の生存率推定に活用出来そうです。

5 おわりに

この研究は、上越8-1号の1家系だけで回帰分析を行いましたが、選んだクロマツ家系の抵抗性の違いにより得られる結果は異なるものと想定されます。今後別の家系を用いた試験を進めたいと考えています。

 

注1:例えば九州や静岡県で行われている、線虫接種した生存マツ苗を販売する場合
注2:曲線式の詳細は省いた。興味のある方は研究所にお問い合わせください
注3:グラフでは接種頭数を対数変換した値を横軸として用いている

 

 

森林・林業技術課 岩井淳治

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