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必要強度を満たす製材品の効率的な生産には、丸太の段階から強度性能で選別することが有効と考えられます。丸太の強度の指標となる縦振動ヤング係数(以下、Efr)の測定は、寸法(材長・両端の直径)、重量及び自由に振動できる状態での固有振動数の測定が必要です。このうち、重量及び固有振動数の測定は、製材工場での実施は困難と想定されます。そこで本研究では、寸法(材長)と椪積み状態の丸太の固有振動数のみを測定する選別方法を検討しました。
丸太の寸法(末口径、材長)は事前の検知で把握済みな場合が多いと想定されます。したがって、椪積み状態のスギ丸太を打撃して得られる固有振動数で強度性能を選別できれば使い勝手がよいと考えました。このため、椪積み状態での丸太の1次から4次までの固有振動数(以下、Fc1〜Fc4)と、丸太を吊り上げた状態で得た固有振動数(以下、F1)及びEfrとの相関性を確認し、得られた回帰式から選別基準を作成しました。さらに、作成した選別基準の精度を確認するため、別試験体を用いて選別基準の正解率を算出しました。
固有振動数の測定にあたっては、専用機器であるFFTアナライザに加え、スマートフォン用の無料アプリケーション(以下、無料アプリ)を採用しました。この無料アプリは本試験で行う用途の専用アプリではないことから、周囲の雑音で数値が更新されるなどの特徴がありますが、より安価な測定方法を模索するため採用しました。
椪積み状態の固有振動数のうち、Fc2がF1と最も強い相関がありました。さらに、Fc2はEfrとの相関でも最も強いことを確認しました(図)。このため、Fc2を選別基準に用いる固有振動数とし、Fc2とEfrの関係から得られた図の式により、選別基準を作成しました。
この選別基準により、丸太のEfr等級を区分したところ、予測等級と実測等級が合致した丸太は18体中12体あり、正解率は約67%でした。
固有振動数の測定
図 椪積み状態での固有振動数(Fc1~Fc4)と縦振動ヤング係数(Efr)
※ rは相関係数を示し、値が±1に近いほど相関が強い
専用機器ではない無料アプリでも正解率6割以上の結果が得られましたが、前述のとおり雑音により数値が更新されるという非効率な一面を確認しました。この点では、専用機器を用いることが効率的なEfrの推定に繋がりそうです。今後は、選別基準の精度向上のための丸太データの追加や、製品のヤング係数の推定を予定しています。
最後となりますが、本研究にご協力いただいた製材工場の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。
きのこ・特産課 佐藤